デジカメアイテム丼
腕時計を撮ろう!「男のブツ撮りテクニック」
マルチアングル三脚で差が出る“光り物”撮影講座
Reported by 森脇章彦(2014/3/12 14:58)
デジカメ Watchをご覧の皆さん、写真家の森脇章彦です。
今回は腕時計や高級イヤフォンなど、自慢したいコレクションを美しく簡単に撮影するにはどうすればよいかを解説したいと思います。
腕時計を例にしますが、このテクニックは他の小物やカメラなどにも応用できます。今回の撮影スタイルを真似て、ぜひ挑戦してみて下さい。
まずは屋外で撮ってみよう
光り物の腕時計やカメラなどは、設備の整ったスタジオで撮影しないと上手く撮影できないと思っている人も多いでしょう。
でも最初にチャレンジするなら、野外の公園やベランダなどで、自然光を利用すると案外簡単に撮影できます。
とはいうものの、少しだけ注意するポイントと準備するものが必要です。
それでは準備するものたちをご紹介します。
まずはデジタル一眼レフカメラです。35mmフルサイズセンサー搭載のカメラなら、できるだけミラーショックの少ないカメラがオススメです。キヤノンならEOS 6D、ニコンならD610あたりのカメラが、経験上望ましいです。
レンズは100mmクラスのマクロレンズが一番使いやすいです。できれば、三脚座が付いているレンズが便利です。
そして、小さなレフ板もあればよいでしょう。加えて、被写体にきれいな写り込みを作るトレーシングペーパーが少々と、場合によっては背景紙や布があれば完璧です。
野外での安定した撮影には三脚は欠かせません。今回は軽量でしっかりカメラを固定できるカーボン三脚と、自由なアングルが指定できるアングルユニットを使用しました。
下の2枚の写真を見て下さい。腕時計の撮影では、ベゼル部分、つまり周りの枠に周辺の風景などが写り込みやすいものです。左の写真でも、背景に使用した布が写り込んでいます。こんな場合は時計を背景から少し上に上げてやればよいのです(右の写真)。そうすることで醜い写り込みは排除できます。
それでは実際に、屋外での撮影手順を解説します。まずは、先ほど説明した写り込みに注意しながら、腕時計のすぐ下が平坦でない場所を見つけ、腕時計をテープで固定します。
重要なのは、ベゼル部に背景の写り込みができないように、できるだけ腕時計のフェイス面ギリギリまで前に出してセットすることです。
このとき便利なのがアングルユニットです。自分が撮影したい場所や角度に素早くカメラポジションが作れるからです。この時点で構図の決定とピントを合わせまでを行ないましょう。
次に、レンズフードからベンチまで、テープでにトレペを貼って固定します。空の色が腕時計にかぶらない様にするためです。
そして時計の背後にボケ描写を利用するため、その辺に落ちていた木の枝をテープで止めて準備完了です。枝が無い場合は雑草でも構いません。
後はしっかり文字盤にピントを合わせ、シャッターを切ればでき上がりです。
ホワイトバランスはオートで構いませんが、露出補正は必要です。白文字盤の場合は+0.7〜+1.0EVくらい。黒文字盤なら反対に-0.3〜-0.7EVくらいでOKです。
どうですか簡単でしょ。さらに、レフ板の位置を文字盤に光が当たるようにすれば完璧です。
こうして撮影された写真がこちらです。上手く写り込みを排除して、きれいに撮影できています。
この様にまずは自然光を利用して撮影までの手順を反復練習すれば、誰でも簡単に「男のブツ撮り」(腕時計、カメラなど、男性が好きなアイテムに応用が可能なので)が行なえます。思った以上に大きなセットが不必要なのが、屋外撮影のよい点です。
今回は撮影時に曇ってしまったので、多少ISO感度は高めにしています。でも天気のよい日なら、ISO100〜200で撮影できます。絞りやシャッターなど撮影データを参考にチャレンジしてみて下さい。
いよいよ屋内で撮影
野外での基本的な撮影手順が理解できたところで、今度は屋内での「男のブツ撮り」に移りたいと思います。
屋内での撮影となれば、大きなストロボやレフ板など、本格的なスタジオ撮影を想像されるかもしれませんが、森脇流は至って簡単です。
準備するものは、小型軽量なミラーレスカメラとマクロレンズ。ワイヤレス機能に対応したクリップオンストロボ1台と、ストロボ光をやわらげるディフューザー、ストロボに使用するミニ三脚です。
今回は少し小さめの時計と、高級イヤフォンを撮影してみようと思います。
ストロボに使用するディフューザーが2種類あります。写真のように1つはクリップオンストロボ用ともう1つは内蔵ストロボ用です。どちらも柔らかな光を飛ばしてくれるものです。
自宅などの狭い室内での撮影では写真の様なマルチアングル三脚が大変便利でオススメです。今回は、ベルボンのVS-5400Qという製品を使いました。
この組み合わせの良い点は、大きく分けて3つあります。1つは、カメラに取り付けるクイックプレートにカメラずれ防止のストッパーがあること。
次に、カメラを縦位置にした場合でも安定して撮影できる直角ブラケットが同梱されていること。三脚とV4-Unitを別々に買うと、単体で購入しなければなりません。
そして、小さくても抜群の安定感があることです。僕のオススメ三脚の1本です。
ストロボ用のミニ三脚も、テーブルフォトには必需品です。これも大変便利な三脚です。
チョットお勉強の時間
今回の屋内撮影で使用するカメラは、35mm判よりマイクロフォーサーズのセンサーを採用したミラーレスカメラです。これには大きな訳があります。
僕も仕事の現場で、マイクロフォーサーズ機はいつも使用していますが、その訳がこの2枚の写真です。
左が35mmフルサイズセンサーの一眼レフカメラ、右がマイクロフォーサーズカメラで撮影したものです。どちらもマクロレンズを使って等倍で撮影したものですが、撮像素子の面積が小さいマイクロフォーサーズの方が、画面に占める被写体の割合が大きくなります。皆さん知ってました?
