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インタビュー:パナソニックが仕掛けるLUMIX G「Xレンズ」とは


 パナソニックがマイクロフォーサーズシステム用の交換レンズラインナップとして発表した「X」シリーズは、これまでの「LUMIX G」シリーズとは異なる位置付けの高性能ラインだ。マイクロフォーサーズ第1号機「LUMIX DMC-G1」が2008年10月に登場して以来、着々と交換レンズのラインナップを増やしてきたパナソニック。ここにきて、交換レンズの拡充を図る意図と、新レンズの位置付けや技術面での特徴を聞いた。

Xレンズ第1弾のLUMIX G X VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」(以下14-42mm)価格は4万9,875円。左は沈胴時、右は撮影時
望遠ズームレンズの「LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」(以下45-175mm)価格は5万6,175円

 話をうかがったのは、DSCビジネスユニットビジネスユニット長の北尾一朗氏、DSCビジネスユニット商品企画総括の房忍氏、システムカメラ設計グループ要素開発チームチームリーダーの上田浩氏(いずれもパナソニック株式会社AVCネットワークス社コンシューマープロダクツ事業グループに所属)。

左から房氏(DSCビジネスユニット商品企画総括)、北尾氏(DSCビジネスユニットビジネスユニット長)、上田氏(システムカメラ設計グループ要素開発チームチームリーダー)

Xシリーズとは何か

――まず、Xシリーズの位置付けをお聞かせください。

房:LUMIX Gレンズシリーズにおける上位シリーズになります。ハイアマチュアやプロが使えるグレードの製品です。大口径ズームレンズなど幅広い焦点域をリリースする上位ラインに当たります。

北尾:とはいえ、20万円のレンズを出そうというわけではありません。

房:上位ラインといっても、なかなか手がとどかないほどの高価な価格にはしません。20万円を超えるような製品になると、ミラーレスの世界の位置付けからずれてしまいます。弊社のフォーサーズレンズも、一番上のライカレンズは15万円です。このあたりが一つの上限になると考えています。

北尾:20万円は一つの目安だと考えています。未来永劫20万円のレンズを出さないかといえば何とも言えないところはありますが、普通のお客様にも購入していただける値段を意識しています。

Xレンズのロゴを強調した14-42mm(左)と45-175mmの広告イメージ。いずれも8月26日の発表会で披露されたもの(以下同)

――上位ラインといえば、現在展開しているライカレンズはどうなるのでしょうか。

房:ライカは特別なブランドです。ライカと聞いて連想する焦点距離のレンズは、ライカブランドでこれからも続けていきたいです。ライカレンズと聞いて想起できる焦点距離がありますよね。吟味しながら、ライカならではの製品を作って行こうと思います。

房:20mm(LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.)など、LUMIX Gシリーズでもいままで単焦点レンズを出していますし、単焦点でのXも出るでしょう。さらにライカという特別なブランドもある。3本立てのラインを臨機応変にやっていければと考えています。

北尾:もちろん、お求めやすいラインというのも考えなければならないと思っています。ただ1年間に5本も10本も開発できないので、優先順位をつけさせていただくと、今はまずXレンズですね。

――Xレンズの基準は、ライカレンズの基準とは異なるのでしょうか。

房:もちろんライカとは基準が違いますが、LUMIXはライカとの協業からスタートしています。ライカ自身がライカ工場で作る製品は手作りですが、我々はライカレンズの量産を前提とした方法を、ライカと協業しながら山形工場に作り出しました。ライカと一緒に作ったラインで、LUMIXのレンズを作っています。設計から生産までライカDNA、ライカ思想が入りこんでいます。

――Xレンズにスペック的な基準はあるのでしょうか。例えばキヤノンのLレンズのような。

房:Xレンズには描写性やナノサーフェスコーティングなど、我々が独自に設定した光学性能基準を入れています。

――防塵・防滴や金属鏡筒といった仕様はどうでしょう。

房:PZ 14-42mmとPZ 45-175mmは防塵防滴でも金属鏡筒でもありません。Xレンズの基準ではありません。でも将来、そういうものを取り入れた製品も出るでしょう。

