交換レンズレビュー
14-150mm F/3.5-5.8 Di III
コストパフォーマンスに優れる高倍率ズーム
Reported by 北村智史(2014/7/10 08:00)
14-150mm F3.5-5.8 Di III(Model C001)は、タムロン初となるマイクロフォーサーズ用レンズ。35mmフルサイズ換算で28-300mm相当となる高倍率ズームだ。
2013年1月に開発発表が行なわれ、春のCP+にも参考出品されたが、この6月にようやくの正式発表となった。ただし、残念なことに、VC(手ブレ補正機構)は非搭載となった。カラーバリエーションはブラックとシルバーの2色が用意されている。
デザインと操作性
外観は、タムロンらしい凹凸の少ないデザインで、幅広のズームリングが先端側、幅の狭いフォーカスリングがマウント側に配置されている。鏡筒の外から見える部分は金属製のようで、光沢感のあるヘアライン加工。望遠側にズームしたときにあらわれる内側の鏡筒はプラスティック製。マウント座金は金属製だ。
寸法は最大径63.5×長さ80.4mmで、オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6(最大径63.5×長さ83mm、260g)とパナソニックのLUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.(最大径67×長さ75mm、265g)と大差なく、重さはやや重めとなる(といっても、20gないし25gの違いなので、手に持って差が分かるかどうかは微妙である)。
電源をONにしたときだけ、絞り羽根が連続的に駆動する。機械的なリセット作業を行なっているのかもしれない。静かな室内だと耳障りに感じる人もいるかもしれないが、屋外であればまず気になることはない。
ズームリングの回転方向はパナソニックと同じで(カメラを上から見て、左から右に動かすと望遠になる)、オリンパスとは逆となる。リングにはほどほどのトルク感と滑らかさがあり、ズーム中の重さの変化は気にならない。望遠端にズームすると、広角端よりも44mmほど長くなるが、もとが軽量なこともあって、バランスの変化も無視できるレベルだ。
ズームロックレバーは備えているが、持ち歩いていて、自重で勝手に伸びるようなことはなかったし、望遠にした状態でレンズを上向きにして放置しても、自重で縮むこともなかった。
フォーカスリングの感触は、軽くて滑らか。フォーカシングは電子式で、操作するスピードによってピントの移動量が変化する。例えば、無限遠から至近距離まで大きくピントを移動させたいようなときには素早く回せばいいし、拡大してじっくりピントを追い込みたいときにはゆっくり回せばいい、といった具合。これは純正レンズと同じ挙動で、電子式の便利なところである。
AF駆動にはステッピングモーターが採用されており、作動音はない。E-P5に装着してのAF動作はズーム全域で高速かつスムーズ。シャッターボタン半押しから、ほとんど迷うことなく短時間でピントが合う。画面中心部でも端の測距点でも違いはない。純正レンズと比べて、不都合や不利なところはなさそうに思う。
遠景の描写は?
単焦点レンズや高性能タイプのズームの画に見慣れていると、少々物足りない感もなくはないが、高倍率ズームとしては良好な画質といっていい。
広角端の画面中心部は、絞り開放でもまずまずのシャープさで、1段ほど絞ったF5あたりがピークとなる。周辺部はいくぶんアマめだが、予想していたよりは解像はいい。ただ、絞ってもあまり画質に変化はない。望遠端もまずまずの印象。画面の中心部と周辺部の画質の差が少なく、また、絞りによる画質の変化も少ない。
歪曲収差はソフトウェアで補正されているようだ。広角端ではほぼ無視できるレベル、実焦点距離17mm付近から弱いイトマキ型の歪曲となる。量としてはかなり小さいので、実用上は気にしなくてもよさそうだ。倍率色収差は、広角端ではやや目立つ。望遠端でもわずかながら見られる。E-P5は色収差補正機能を持たないため、JPEG撮影派は注意すべきかもしれない。
周辺光量の低下はそれほど大きくなく、広角端はF5.6程度、望遠端はF8程度まで絞ると目立たなくなる。気になる場合は、「シェーディング補正」をオンにするといい(オリンパス機はカスタムメニュー内、パナソニック機は撮影メニュー内)。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
広角端は28mm相当の広角とあって、至近距離で絞り開放の条件でないと、ボケらしいボケになってくれない。前ボケはやや二線ボケの傾向があるが、後ボケは比較的滑らかで悪くない。撮影距離が数mの条件でF8まで絞ると、1m程度から遠方は被写界深度におさまってしまう。
望遠端も、やはり前ボケが少し硬めに感じられる。はっきりした二線ボケというほどではないが、前ボケを使いたいときは大きめにボカすようにしたほうがよさそうに思う。一方、後ボケは滑らかでいい。
逆光は?
逆光でのゴーストやフレアは皆無ではないが、きわめて良好に抑えられている。広角端で太陽を画面から外したカットで、中央やや上に小さなゴーストらしいものが見られるだけで、安心して撮影できるだろう。
まとめ
高倍率ズームは、タムロンにとってはお家芸ともいうべきジャンルで、ソニーEマウント用でも18-200mm F3.5-6.3 Di III VC(Model B011)を発売している。この14-150mmも、タムロンらしい作りで、画質面でもそつなく仕上がっている。
ただ、開発発表時にはVC付きでアナウンスされていたのは、繰り返しになるが残念な点で、基本的にボディ内手ブレ補正を持たないパナソニックカメラのユーザーには少々手を出しづらいといわざるをえない。また、オリンパス、パナソニックともにほぼ同じスペックのレンズがすでにラインナップされているのも逆風的要因だろう。
一方、実売価格では、オリンパスの14-150mmが別売のフードを合わせて買うと8万円近く、パナソニックも小型軽量化した14-140mm F3.5-5.6は7万6,000円ほど(F4-5.8の大きいほうは6万円ほどで買えるが)と差があるため、コストパフォーマンス的にはタムロンが有利となる。使っていて、機能、性能面での制約は特に感じなかったから、お買い得だ。