オリンパスE-30【第5回】
「ライトトーン」と「階調オート」
E-30が搭載するアートフィルターの中に、「ライトトーン」という設定があります。あっさり言えば、コントラストを低くして白トビや黒ツブレを防ぐようなフィルターです。一番最初にアートフィルターの作例を見せてもらったときに、もっとも感心したのがライトトーンの作例でした。これはよいかもしれないと思ったのですが、使ってみるとそう簡単ではありませんでした。
階調を広くすると言えば、シャドウ部のトーンを持ち上げる機能が、いまやコンパクトデジタルカメラもデジタル一眼レフカメラにも、各社さまざまな機種に装備されています。オリンパス現行Eシリーズ各機種の場合は、メニューの「階調」から「オート」を選ぶことで、シャドウ部のトーンが持ち上がり、広い階調の表現をしてくれます。
そこで今回はE-30における各設定の違いを見てみることにしました。加えて、E-3と先日発売されたE-620でも試してみました。
比較したのは次の設定です。
1) | E-30: | 階調「標準」 / 階調「オート」 / アートフィルター「ライトトーン」 |
2) | E-620: | 階調「標準」 / 階調「オート」 / アートフィルター「ライトトーン」 |
3) | E-3: | 階調「標準」 / 階調「オート」 |
階調オートはなかなか有効で、実用性は高いと思います。ただしシャドウ部を持ち上げることからコントラストが見た目に若干失われ気味になりますが、通常の範囲のプリントやWebでの利用なら全く問題なく、階調が広いメリットの方が大きいでしょう。
ライトトーンはシャドウ部の階調は出てきますが、ハイライト側もぐっと圧縮してしまうため、空などには問題があるようです。白トビした空が、RAW現像で無理に階調を出そうとしてマイナスの補正を欠けたようになり不自然なケースがあります。ハイライト部はマイナス補正の現像をして、シャドウ部はプラス補正の現像をしたようになりますので、高度な処理を行なっているのだと思いますが、実際に使う場面ではなかなか難しく感じます。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
E-30の場合、P/A/S/Mからアートフィルターに切り替えると、自動的にホワイトバランスとISO感度はオートに、露出補正は±0になります。反対にアートフィルターからプログラムAEなどに戻すと、ISO感度とホワイトバランスは、アートフィルターに変更する前のプログラムAEの設定に復帰しますが、露出補正はアートフィルターの設定が引き継がれます。
ところがE-620では、P/A/S/Mからアートフィルターに切り替えると、ISO感度はオートにならずP/A/S/Mの設定が残ります。ただしホワイトバランスはE-30と同じくオートになります。そのままアートフィルターからP/A/S/Mに戻ると、ホワイトバランスのみP/A/S/M設定時の内容に戻り、ISO感度と露出補正はアートフィルターでの設定が引き継がれます。
かなりややこしいので、覚えておいて使いこなすというよりは、その都度確認する必要があるでしょう。個人的には、もっとも設定を引き継いでほしいのがホワイトバランスなのですが、クリアされてしまうのは残念です。露出補正はカットごとに違いますからクリアされてもよいと思うのですが、逆の設定になっているのは残念です。ISO感度設定はオートを多用しているので、それほど気になりません。
どの設定がクリアされて、どの設定は残してほしいのかは個人差があると思いますので、メニューで記憶する項目を選択できるように、ファームウェアのアップデートによる改善を望みたいところです。
日向の順光の花をアップで、という、あまり良くない設定を故意に試してみました。そのままではコントラストが強すぎてよい写真にはなりにくいものですが、階調オートにすると若干コントラストが弱まり、ライトトーンではさらに弱まります。今回の作例のような極端なケースではこれでよい写真が撮れるかといっても難しいと思いますが、花の作例にも使い道はありそうだなという気がします。
2009/5/27 00:00