北尾:発表会で参考出品した大口径ズームレンズ2本は、金属鏡筒にしようと思ってます。14-42mmの中は金属鏡筒ですけどね。

発表会で披露された大口径ズームレンズのモックアップ。左が大口径標準ズームレンズ、右が大口径望遠ズームレンズ

房:どちらかというと、光学性能の部分で定義するのがXです。LUMIXの中でXがついたレンズを買っていただければ、ウチの中では一番いいレンズと考えてください。

北尾:性能的には安心してお使いいただけます。X以外もかなりいいんですけど(笑)

――EDガラスなど高価な硝材をふんだんに使っているのでしょうか。

房:ええ、コンパクトにして高倍率にすると、高屈折率のレンズが必須になってきます。

北尾:標準ズームレンズのPZ 14-42mmに非球面4枚、ED2枚を使っているのは、一眼レフカメラのレンズからするとかなり贅沢でしょう。

房:内製してるから実現できるんですね。

――ナノサーフェスコーティングもXの条件でしょうか。

房:Xには必ず入れようと思っています。マルチコーティングもずっと入れているんですけど、そこにさらにナノサーフェスを1面加えることで、全然変わります。

Xレンズから投入された技術がナノサーフェスコーティング。ゴーストやフレアを大幅に低減するという

北尾:マルチコーティングは複数のレンズを一気に蒸着させますが、ナノサーフェスは1枚ずつコーティングしています。

房:マルチコーティングの技術もかなりのところまで来ていますが、どうしてもとりきれないゴーストがあります。そこに薄膜の透過率の良いコーティングを施したレンズをひとつ通しただけで、消すことができました。

北尾:ナノサーフェスをどこに入れるかは、レンズによって違います。設計したときと実際の効果が違うことがあるので、全部の面で試すこともあります。やってみないとわからないときはありますね。今回の2本はほぼ平行で開発進行していたので、テストする面数が多く、レンズの技術者はとにかく大変だったといってました(笑)

房:コンピューターシミュレーションでかなりのところまでわかるのですが、ナノサーフェスで追い込むべきゴースト、フレアが今までよりもっとシビアなので、試行錯誤を繰り返すしかない。

北尾:このコーティングは結構強いんです。薄膜だけど、ちょっと触れたらアウトというレベルではありません。

房:そのため、生産性・工場内でのハンドリングはすごく良いです。ハンドリングが悪いと歩留まりも悪くなり、制限も大きくなります。もちろんユーザーさんが直接触られたらアウトですけど。

――14-140mm(LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.)以来、HDレンズの登場は久しぶりです。HDレンズの意味を改めて教えてください。

北尾:静止画、動画双方に適したレンズのことです。静音化とAFの動画対応です。

房:フルスペック対応という意味ではそうです。実はHDロゴを入れてないレンズでも、大半は動画で問題はありません。

上田:20mmを除いてですね。あれは絞りの駆動音が出ますので。

北尾:それを除くと、動画撮影では全く問題ないレベルをクリアしていると自負しています。

上田:そのレンズで撮った後、ボリュームを最大にして駆動音が聞こえるかどうかで(HDロゴかを)評価しています。一般的な使用方法だと厳しすぎる基準かもしれません。

北尾:カムコーダーの基準がそういうものなのです。

房:品質審査を行なう品質本部があるのですが、ムービーの方がデジタルカメラよりも長いこともあって、ここの基準が厳しい。HDロゴがなくても動画は撮れますのでご安心ください。


今の時代だからこそパワーズーム

――銀塩フィルム時代、パワーズームは他社が市場で失敗している技術です。この時代に導入された意図は?

