気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

OLYMPUS PEN E-P5【第6回】

お手ごろ価格の超望遠ズームを試してみた

 たいていの場合、望遠は35mmフルサイズ換算で300mm相当まであれば十分だと思っているが、ときどき物足りないシーンに出くわすことがある。以前、家族で動物園に行ったときに、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6付きのE-M5を持っていったところ、寄り足りないのと、金網がボケきってくれないという、ダブルいまいちを味わったので、今回はM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIを借りてみた。倍返し作戦である。ありふれてるが。

 さて、このレンズは、150-600mmに相当する超望遠ズームである。パナソニックのLUMIX G VARIO 100-300mm F4-5.6 MEGA O.I.S.と並んで、マイクロフォーサーズでは最長の焦点距離を持つ。大きさは、最大径69×長さ116.5mm。重さは423g。マイクロフォーサーズレンズでは5番目に重い(MF専用レンズも含めた場合)。とはいえ、600mm相当の超望遠が、開放F値が暗いながらも、400g台の前半なのだ。驚異的軽さといっていい。

 が、軽いからといって、気軽にあつかえるレンズではない。対角線画角はわずか4.1度。標準レンズ(だいたい45度から47度ぐらい)の1/10以下である。おおざっぱには、標準レンズで撮った写真を、縦1/10、横1/10にトリミングした範囲(面積でいえば1%)が画面いっぱいに写るという代物だ。従来の2軸手ブレ補正のカメラであれば(露光中だけ手ブレ補正がはたらく仕様である)、構図を考えたりピントを合わせたりするあいだは手ブレまみれになる。

 その点、E-M5以降の5軸手ブレ補正のカメラなら、シャッターボタン半押し中にも手ブレ補正が作動する。おまけにE-P5には電子ビューファインダーVF-4が付いてくる(レンズ付きキットで買った場合だけだが)。超望遠域はレンズシフト式じゃないときついよなぁ、と思いつづけてきたが、半押し中手ブレ補正とEVFがあれば、600mm相当でもいけるのではないか。そんな気がしてしまったのである。

 お値段は税込みで6万6,150円。レンズフード(LH-61E)が別売で4,200円するから、合計で7万350円。大手量販店なら5万円とか5万5,000円ぐらいで買えるようだ。600mm相当の超望遠なんて、よほどのことがないかぎりは使いたいものではないが、それは普通の超望遠に気合いなしでは持ち歩けない大きさと重さがあるからで、コートのポケットにすんなりおさまってくれる程度なら話は違ってくる。

今回のお題のM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II。別売のフードとセットで税込み7万350円。純正超望遠ズームではかなり安いレンズである。

 レンズ構成は13群18枚。スーパーED(特殊低分散)レンズが1枚、EDレンズが2枚、HR(高屈折率)レンズが3枚使われている。けっこうぜいたくな光学系である。MTFを見た印象では可もなく不可もなくといったところ。よりコンパクトな300mm相当ズームのM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 Rと比べると、広角端は少し落ちるが望遠端は微妙に上まわっている。

 オリンパスの安価なズームは、価格のわりにキレのいい描写をするものが多いし、近接性能がいい(画質の落ちが少ない)傾向があるので、このレンズもたぶん大丈夫だろう。買ってもいいかもしれない。いや、買うべきレンズかもしれない。

 ただ、今までの経験からすると、大丈夫そうな気がするだけで実際はだめなレンズもあるし、おおむねは大丈夫だけれど落とし穴が付いてくるというパターンもあった。油断はできないのだ。とまあ、心配事もあったりするので、まずは借りて使ってみようと思いたった次第である。職権乱用ですね。

 心配事のひとつはやはり画質。並みの「M.ZUIKO DIGITAL」でもそれなりにキレるのはわかっているが、「PRO」や「PREMIUM」の写りに比べれば見劣りするのは仕方のないところで、そこを我慢できるかどうかは使ってみないとわからない。

