交換レンズレビュー

SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN

いつも持ち歩きたくなるコンパクトなAPS-C超広角ズームレンズ

シグマからAPS-Cフォーマット用の超ワイドズーム「SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary」が登場した。このレンズは画角と画質はもとより、クラス最小最軽量、ズーム全域でF2.8という明るさが魅力だ。255g(ソニーEマウント版)という質量は、常時携行するレンズとしても最適だろう。

コンパクトながら使い勝手と画質も良好なレンズ

「SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary」は手のひらに乗ってしまうほど小さくて軽い。外形寸法および質量はφ72.2×64.0mm、255g(ソニーEマウント版)である。それでいてビルドクオリティも高い。ギュッとシグマの技術が固められたかのようなフォルムはなかなかカッコいいと感じる。

光学系は10群13枚。FLD3枚、SLD1枚、非球面レンズ4枚を採用して高い画質を実現している。1枚目のレンズは偏肉量、屈折率ともに大きな非球面レンズになっておりレンズ枚数を減らすことに寄与しているとのこと。画質とサイズ感が高い次元で両立しているレンズだ。

10mm時にもっとも伸長し、18mm時に一番短くなる設計になっている。ズームリングの指がかりとトルク感もちょうどよく、スムーズに画角の調整が可能だ。カメラ側に設けられたフォーカスリングも同様である。ちなみにワイド端の10mm時で11.6cmという最短撮影距離を実現している。

付属のレンズフードが面白い。この新開発の「プッシュオン式花形フード」は通常のバヨネット式と違い、レンズに押し込むだけで装着が可能だ。外すときは少しスライドすればいい。慣れれば着脱がラクになるだろう。この新機構もレンズフードの軽量コンパクト化に役立っているとのことだ。

作例

今回はこの「SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary」をソニー製APS-Cミラーレスカメラ「α6700」に装着して撮影を楽しんだ。軽快に明るい超ワイドズームの世界を味わうことができた。


ワイド端10mmとテレ端18mmはこのような感じに写る。公園にあった長い滑り台を軽々と飲み込むワイド感である。パースを活かした広大さと、スタンダードなワイド感の2つを楽しめるズームレンズになっている。

ワイド端
α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/プログラムオート(1/200秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 100
テレ端
α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/18mm(27mm相当)/プログラムオート(1/250秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 100

招き猫で有名なお寺で、足元にズラリと並んだそれをワイド端とテレ端で撮影した。

ワイド端10mmでは招き猫が無数立ち並んだ様子をパース感あふれる描写で捉えられた。約27mm相当の画角となるテレ端では、自然なワイドレンズ的描写で落ち着きのある写りに。

ワイド端
α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/プログラムオート(1/60秒、F4.0、±0.0EV)/ISO 100
テレ端
α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/18mm(27mm相当)/プログラムオート(1/60秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 100

ワイド端で走り去る電車を撮影した。フレーム内に太陽が入っているが、イヤなゴーストやフレアの発生はない。光芒がきれいに感じられる。

α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/マニュアル露出(1/800秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 100

焦点距離10mmによる超ワイドな画角により、街中のワンシーンを印象的に捉えることが可能だ。広大なフレームの中に光と影を適切に配置して、視覚的にダイナミックなアングルで被写体を捉えると面白い。線路脇陸橋下での光景をイメージどおりにキャプチャーできた。

α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/プログラムオート(1/125秒、F6.3、−1.0EV)/ISO 100

多摩川での夕景だ。このレンズはボケがきれいに感じる。夕陽と葉が重なったポイントから、前ボケと後ボケのスムーズな感じが好印象である。枝の中にカメラを突っ込んで撮ったカットだが、軽量コンパクトさの恩恵を受けた。

α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 100

狭い路地や雑踏でのスナップ撮影にこのレンズは重宝する。引きがなく、立ち位置を変えることができない場所などで役に立つ。まだ眠っている飲み屋街でのカットだが、こういうシチュエーションでの人物撮影でも大いに活躍しそうである。

α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/プログラムオート(1/60秒、F4.5、−1.0EV)/ISO 100

オフィス街でのヒトコマ。壁に描かれた絵と人物の対比を狙ったが、超ワイド〜ワイドへとスムーズにズーミングできる「SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary」はとても有効であった。建物の直線も真っ直ぐに描写しており(カメラ内補正オン)カッチリとしたカットになった。

α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/プログラムオート(1/80秒、F4.5、−0.7EV)/ISO 100

テレ端付近での描写はとても素直だ。年季の入った木とトタンの壁、自転車のディテール感も良好だ。常時カメラに装着しておくレンズとしてもオススメできる印象である。望遠よりも広角が好き、というフォトグラファーにはピッタリのレンズではないだろうか。これに同社の「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN|Contemporary」を組み合わせればだいたいのシーンはカバーできそうだ。

α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/17.4mm(26mm相当)/絞り優先AE(1/40秒、F4.5、−1.0EV)/ISO 100

何よりもズーム全域でF2.8と明るく、ワイド端10mm時で11.6cmという最短撮影距離が魅力である。日陰のシーンでもググッと被写体に接近し、パースとボケ感を活かしたカットを手にすることができた。ピント面も極めてシャープで好感が持てる。

α6700/SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN/10mm(15mm相当)/絞り優先AE(1/160秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 100

まとめ

「SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN|Contemporary」は何よりも軽量コンパクトでいい。常時装着、常時携行でも疲れ知らずだった。そして迫力ある超ワイド域から日常使いのワイド域までF2.8という明るさで撮影できるのだから申し分ない。そして逆光にも強く、近接撮影もお手のもの。もちろんボケも上質だ。Lマウント、Eマウント、Xマウントユーザーならば試すべきレンズになっていると感じた。

1966年神奈川県生まれ。新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナー、コンサルティングなどで活躍中。有限会社サスラウ代表。著書にはiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapherー写真を撮り、歩き続けるための80の言葉(雷鳥社)」、「iPhone フォトグラフィックメソッド(翔泳社)」などがある。公式サイト:http://www.sasurau.com