北尾:あの頃はパワーズームの必然性が無かったのでしょう。いまならコンパクト化と動画での使い勝手で、ある意味必然です。

房:14-140mmは手動ズームなので、動画中にスムーズにズームできない。そこでアシストレバーを後からオプションで出すと、意外と売れました。そのくらい皆さん苦労しているのがわかりました。

北尾:いまレンズ交換式デジタルカメラを買われている方のうち、過去に一眼レフカメラを買われていない人も多くなりました。コンパクトデジタルカメラやムービーから入ってきた方だと、ズームレバーが当たり前の操作といえるでしょう。ただ、ズームリングでの操作が良いという人もいらっしゃるので、Xレンズをすべて電動にするわけではありません。必然があるものについて、電動ズームを入れていきます。

電動ズーム(パワーズーム)は、新製品の一番の特徴。小型化、動画対応に加えて、ステップズームなど手動ズームでは不可能な機能も盛り込まれている

房:14-42mmは沈胴することでコンパクトになり、持ち運ぶ機会が多い常用レンズとして便利です。45-175mmは運動会キラーになるはずです。そうした必然を抑えて電動ズームを取り入れていきたいです。

北尾:夏休みに14-42をこっそり持って撮影しましたが、出っ張らないのがいい。持ち運びが楽でいいですね。パンケーキレンズぐらいの大きさでズームレンズですから。

――ズーム速度を替えることはできますか。

上田:レバーの途中まではゆっくりした速度でズームして、押し切ると一気に速くなります。さらにボディ本体側でハイ、ミドル、ローの3段階からズーム速度を選べるようになる予定です。

房:動画でも便利ですが、静止画のときもすっと動かしたいときに使えます。

北尾:動画と静止画では速度が違います。動画のときはゆっくりとズームします。

上田:動画時のスピードも3段階から選べます。静止画で3段階、動画でも3段階です。

北尾:この辺はずっとムービーをやっていたこだわりが盛り込めたと思います。

――45-175mmには、ズームレバーとともにズームリングもついています。どちらも電動ですか。

房:ズームリングとズームレバーの両方をつけています。ズームリングでの操作性にはこだわっています。

上田:ズームレバーもついているのは、動画での撮影で使っていただくためです。速度可変もレバーの方がやりやすいでしょう。

――45-175mmでインナーフォーカスを採用した意図は。

房:望遠ズームで繰り出さないのはバランスが良いでしょう。ズームするたびにバランスが変わるのは疲れます。それがないのが売りです。

北尾:動画ズームは本当に楽になりました。最初に画角を決めて撮るんですが、あるんですよね、撮り始めてからもうちょっとアップにしたいときが。被写体が動くときもありますし、もうちょっと広かった方が背景が入ったとか、撮り始めてから気づくことは多いです。そういうとき、ズームリングで調整すると揺れてしまう。動物園で使ったのですが、本当に便利でした(笑)

――使われているモーターは?

上田:14-42mmはズームがDCモーター、フォーカスがステッピングモーターです。45-175mmはズームもフォーカスもステッピングモーターです。

――14-140mmのように無段階絞りを採用しているのでしょうか

上田:絞りは通常タイプです。

――45-175mmに採用されている「マルチアクチュエーターフローティングインナーフォーカス」とはどういったものでしょうか。

上田:フォーカシングレンズが2群あるのですが、それぞれ独自にアクチュエーターを配置しています。精度が良く、高速になるというメリットがあります。制御は大変ですが(笑)

45-175mmのレンズ構成。フォーカスレンズ2群をそれぞれ独自に動かす「マルチアクチュエーターフローティングインナーフォーカス」を採用する

――この技術はパナソニックとして初ですか?

北尾:ライカDGの45mmマクロレンズ(LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm F2.8 ASPH. MEGA O.I.S.)が先です。あれは2つではなく、3つを動かしています。

上田:2つなら相手に合わせればいいのですが、3つは大変でしたね(笑)。

房:あのサイズにこだわったから3つという仕様になったのです。

――フォーカスにも進化が見られるのでしょうか。

上田:14-42mmの場合、AF速度は広角端で0.1秒、望遠端で0.15秒と高速化しています。45-175mmも広角端は0.15秒です。位相差AFでも望遠レンズになるとそんなに速くないものです。位相差はある範囲以上ボケると検出できませんから、結局サーチ動作に入ってしまいます。そうなると精度も落ちて時間もかかりますね。

――すべてのボディでパワーズームが使えるのでしょうか。

北尾:使えます。ステップズームと焦点距離表示はボディ側のファームウェアアップデートが必要ですが、パワーズームはアップデート無しでも使えます。ファームウェアを提供するのはDMC-GH2以降の機種からですが、それ以前の機種でもパワーズームは使えます。