 もうひとつは、高感度ノイズの問題。画角は狭いし、開放F値も暗い。撮るのが動物たちなら被写体ブレも防がないといけないからシャッター速度をかせぐために高感度、という前提で見ることができる。それならノイズが多めでも気になりにくい。が、相手が動かない被写体の場合は、高感度ノイズの必然性がない。パッと見で手持ちの超望遠撮影とわかるようなら話は別だが、そうでなければ単に粗いだけになってしまう。それはおもしろくない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
(参考)E-M5に14-150mmの組み合わせで撮ったカット。望遠端だが、金網がボケきってくれなくておもしろくなかったのだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 1/80秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 150mm
75-300mmの望遠端。ボケ残っているのは金網に付着した雪で、それがなければ気にならないと思う。ただ、ボケの形がいびつなのはもうひとつな印象。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/400秒 / F6.7 / -0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
これも望遠端。これぐらい解像していれば文句はない。というか、実売5万円台でこの写りなら文句の付けようがない。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/400秒 / F6.7 / -1EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
個人的に、E-P5で画質劣化を気にせず撮れる最高感度と思っているのがISO800。ここまでならISO200で撮ったのと比べても、あまり見劣りは感じない。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/500秒 / F6.7 / -0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
ファンタジックフォーカスじゃなくて、ガラスの汚れがソフトフィルターの効果を出してくれているのだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/50秒 / F6.2 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 208mm
これもガラス越しでの撮影なので、少し解像は悪い。それにしても、ニホンザルが寒そうにしてて、チンパンジーが雪を食べてるというのが不思議である。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/125秒 / F6.4 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 234mm
冬毛みっしりのオオカミは雪の上でも平然としている。日が当たらない条件でも、じっとしていてくれればISO200で撮れる。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/200秒 / F5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 85mm
解像感は十分に高いが、もう少し羽毛らしい柔らかそうな感じが欲しい気はする。「特上」レンズだともっとすごい写りになるのだろうか。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/125秒 / F5.9 / -1.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 179mm
仲むつまじくお互いの毛づくろいをするペンギンのペア。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/160秒 / F6.7 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
そして、それをうらやましげに眺める独身(推定)ペンギンたち。うしろの2羽のボケ具合がちょっと硬い。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/640秒 / F6.7 / -0.7EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
屋内展示の爬虫類は、ほとんどいつもじっとしているから、暗いようでも低感度で撮れる。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/125秒 / F4.8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 75mm
安価なレンズには近接性能がよくないものもあるが、オリンパスのレンズは寄っても画質が落ちないものが多い。ここまで寄ってこの写りは見事。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/60秒 / F4.8 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 75mm
去年の12月に生まれたホッキョクグマの子ども。ふわふわの体毛の質感を重視するならISO800までが限度だと思う。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/400秒 / F6.7 / +1EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
園内放送では「ホッキョクグマの赤ちゃん」といってた気がするが、十分立派なサイズである。それでもお母さんよりはだいぶ小さい。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/1250秒 / F5 / +0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 94mm
レッサーパンダはちょこまかと動きまわるので、木に登ったところをねらってみた。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/250秒 / F6.7 / -0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 300mm
屋内で撮ってて感度を下げ忘れてISO3200のまま撮ったカット。ディテール再現は悪くなっているが、人によっては許容範囲に入るかもしれない。M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/400秒 / F6.2 / +0.3EV / ISO3200 / 絞り優先AE / WB:オート / 215mm

 そんな次第で事前チェックのつもりでお借りして使ってみた結果、画質についての不安は払拭できた。ボケの形やまろやかさなどについては、もうちょっとかなぁ、と感じる部分もないではないが、解像力についてはまったく問題ない。たぶん、「PRO」や「PREMIUM」ならもっとすごい画になるかもしれないが、筆者的には立派に高画質である。価格やサイズも含めて考えれば大満足レベルだ。

 もうひとつのほうも、そこそこ折り合えそうな感じはする。個人的には、E-P5の高感度は、画質劣化を気にせず撮れるのがISO800までで、ISO1600は粗さに我慢できるシーンなら使える。ISO3200は非常用で、それより上は見ないことになっている。

 一方、手ブレ補正の効果は、E-P5の場合、公称ではオリンパスの独自基準で5段だが、E-M1がCIPA基準で4段なので、E-P5のも同じか少し落ちるぐらいと考えておけばいいだろう。600mm相当の手ブレ限界は近似値で1/640秒。4段下なら1/40秒。筆者の腕力事情や超望遠域の難度を考えれば1/80秒がぎりぎりで、ある程度高い成功率を見込みたいなら1/160秒ぐらいを目安にするべきだろう。

 つまり、常用範囲はISO800以下で、シャッター速度が1/160秒以上の条件になるが、いつもいつも望遠端で撮るわけでもないのだから(広角端なら1/40秒でもいける計算なのだ)、あまりシビアにならなくてよさそうな気もする。そんな次第で、気持ちは買っちゃえ方面に流されつつあるのであった。

北村智史