背景の選択と時計のセッティング
ここでは小型の航空クロノグラフ時計を撮影する準備のお話をします。
屋外でのセッティングでもうおわかりだと思いますが、直に時計を置くのではなく、高さがあるものの上に置くことで、周囲の写り込みを軽減しましょう。
今回は古い二眼レフカメラのレンズ部に時計をセットします。黒文字盤の時計なので背景も黒い布を引きました。時計に角度を付ける為に裏にテープを付けています。これだけで準備完了です。
クリップオンストロボのセッティング
次にクリップオンストロボのセッティングですが、ここが一番重要です。プロとアマチュアで大きな差が出るポイントになります。
下の写真を見てください。アマチュアの人達の多くが被写体に向けてストロボをセットしますが、これはNG。腕時計の風防が光ってしまうからです。
考え方としては、腕時計の上をストロボ光が横に通り過ぎる感覚でセットして下さい。発光面は腕時計に向いておりません。はい!! この部分だけで100万円の指導料をもらいたい気分です(笑)。こうする事で写真の様に上手く撮影ができます。
最後の仕上げはレフ板で行なう
ストロボの位置や角度が理解できたら最後の仕上げはレフ板で行ないます。
レフ板といっても、森脇流ではA4サイズのプリント用紙でまかないます。簡単です。2枚の用紙を貼り合わせて自作しましょう。
注意点は用紙の厚みと色です。高級な少し黄色みのかかったものは避けましょう。またあまり薄い用紙は立ちません。出来上がったら写真の様にコの字にセットしてシャッターを切れば出来上がりです。
どうですか? 時計の右側が明るく美しく撮影できたでしょう。これで完成です。撮影データを参考にして下さい。
高級イヤフォンも撮ってみる
それでは被写体を腕時計から高級イヤフォンに変えてみましょう。今回はメタリックな背景のヘアラインを生かして被写体の手前に影を作る撮影方法に挑戦します。
まずは構図とピント合わせを行ないます。
試しにストロボを被写体に向けて撮影しましょう。これまで説明した通り、このままでは撮影テクニックとはいえません。では次のステップです。
ストロボライティングの応用編
腕時計の撮影ではストロボ光を上側にずらしました。今度は逆方向、つまり下向きにストロボのヘッド位置をずらしていきます。撮影された写真とストロボヘッドの位置の関係を見て下さい。
ストロボヘッドの角度の変化にあわせ、ストロボ光の位置が上方向に上がっているのが分かると思います。実は同時に、ストロボの高さも微妙に少しずつ上げています。ここが重要なポイントです。見るべき点は、イヤフォンの手前にできる影の出方。これを調整しています。
この時点では腕時計同様、レフ板はまだ入れません。影の出方がハッキリ見えなくなるからです。
自分が一番カッコイイと思った影の出方と後方のハイライトの入り方で、ミニ三脚を固定しましょう。
最後はレフ板で調整
最後はお決まりの手製レフ板の出番です。Vの字にして手前に置き、イヤフォンの手前を明るくして出来上がりです。
格好良く撮影できました。これで完了です。白いイヤフォンや透明なイヤフォンは、露出補正を+0.3〜+0.7EVぐらいにします。逆光撮影になので、黒い場合でも+側の補正になるはずです。撮影データを参考にチャレンジしてみて下さい。