房:パワーズームだけなら、オリンパスさんのボディでも使えます。マイクロフォーサーズの規格にも盛り込まれてますし。

――そういえば、今回から手ブレ補正機構がPOWER O.I.S.になりました。効果はどのくらい上がっているのでしょうか。

北尾:効きはかなりよくなっています。換算200mmぐらいの画角で、1/4秒でも手ブレなしで撮れたことがあります。POWER O.I.S.にはMEGA O.I.S.とは別のジャイロセンサーを搭載しています。

房:低周波の手ブレと高周波の手ブレの両方の精度を上げたためですね。アルゴリズムだけでなくて、ジャイロセンサーの進化もあります。手ブレ補正は男性と女性、それから年齢によっても違う。女性は高周波のブレですね。男性より力がないので細かい震えになりやすい。低周波と高周波の両方の精度を上げているので、前より1段から2段効果が上がっています。補正効果は4段から5段という感じですね。低周波側の精度を特に上げています。

手ブレ補正機構は「POWER O.I.S.」になった。より補正力が増したという

――45-175mmですが、望遠端の焦点距離175mmの必然性は?

北尾:「150mm以上の望遠レンズを作る」という目標がまずあって、あとはサイズとのバランスを考えて175mmになりました。換算で300mmは欲しい、そこから先は行けるところまで行こうとして、このサイズならここまでかな、というところで止めました。

――切り良く200mmにしなかったんですか。

房:200mmになるとサイズが急に大きくなり、印象がだいぶ違います。

北尾:150mm、175mm、200mmを並べると、均等に大きくならない(笑)

房:150mmと175mmを見せても差が少なくて違和感がありません。でも200mmを見せると「大きい」と言われます(笑)

――40-200mmをお持ちの人には、買い替えるには望遠端が物足りないかもしれませんね。

北尾:その代わり、パワーズームの便利さを知っていただけたらと思います。あと、だいぶ小さくなっています。40-200mmは最初に出したレンズの一つですから、今見ると結構大きいです。

房:2008年にマイクロフォーサーズを始めてから、レンズの設計も進化しています。そのあたりも見ていただけれたらと思います。

――マイクロフォーサーズ陣営のレンズの数が充実してきました。今後のレンズのラインナップはどうなるのでしょうか。

北尾:もう少し数を増やしたいですが、ひたすら増やしていくというのではなく、特徴を持ちながらやりたいと思います。なので今回、ラインナップを複線化した方が良いのかと考えたわけです。

房:プロカメラマン、ハイアマチュアはXレンズを中心に、エンドユーザーが標準的に揃えるんだったらこういう製品、といった具合です。

――LUMIX Gレンズはすべて山形工場で作られているのですか

北尾:はい。コンパクトデジカメのレンズも作っています。コンパクトは中国でも作っていますが、山形がマザーになります。

――キットレンズ以外で一番売れているレンズは?

北尾:LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.が一番売れていますね。LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH.も多いです。

上田:LUMIX G VARIO 45-200mm F4-5.6 MEGA O.I.S.をキットというのは微妙なんですけど、これも結構売れました。

北尾:GF3は望遠レンズがついているキットがないので、あとで買い増しされている方が多いのでしょう。

――では45-175mmは、GF3ユーザーの買い増しに期待できますね。

北尾:ええ。GF3に45-200mmをつけるとやっぱり大きい。45-175mmならそんなに違和感はないのではと思います。

――フォーサーズ用のレンズはもう出さないんですか? やめたというわけではない?

房:やめてません(笑)

北尾:いまでも売れていますね。大きな数ではないのですが、LEICA D SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH.などは、毎月コンスタントに売れていますし。

房:もうちょっとマイクロフォーサーズに専念させていただきたいかなと。マイクロフォーサーズとフォーサーズの両方を見ていると、二兎を追う物は一兎を得ずになってしまいますから(笑)。階段渡りながら橋渡るような芸当もできませんし。しばらくはマイクロフォーサーズでの展開にご期待ください。



(本誌:折本幸治)

2011/10/27 15:00