Leofoto FIELD REPORT 三脚のある美しい写真

新型パイプを採用した軽量三脚で撮る星空風景

成澤広幸さんがレオフォトの新型三脚「AZ-204C」の魅力を解説

襟裳岬。この場所は風の強さが有名でこの日も強風が吹いていたが、三脚の剛性は問題にならなかった。灯台の光が地上風景を照らす環境だったが、気にせずに長時間露光をする方が不思議と自然に描写できた
ニコン Z8/NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S/14mm/マニュアル露出(F2.8、15秒)/ISO 8000/WB:晴天

星空風景やタイムラプスの撮影で活躍する成澤広幸さん。一度に写真とタイムラプスの両方をこなすため、複数の撮影機材と三脚を持ち歩くことが多い。撮影地へのアプローチにはトレッキングを伴うケースも多く、携行性が重要になる。そんなニーズにマッチするのがレオフォトから新たなシリーズとして登場した軽量三脚の「AZ-204C」だ。コンパクトさと利便性を兼ね備えた新機軸の三脚の使い勝手をレビューしてもらった。

成澤広幸

1980年生まれ、北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスクリエイター・YouTuber。写真スタジオ、天体望遠鏡メーカー勤務後、2020年に独立。全国各地で星空・タイムラプス撮影セミナーを多数実施

※本企画は『デジタルカメラマガジン2025年9月号』より転載・加筆したものです。

多様な星空風景を描くための携行性という強み

暗闇の中で星が輝く環境で、星空風景を描写するには光をセンサーに蓄える長時間露光が必須となる。そのため、三脚は欠かせないアイテムだ。

さらに、露出中のブレを防ぐため三脚や雲台には剛性が求められる。点像の星を表現するなら十数秒の露出時間で済むが、星の軌跡を表現しようとすると露出時間は十数分~数時間にもなる。貴重な晴れ間を有効活用して一度にさまざまな表現を狙う場合、複数台のカメラが必要だ。

そして同じ数の三脚も用意しなければならない。とはいえ、一度に持ち運べる機材の量には限りがある。最も効果的な対策は、必要な剛性や耐荷重を最大限に確保しながら、三脚を軽量化すること。レオフォト製品にはこうした撮影に応える軽量かつ剛性のある三脚・雲台が数多くそろっており、私のようなトレッキングフォトグラファーからは絶大な支持を得ている。

そんなレオフォトから新型軽量三脚AZ-204Cが発売された。

AZ-204C
価格:5万9,400円(税込)/全伸長:1,330mm/伸長:1,085mm/最低高:89mm/収納高:405mm/段数:4段/最大脚径:35mm/耐荷重:7kg/質量:960g

なんとパイプ径は20mm。さすがに細過ぎないかと疑ったのだが、実物を見て納得。脚部のチューブが楕円形で、外側からの圧力には弱くなるものの、ひねりの強さは損なわれない設計になっているのだ。風ブレの防止にはひねりの剛性が重要で、軽量ながらも安定を保つ効果がある。

通常のレオフォト三脚はパイプが真円だが、本製品は楕円形でコンパクトになっている

雲台にはさらなる軽量化を求めてMBC-20を選択した。ボール径16mmと小型でありながら、耐荷重8kgの自由雲台だ。

MBC-20
価格:1万2,430円(税込)/ボール径:16mm/高さ:54mm/耐荷重:8kg/質量:104g

小さいのにとても頑丈でしっかりとカメラを固定できる。寒冷地での動作もスムーズだ
縦位置の状態で収納すれば、引っ掛かりが少なくカメラバッグにも取り付けやすい

レオフォト製品は、使用レンズに合わせて重心バランスを整えて、雲台の耐荷重を最大限に発揮させられるプレートも充実している。バランスプレートのNR-100を組み合わせることで、前玉が大きな明るい広角レンズを使用するときも重心バランスを取りやすくしている。

NR-100
価格:1万1,000円(税込)/長さ:127mm/幅:38mm/高さ:18mm/質量:110g

バランスプレートのNR-100は、取り付ける機材の重心に合わせて前後させることで、安定感を出せるアイテム。超広角レンズの使用が多い星空撮影で重宝する

AZ-204Cは軽量三脚だと分かっていても、取り出した瞬間「軽い」と口にしてしまった。三脚の外周が短いため、手が小さい私でも運搬時に握りやすく、余計な凹凸が少ないのでカメラバッグにも取り付けやすい。

真円形の通常パイプよりも小さく収納できるため、可搬性に優れている
収納時の径が細いため、片手でも握りやすい
北海道様似町(さまにちょう)エンルム岬。6月の北海道南部・太平洋側沿岸地域には海霧が発生する。街が霧で覆われるが、小高い場所へ登ればそこは雲海。小型三脚のおかげで写真とタイムラプスが同時に撮影できる
ニコン Z8/タムロン 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2/16mm/プログラムAE(F9、1/320秒、±0EV)/ISO 64/WB:晴天/タイムラプス撮影中の1枚

脚を全部伸ばすと強度にやや不安を感じたが3段までで使用すれば満足できる安定感が出た。風が強かったので三脚を開こうとしたところ、開脚角度が4段階選べることに気付いた。通常の三脚は3段で角度の選択に制限があったのでこの配慮はありがたい。

風ブレを防ぐため、設置場所には岩場を選んだのだが、石突キャップを取り外せばスパイクでの使用が可能で、がっちりと硬い岩場に三脚を設置できた。

ゴム製の石突がキャップになっていて、取り外すとスパイク石突が出てくる。付け替える必要がないので、シーンに合わせて変更しやすい

脚部はレバーロック式なので不意に脚が緩んでしまうことはなく便利だが、分解清掃ができない点に注意しよう。

レバーロック式は着実にロックと解除を切り替えられるので、安心して操作できる

この軽さでセンターコラムが使用できるのはいざというときに心強い。トレッキングを伴う撮影行において、「もう1本持っていけるかも」という可能性を感じさせる新型三脚が登場した。

AZ-204CはY字形のセンターコラムを備え、収納性を維持しながら高さの調整が行えるようになっている
べース部以外は簡単に切り離せるので、ローポジション撮影への移行もスムーズだ
センターコラムを外すことで、ローポジションに移行できる
北海道様似町の海岸沿い。この日は湿度が高く海側の星空の写りはシャープではなかったが、後ろ側を撮影すると、断崖絶壁の向こうにはくちょう座付近の天の川が力強く輝いていた
ニコン Z8/NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S/14mm/マニュアル露出(F2.8、15秒)/ISO 8000/WB:晴天
成澤広幸

1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。埼玉県在住。星空写真家、タイムラプスクリエイター、Youtuber。写真スタジオ・天体望遠鏡メーカーでの勤務の後、2020年4月に独立。著書、メディアへの出演も多数