交換レンズレビュー
ソニー FE 85mm F1.4 GM II
高次元でバランスする解像感とボケ 小型軽量で取り回しやすく
2024年9月25日 07:00
ソニーの「FE 85mm F1.4 GM II」は、35mmフルサイズセンサーに対応したEマウント用の大口径単焦点レンズ。「II」の表記が示すように、前モデル「FE 85mm F1.4 GM」の後継モデルにあたります。
前モデル「FE 85mm F1.4 GM」は、同社の高性能ライン「GMレンズ」シリーズのなかでも最初期に登場したレンズのひとつ。ポートレート向けとされ重要な立ち位置にある焦点距離85mmの本レンズですが、その高い描写性能と使い勝手のよさには、さらなる磨きがかけられて登場しました。
サイズ感
まず分かりやすい特徴の1つが、前モデルから小型・軽量化を達成しているところです。
前モデルがφ89.5×107.5mm・820gであるところ、本レンズは84.7×107.3mm・642g。長さこそあまり変わりませんが、最大径は5mmほど小さくなり、2割以上軽くなっています。
実際に手にしてみると、デジタルカメラの高画素化に合わせて肥大化していたポートレートレンズが、II型となって本来あるべきサイズ感になってくれたといった印象で、かなり好意的に受け入れられます。動画撮影で使用する場合にも、この小型・軽量化は嬉しいところですね。
操作性
操作性についてはさすがGMレンズといったところで、85mm単焦点レンズとしては万全と言って良いくらいの贅沢な仕様になっています。
リング類としては、ピント調整用のフォーカスリングと、絞り設定用の絞りリングの2つを備えています。どちらも指がかりが良く最適なトルク感で、高性能レンズならではの心地よい操作感です。しっかりとした凹凸が確保されており、ブラインド操作でも分かりやすいのは、最新のGMレンズ、Gレンズらしい良さがあります。
撮影に直接関係するスイッチ・ボタン類としては、AFとMFを切り換えるための「フォーカスモードスイッチ」があり、その他、横位置撮影用と縦位置撮影用のために設けられた2カ所の「フォーカスホールドボタン」が装備されています。「フォーカスホールドボタン」は「フォーカスホールド」以外にも、「AFオン」や「AEロック」、「ISO感度」など、さまざまな機能を割り当てることができます。
また、鏡筒右側上部には「アイリスロックスイッチ」が装備されています。
オンにすると、「A」ポジションで絞りリングを固定するか、またはF1.4からF16の間で自由に設定できるか(Aポジションに移動しないか)を選択できます。
鏡筒右側下部には「絞りリングクリック切り換えスイッチ」があります。こちらは主に動画撮影用のための機能で、撮影時に絞り操作で明るさを調整したい場合、クリックを無しに設定すれば無段階で自然に明るさを調整できます。
丸型のレンズフード「ALC-SH180」が同梱されています。GMレンズ用のレンズフードらしく大変立派な仕様で、ロックボタンはもちろんのこと、内部の遮光処理も完璧で、先端部にはキズつき防止用のラバーも施されています。
解像性能
解像性能を確認してみたのが以下の画像になります。焦点距離85mmのレンズで、あまりこうした撮影をすることはないと思いますが、あえて絞り開放のF1.4で建築物を遠方から撮影してみました。
まさかここまでとは!? と驚いてしまうくらい、画面の隅々まで破綻なく細部を描き分けています。色収差を含めた諸収差の影響もほとんど見られず、絞り開放のF1.4の描写とは思えないほどの高い解像感を見せてくれています。
もちろん、絞り込んでいけばさらに解像感は向上し、画面全体の安定感も高くなりますが、それにしても絞り値による画質の変化が少ないことには、やはり驚かされます。まさに絞り開放から完全に実用的なレンズ。さすがは新型のGMレンズと言ったところでしょう。
解像性能とボケ味との両立
レンズ設計において、本来は相反するはずの「解像性能とボケ味の両立」を実現して登場したのがソニーのGMレンズでした。前モデルはそれを体現していましたが、II型となった本レンズはどうでしょうか?
絞り開放に設定して、ポートレート撮影をした画像が以下になります。
結果はさすがとしか言いようがなく、ピント面での解像感は上記の通り申し分画に上に大変ハイレベルな性能でありながら、背景のボケはあくまで自然で優しく、溶けるように綺麗です。
絞りをF2.0にして撮影したのが以下の画像です。
絞り値の変化にかかわらず、良好な解像感とボケ味を保ってくれるのが本レンズの優れたところ。被写体に応じて適切な絞り値を、常に安心して選ぶことができます。後ボケだけでなく前ボケも綺麗であるところは、前モデルからの、ひいてはミノルタ時代からの85mmレンズの系譜を引いているからなのかもしれません。
作例
最短撮影距離はAF時に0.85mでMF時は0.80m。最大撮影倍率はそれぞれ0.11倍、0.12倍です。ハッキリ言えば近接撮影性能はそれほど高くありません。
しかしながらこれは、この種のレンズとしては一般的なものです。モデルの手指の表現を捉えるためには十分な距離感が得られますので、目的に応じた実際の撮影で問題になるようなことはないと思います。
人物写真の全身やウエストアップの撮影となると、正確に瞳にピントを合わせるのは非常に難しいことでした。しかし現在のミラーレスカメラであれば、それほど難しいことではありません。カメラボディ側の瞳AF機能も進化していることもあって、なおのことポートレート撮影の自由度は高まっています。最新のミラーレスカメラ用として設計された本レンズの優位性は明らかといえるでしょう。
85mm F1.4を手に取るとついポートレートばかりを念頭に置いてしまいがちですが、それ以外での撮影でも適度な撮影距離を保ちながら被写体を端正に写し、浅い被写界深度で幻想的に写すことができる、85mmならではの効果は大いに発揮されます。例えばネコやイヌなど、愛おしいペットを写す際にも最適なレンズです。
同じくネコを被写体としていますが、こちらの作例は幾分スナップ撮影的に撮りました。目についたモノを素直に切り撮りやすい中望遠レンズですので、思ったよりも多くのシーンで活躍してくれます。ほどよく小型・軽量化されていますので、持ち歩いても苦にならないところも良いです。
まとめ
「解像性能とボケ味の両立」を実現したのがGMレンズですが、そのなかでも、前モデル「FE 85mm F1.4 GM」はその特徴を端的に良く表している高性能レンズでした。II型となった本レンズは、GMレンズの描写性能をさらに高い次元にまで進化させたモデルになります。
それでいてより小型で軽量になっており、ポートレート撮影での使い勝手や、動画撮影での利便性も大きく向上しています。
さすがにお値段も重量級になってしまうのは仕方のないことですが、ソニーのGMレンズの醍醐味を全面的に体感したいと言うなら、本レンズは最高の選択肢のひとつになることは間違いありません。撮るほどに、研ぎ澄まされた高い解像性能と自然で美しいボケ味の調和に魅了されていくことになると思います。
モデル:明日香