交換レンズレビュー

TTArtisan AF 40mm f/2 L-mount

希少なLマウントのAF対応40mmレンズ

TTArtisanブランドからフルサイズ用としては3本目となるAFレンズ「TTArtisan AF 40mm f/2」が2025年8月に発売されました。発売当初はニコンZマウント版とソニーEマウント版のみの展開となっていましたが、今秋、Lマウント版についても先行販売が開始されました。今回はそのLマウント版のインプレッションとなります。

Lマウントの焦点距離40mmレンズといえば、「SIGMA 40mm F1.4 DG HSM|Art」が存在していましたが、2023年末頃には終売となっており、現行品で新品購入できるLマウントの40mm単焦点AFレンズは、本レンズが唯一の選択肢です。

外観・操作性

本レンズはSTMによるAFと開放F2を実現した意欲作。それでいてサイズ感はかなりコンパクトにまとめられています。最大径が63mm、全長43mm。「手のひらサイズ」とアピールしても誇大ではありません。そのうえ金属鏡筒を採用しているにもかかわらず重さは約169gというのは驚きです。

金属鏡筒の質感や絞りリングの操作感はナカナカのもの。約3万円という販売価格からすると上々と言って良さそうです。いわゆる中華レンズのビルドクオリティは世代を経る毎に大きく改善されていて、日本メーカーもウカウカしていられません。

製品のクオリティで言えば、まだまだ大きな差があると筆者は考えていますが、既にある一定以上のクオリティが達成されている以上、「最高」でなければならないユーザーを除いて、魅惑の選択肢足り得るからです。

AF

AFの動作感や挙動については気になるところ。

今回、LUMIX S5IIとの組み合わせで試用しましたが、基本的に静粛かつ滑らかな駆動で感心しました。例えばLUMIX S 35mmF1.8などと比べてAFレスポンスで同等とは言えませんが、筆者基準でシビアに評価しても、駆動速度は不満の無いレベルで動作していました。動きの大きな対象を焦点距離40mmのレンズで撮るシーンがどれだけあるかは分かりませんが 、普段使いにおいては満足できるAF快適性である、と言って良さそうです。

AF精度については、風で揺れる花をコンティニュアスAFで追うような使い方では、純正レンズやシグマのLマウントレンズに明確なアドバンテージがありますが、撮影距離が1.5m以遠かつ画面中央付近でAFさせるのであれば、まずまずの精度で動作していました。シビアに言えば、精度そのものは多少前後にバラつく場合がありますが、そうした偶然性を楽しむというのもアリかも知れません。

パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/プログラムAE(1/100秒、F2.0)/ISO 100

一方で、撮影距離1m未満かつ周辺部でAFさせる場合には、光学性能が影響してか顕著にAFのつかみが悪化することが気になりました。特にS5IIでAF-Cで撮影するには快適とは言えない動作感でした。試しにコントラストAFのS5で試したところ、像面位相差AFのS5IIよりは多少快適に動作する、という状況でした。どちらにせよ、シーンによっては快適ではありません。

このように至近側かつ周辺部では描写性能も低下しますので、「価格なり」な部分があることは否めません。

MF時の動作感について、ピントリングの操作に対してリニアなレスポンスで好感触。正直に言えばもっと操作に対して粗い(ステップが粗い)動作かと想像していましたが、十分に密で制御も滑らか。ピントリングの回転角は大きいですが、その分ピントの追い込みはやりやすく感じました。

ピントリングの操作トルクは軽め。スレ感は少なく、販売価格からすると良好です。「好み」で言えば、ピントリングの操作トルクがあと15〜20%程度重くあれば好ましく思いますが、個体差がどの程度あるのかについては分かりませんので、試用した個体に限った話題となります。

どこか懐かしい画調

描写については、現代のAFレンズとしてはやや軟調傾向。撮影距離や光線状態、絞り値で多少の描写変動があるタイプで、逆光やハイキーではフレアで柔らかく、光線を選べばキリリとシャープな表情も見せてくれます。

パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/絞り優先AE(1/60秒、F2.0)/ISO 160

逆光時にはシグマやパナソニックのレンズと比べてフレア・ゴーストが出やすいことは否定しませんが、表現としてフレアを楽しむ余白があると捉えることもできます。

パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/プログラムAE(1/200秒、F2.5)/ISO 100

夜景などで点光源を画面の周辺部に配置するとコマ収差が……といった指摘も、この価格を前にすると野暮でしょう。

近距離側でも画面中央付近ではまずまず高い結像性能を維持出来ていましたが、周辺部はそれなり。上述の通り、AFにも影響があるシーンもありましたが、価格も含めたトータルでの満足度は高く、純正レンズやシグマレンズと比べて異なるキャラクター付けがされていることもあって「今日はこのレンズを使おう」という気持ちにさせてくれるところが、とても戦略的だと感じました。

パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/絞り優先AE(1/640秒、F2.0)/ISO 400

気になったのは近接性の低さ。最短撮影距離40cmというスペックは、画角からくる印象よりも思ったほど寄れません。ある程度の近接性も期待したい場合は、別の選択肢を検討した方が賢明です。

まとめ

まとめとしては、軽くコンパクトでお手頃。サイズ感は絶妙で、小さ過ぎないので撮影時のハンドリングも上々。描写性については好みの問題もありますが、個人的には好感触でした。

トータルパッケージとして、お値段以上でよく出来た製品です。

筆者個人の経験則から言えば、最新世代のViltrox以外の中華系AFレンズの動作には不満がありましたが、それも過去の話になりそうです。

パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/絞り優先AE(1/60秒、F2.0)/ISO 1600
パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/絞り優先AE(1/60秒、F2.0)/ISO 100
パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/プログラムAE(1/320秒、F3.2)/ISO 100
パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/プログラムAE(1/100秒、F2.0)/ISO 100
パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/プログラムAE(1/60秒、F2.0)/ISO 200
パナソニック LUMIX S5II/TTArtisan AF 40mm f/2/絞り優先AE(1/60秒、F2.0)/ISO 4000

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。日本作例写真家協会(JSPA)会員。