Leofoto FIELD REPORT 三脚のある美しい写真

徹底的に構図を追い込み立体的な風景を描き出す

秦達夫さんの写真表現を支える「LS-324CEX+G4」

ギア雲台で上下左右チルトして撮影した4枚の合成写真。約1億1,500万画素のデータを作り上げた。脚の平行を出すことで正確にフレームを変更できる
キヤノン EOS R5/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/300mm/絞り優先AE(F8、1/2,000秒、±0EV)/ISO 200/WB:オート/4枚を合成

複数枚を合成したパノラマ風景写真の可能性を探っている写真家の秦達夫さん。三脚を使う理由は、パノラマ撮影時のフレーミング調整やスローシャッター表現のためだけではないと言う。

風景写真の8割は三脚を使って撮影するという秦さんに、なぜ三脚撮影にこだわるのか、その真意を伺った。

秦達夫

1970年4月20日生まれ。長野県遠山郷出身。写真家の竹内敏信氏のアシスタントを経て独立。2023年東京写真月間の企画写真展に秋田白神山地をテーマとして出展予定。そのほかの写真展も企画中

※本企画は『デジタルカメラマガジン2023年4月号』より転載・加筆したものです。

構図にこだわり平面の写真に立体性を注ぎ込む

写真は平面の中で表現される芸術。そこに立体性を注ぎ込むことで表現の幅は格段に広がっていく。これは僕の持論だ。そんな前振りの中でこんな質問を投げかけたい。「どうして三脚を使うの?」。

多くの人は「ブレを防ぐため」や「スロー表現を引き出すため」と答えるだろう。ブレ防止やスロー表現は撮影では重要であり、それらを実行するための三脚であるのは間違いではない。しかし、それだけで三脚を使っているなら、写真表現の基本を理解せずにテクニックに頼っていると僕は思う。僕はシャッター速度が1/1,000秒でも三脚を使う。すべてのカットではないが風景写真の場合、8割は三脚による撮影だ。

なぜ、高速シャッターでも三脚を使うのか。その訳は「両目で見た情景をフレームに納めたいから」。周知のことと思うが2つの目を持つ生き物は距離感や立体感を両目によって認識している。片目では距離感はつかめない。その理由から1つの目しかない一眼カメラのファインダーは立体的に情景が見えていない。だからこそ両目で見た情景をファインダーに入れ込むことが重要だ。手持ち撮影でもこの作業は可能だが、より注意深く細やかなフレーミングを行うには、両目で風景を見ながら構図を調整できる三脚が便利だ。

望遠レンズで離れた場所から撮影することで、木の背後にある山の印象が強まる。上下・左右チルトを使い繊細なフレーミングを行い、稜線を入れる位置を決めた
キヤノン EOS R5/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/100mm/絞り優先AE(F8、1/3,200秒、±0EV)/ISO 200/WB:オート

最近は軽量化を意識した自由雲台が流行っている。確かに自由雲台は3WAY雲台に比べ軽量だが、困ったことに望遠レンズを使うとフレーミングがわずかにお辞儀をしてしまう。それを見越してやや上にフレーミングを作り撮影するが、これは意外と面倒な作業だ。手が冷えていると、その調整が難しくもどかしい。

それを解決してくれるのがレオフォトのギア雲台G4。左右チルトと上下チルトがダイヤル操作で簡単にできる。しかもダイヤルの回転トルクをレバーで調整できるので好みの力でダイヤルを回せる。やや練習は必要だが、フレーミングをズバッと変えたいときはロックレバーを切り替えると雲台がギアを介さずに動き、とっさの大幅なアングル調整も可能だ。

「LS-324CEX+G4」
LS-324CEX
価格:8万3,930円(税込)/全伸長:1,520mm/収納高:570mm/最低高:103mm/段数:4段/最大脚径:32mm/耐荷重:15kg/質量:1,560g
G4
価格:9万9,000円(税込)/高さ:108mm/ベース径:60mm/耐荷重:20kg/質量:690g

また、忘れてはならないのが三脚のレベリング調整である。通常フレーミングの平行調整は雲台が行うが、パノラマ合成などでカメラを平行にずらしながら撮影するときは三脚が平行を保っていないと2枚目のフレーミングが傾いてしまう。それを簡単に調整できるのがレンジャーEXシリーズのLS-324CEX。水準器も付いていて現場での操作がしやすい。

氷柱で重要になるのは水平垂直が保たれていること。なぜなら氷柱は地球の中心に向かって真っ直ぐ伸びるからだ。カメラの水準器を確認しながら左右チルトを回す
キヤノン EOS R5/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/200mm/絞り優先AE(F8、1/800秒、±0EV)/ISO 200/WB:オート

わずかな構図の微調整まで妥協しないためのコンビ

ギア雲台G4は上下チルトと左右チルトをダイヤルで細かく簡単に調整できるのが特徴。ダイヤルにレバーが付いており、回転トルクの調整もできる。LS-324CEXはレベリング調整機能を備えていることが特徴で、各脚の長さが異なる状況でも三脚の水平を簡単に取れる。今回のメインカットのようにフレーミングをずらしながら複数枚のカットを撮影した後に合成して高画素データを撮影する場合にも効率的に行える。

LS-324CEX

LS-324CEXは浅い回転角度でロックと解除が行えるので、セッティングが非常にスムーズ。高さの調整なども素早く行える。

LS-324CEXにはレベリングベースが搭載されているため、不整地でも水平をスムーズに調整できる。レバーの開閉でロックと解除も簡単に行える。

G4

ギア雲台G4には各所に目盛りが記されているので、わずかな構図調整が非常にやりやすい。パノラマ合成のための連続撮影時の指標としても重宝している。

G4はギアによるアングルの微調整のほか、ロックレバーの切り替えによって大きくアングルを変更することもできる。

制作協力:株式会社ワイドトレード

秦達夫

1970年4月20日生まれ。長野県遠山郷出身。写真家の竹内敏信氏のアシスタントを経て独立。2023年東京写真月間の企画写真展に秋田白神山地をテーマとして出展予定。そのほかの写真展も企画中。