サムヤン「8mm F3.5 Fisheye CS」

~実売3万円の対角魚眼レンズ

8mm F3.5 Fisheye CS

 今回は、先にお伝えした「サムヤン『85mm F1.4 Aspherical IF』」に引き続いて同じサムヤン製の「8mm F3.5 Fisheye CS」(2万9,800円前後)をレビューしたい。なお、サムヤンブランドの詳細は先の記事を参照されたい。

 この8mm F3.5 Fisheye CSは、85mm F1.4 Aspherical IFとともに新東京物産が正規輸入を手がける対角魚眼レンズだ。現在、国内で正規に流通しているサムヤンレンズはこの2本だけとなっている。なお、85mm F1.4 Aspherical IFは35mmフルサイズにも対応していたが、8mm F3.5 Fisheye CSは、APS-Cサイズ相当の撮像素子または4/3型(フォーサーズ)を搭載したデジタル一眼レフカメラ専用となっている点に注意したい。


花形フードは組み込みCPUは内蔵しておらず、電子接点はない

 このレンズも85mm F1.4 Aspherical IFと同じく、MF専用でCPUも非内蔵タイプとなっている。マウントはキヤノン用、ソニー用(Aマウント)、ニコン用、フォーサーズ用、ペンタックス用をそれぞれ用意している。対角の画角が180度になるのは1.5倍換算のセンサーを搭載したカメラの時だけだ。1.6倍換算のボディに装着すると対角167度になる。

 主な仕様は次の通りだ。レンズ構成は複合非球面レンズ1枚を含む7群10枚。最短撮影距離は0.3m。サイズは74.8×75mm(全長×最大径)、重量は417g(数値はいずれもニコン用)。

D300に装着したところ

 ライバルとなりそうなAPS-Cまたは4/3用対角魚眼レンズを探してみると、オリンパス「ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheye」(実売7万3,700円前後)、シグマ「15mm F2.8 EX DG Diagonal Fisheye」(5万8,000円前後)、トキナー「AT-X 107 DX Fisheye」(6万2,300円)、ニコン「AF DX Fisheye Nikkor 10.5mm F2.8 G ED」(実売7万8,100円前後)、ペンタックス「DA Fisheye 10-17mm F3.5-4.5 ED (IF)」(5万4,800円前後)などがある。

 これらのレンズに比べると、4割強から6割弱ほど低価格と言える。既存の対角魚眼レンズでも比較的低価格なモデルもあり、85mm F1.4 Aspherical IFに比べると“格安”と言えるほどの価格差は無い。

 すべてのマウントでAFに対応していないことに加えて、αマウント(Aマウント)用、EFマウント用、フォーサーズ用といった本来電磁絞りを採用しているマウントでは自動絞りも使えない。これらを考えると機能面では価格相応のスペックなのかもしれない。

絞りリングも回しやすく操作性は良い

 鏡胴のデザインは、85mm F1.4 Aspherical IFと同様にニコンのレンズを思わせるデザインになっている。花形フードは組み込みのため外すことはできず、またフィルターネジは備えていないが魚眼レンズでは一般的な仕様だ。

 フォーカスリングは幅広でグリスの感触も良く回しやすい。最短から無限遠までの回転角は120度程度。85mm F1.4 Aspherical IFではやや回しづらさを感じた絞りリングも、こちらはスムーズに指をかけることができた。F5.6からF16の間は1/2段ごとにクリックがある。

フォーカスリングもグリップはよいD300では焦点距離と開放F値を入力すると絞りが表示される
最小絞り(F22)にしたところ。ほぼ正確な6角形になっている

 今回もニコン用をお借りしたのでDXフォーマット(APS-Cサイズ相当)の「D300」で試用した。85mm F1.4 Aspherical IFと同じく、CPUを内蔵していないレンズなので使い勝手も85mm F1.4 Aspherical IFと同様だ。詳しくは85mm F1.4 Aspherical IFの記事に書いたとおり。D300でもレンズの焦点距離と開放F値を入力することでExif情報に絞り値が出たりRGBマルチ測光が利用できる。

 焦点距離を入力するとフォーカスエイドも機能はするが、焦点距離が極めて短いレンズなのでピントが合っているとカメラが判断する焦点域が広く、あまりあてにはならないようだ。厳密なピント合わせにはライブビューの拡大表示を活用したい。ただ、それを持ってしてもピントの山は掴みづらかった。いっそ、被写界深度の深さを利用して目測でピントを合わせた方が効率が良さそうだった。


レンズキャップは被せ式裏面
専用ポーチが付属する

低価格で魚眼レンズを体験したい人には気軽な選択肢

 画質に関しては実写サンプルから判断いただきたい。開放では甘さがあるがF5.6かF8まで絞るとフレアっぽさは改善する。撮影日はあいにく雲が多くてコントラストが高くない条件ではあったが、解像力ははもう少しあっても良いように感じた。しかし、魚眼レンズという特殊性を考慮すると、必要十分なのかもしれない。なお今回の試写では、開放絞りでも周辺光量低下はほとんど見られなかった。

 魚眼レンズは使いこなしが難しいとされており、購入をためらっているユーザーもいるかもしれない。比較的低価格なので、これから魚眼レンズを試してみたいというユーザーは一考してみては如何だろうか。


実写サンプル

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウに800×600ピクセル前後で表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

D300 / 8mm F3.5 Fisheye CS / 4,288×2,848 / 1/500秒 / F8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 8mmD300 / 8mm F3.5 Fisheye CS / 4,288×2,848 / 1/400秒 / F8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 8mm
D300 / 8mm F3.5 Fisheye CS / 4,288×2,848 / 1/320秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 8mmD300 / 8mm F3.5 Fisheye CS / 2,848×4,288 / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 8mm
D300 / 8mm F3.5 Fisheye CS / 4,288×2,848 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 8mmD300 / 8mm F3.5 Fisheye CS / 4,288×2,848 / 1/640秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 8mm

【訂正】記事初出時、8mm F3.5 Fisheye CSを「実絞りタイプ」と記載しておりましたが、誤解を招く表現だったため「CPU非内蔵タイプ」との表記に改めました。同じく、「自動絞りに対応していない」と記載しておりましたが、「αマウント(Aマウント)用、EFマウント用、フォーサーズ用といった本来電磁絞りを採用しているマウントでは自動絞りも使えない」に改めました。




(本誌:武石修)

2010/7/20 00:00