2011年6月28日、FinePix X100の最新ファームウェア、バージョン1.10が公開になった。前回のファームウェアアップデート(バージョン1.01)は不具合の修正にとどまっていたが、今回は追加機能や改善など、23項目にもおよぶ大幅バージョンアップだ。最新ファームウェアの導入方法、主要な追加機能について、レポートしていこう。
最新ファームウェア1.10は、ボタン操作やファインダーまわりなど、様々な改善を含んでいる |
FinePix X100の最新ファームウェアはWebサイトからダウンロードできる。ダウンロードしたデータをフォーマット済みのメモリーカードにコピーし、FinePix X100に挿入しよう。カメラの「DISP/BACK」ボタンを押しながら電源投入すると、ファームウェアアップデート用の画面があらわれる。画面の指示に従ってアップデート作業を進めよう。詳しい手順はメーカーサイトに掲載されているので、それを確認しながら作業を進めてほしい。ファームウェアアップデートの更新項目はメーカーサイトで確認できる。また、更新内容を反映したマニュアルPDFが公開されているので、これも合わせてダウンロードしておこう。
■操作系の機能向上
今回の改善項目は多岐にわたるので、内容を整理しながら主要なものを紹介していこう。まずボタン操作に関する改善機能では、ボタンの長押しというアプローチが加わった。Fnボタンを3秒長押しすると、「Fnボタン設定」メニューがあらわれる。Fnボタンには様々な機能がアサインでき、この割り当て機能をすみやかに変更できるわけだ。筆者は快晴時には「NDフィルター」、曇天時には「感度」を割り当てていたが、今後はこうした変更がスピーディに行なえるようになる。また、OK/MENUボタンも長押しに対応し、コマンドダイヤルのカーソルボタン(上下左右ボタン)とRAWボタンのロックが可能になった。意図せずボタンを押してしまう心配がなくなり、実用性の高い機能だ。
Fnボタンの長押しでメニューがあらわれる。すみやかなアサイン変更が可能だ | OKボタンの長押しで、背面ボタンのロックが可能。再度長押しするとロック解除できる |
本機は背面右上にコマンドレバーを搭載しているが、これを活用する場面が限られていた。せっかく操作デバイスがあるのにもったいないと感じていた人も少なくないだろう。ファームアップ後は、このコマンドレバーを使って絞り優先AEで1/3段ステップの絞り調整が可能だ。被写界深度を微調整したいときに重宝するだろう。なお、シャッタースピード優先AEは、コマンドダイヤルで1/3段ステップの微調整が行える。
スリープ復帰のレスポンスも改善項目のひとつだ。従来はシャッターボタンを数秒ほど押し込む必要があったが、ファームアップ後はシャッターボタン半押しですみやかに復帰する。地味な機能ではあるものの、機動力に直結する機能改善といえるだろう。
今回のファームアップでコマンドレバーを使う場面が増えた。撮影画像表示を「連続」にした時、コマンドレバーの押し込みでピント位置の拡大表示も可能だ | シャッター半押しですばやくスリープから復帰する。このハイレスポンスを待ち望んでいたユーザーは多いはずだ |
■ファインダーまわりの注目ポイント
ファインダー関連では、画像サイズで16:9を選んだとき、OVFのブライトフレームも16:9になるようになった。また、OVFに近接撮影用のAFフレームを表示することも可能だ。FinePix X100のハイブリッドビューファインダーは、情報表示用の液晶表示を光学像に重ね合わせている。そのためファームウェアの更新によってOVFの表示スタイルを変更できるのだ。FinePix X100ならではの機能改善といえるだろう。
加えて、VIEWMODEボタンを押してアイセンサーONの状態になったとき、ファインダー上に「アイセンサー」と表示されるようになった。従来はアイセンサーONと液晶モニター固定表示の区別がつきづらかったが、今後は画面上で確認できてわかりやすい。ビューモードをひんぱんに変更する人は重宝するだろう。
OVFが16:9のブライトフレームに対応。ハイブリッドビューファインダーならではの改善だ | 近接補正されたAFフレームが表示できる。オン/オフは液晶メニューで切り換えられる |
ビューモードをアイセンサーONにすると、画面に「アイセンサー」と表示される |
■様々な“設定キープ”が可能に
今回のファームウェアアップデートでは、設定キープがひとつの柱になっている。マクロ、ISO感度、ドライブモード、ダイナミックレンジ、セルフタイマー、ストロボ設定などは、電源オフ、露出モードの変更、再生→撮影モードといったタイミングで設定がリセットされていた。ファームウェアアップデート後は上記のタイミングでも各種設定を維持できる。また、EVFからOVFに切り換え、再度EVFに戻したとき、AFエリアサイズが保持できるようになった。再生モードは最後に見た画像を記憶することも可能だ。ただし、一度撮影するとリセットされる仕様になっている。
設定のキープおよびリセットは、一見すると些末な動作に思えるかもしれない。しかし実際には、撮影のリズムに影響する大切な動作だ。今回ファームウェアアップデートで設定キープできる項目が増え、撮影の継続性が向上した。この恩恵はFinePix X100を使い込むほどに実感できるはずだ。
■まとめ
今回のファームウェアアップデートは、ユーザーフィードバックをていねいに汲み上げた印象を受ける。スリープ復帰の高速化、設定キープの向上といった改善は、地味ながらも使いやすさに大きく貢献するはずだ。OVFの表示改善は、ハイブリッドビューファインダー搭載機の面目躍如といったところだろう。
その一方で、少々気になる展開も見受けられる。それはボタンの長押しだ。長押しはイレギュラーな操作なので、ユーザーがこの操作をおぼえていないと見つけられない機能だ。多機能機器は操作の暗記をユーザーに強いるのではなく、機能を見つけられることが大切なはずだ。長押し操作のインフォメーションが表示されると、より親切といえるだろう。
2011/7/7 00:00