特別編:三脚を使って雪景色を撮る
D700 / AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED / 約4.3MB / 4,256×2,832 / 1/80秒 / F8 / +0.7EV / ISO200 / WB:晴天 / 27mm |
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
冬の撮影といえば雪景色でしょう。「雪を撮る」というと、どうしても重装備で雪山を登る本格的な撮影を考えがちですが、意外と身近な場所でも撮れるものです。
例えばスキー場近辺は、道路が整備されている上、除雪もしっかりされています。場所によっては鉄道も通っており、さらに宿泊施設や食事どころもたくさんあります。デジタル一眼レフカメラのユーザーなら、スキーや温泉旅行のついでに、普段撮れない雪景色を撮るのはどうでしょうか。
その際、ぜひ持っていってほしいのが三脚です。足下が悪くて雪や風の中での手持ち撮影は、意外と難しいもの。家に戻ってから「こんなはずでは……」と悲しむよりは、せっかくの雪景色なので、三脚できっちり撮影したいところです。
今回は、ニコンD700とAF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G ED、AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED、AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR IIを持って、スキー場の周辺で撮影してきました。三脚はベルボンのジオカルマーニュE635です。
■持っていきたい「スノーシュー」
雪景色の撮影では、もともと気温が低い上に足下が悪くて不安定、さらに冷たい風が吹くなど、普段の撮影よりも条件がよくありません。一面の銀世界とはいえ、晴れてくれないと意外にシャッター速度も低めになりがちです。そのため、ちょっとしたミスを頻発しがちです。そのため、手持ちでの撮影ではなく、三脚でじっくりと構図を決めることをおすすめします。
その前に紹介したいのが、雪景色での撮影で活躍する「スノーシュー」です。雪が深くて柔らかいと、三脚の脚の先端はどうしても雪に埋まります。雲台に載せる機材が軽ければあまり沈みませんが、本格的な機材になると脚ロックを超えてずぼっとはまり、アングルが安定しません。さらに脚についた水分が凍りつき、収納時に脚を痛めることもあります。
スノーシューは、脚が雪に沈み込みにくくしてくれるアイテムです。3枚一組で使い、ベルボンの場合は、石突きを留めている石突きネジに付属のアダプターを使って留めます。アダプターは3種類の大きさが付属しており、様々な大きさの三脚で使えます(石突きが固定タイプの三脚など、対応していない製品もあります)。実売価格は2,500円前後。
これがスノーシュー(右)とそのアダプター | アダプターはL、M、Sの3種類が3個ずつ同梱されていた |
三脚の石突きネジに適合するアダプターをはめて、石突きを上方向に締め上げる | 3本の脚にスノーシューを装着したところ |
スノーシューの裏側 | 実際に雪の上で使っている状態 |
スノーシューをつけたからといって、絶対に脚が沈み込まないというわけではありません。雪質によっても変わりますが、スノーシューがない場合の使いにくさとは別物。樹脂製で軽いものなので、ぜひ一緒に持っていきたいものです。
■ライブビュー+三脚できっちりした構図に
三脚を使うと、きちんとした構図を作りやすくなります。前述したように、雪景色の撮影は、普段より厳しい条件になりがちなので、三脚を使ってしっかり構図を考えて、ここ一番でシャッターを切りたいものです。
三脚を使うメリットとしてまず挙げたいのが、「微調整が効く」、「水平がとりやすい」という点です。例えば下の例では、左は水平ですが、右はわずかに傾いています。風景写真ではよほどの意図がない限り、水平での撮影が基本。特に遠景を撮るときや、地平線や水平線が入るときは要注意です。
そのため、水準器は必ず持参します。最近はデジタル一眼レフカメラに電子水準器が内蔵されているので、とても便利になりました。しかし、電子水準器はファインダーをのぞきながら手持ちで確認するよりも、三脚を使って安定した状態にしておき、3ウェイ雲台で微調整する方が使いやすいでしょう。
また、三脚はライブビューとの相性が抜群です。そもそもライブビューはファインダーから眼を離して使うもので、手持ちだと不安定。軽いカメラと小さなレンズなら問題ないでしょう。しかし、重量級の機材になると、眼の高さに保持するだけでも結構大変です。ピント位置を拡大表示して、マニュアルフォーカスでしっかりピントを合わせられるのもライブビューの利点ですが、70-200mm F2.8などの望遠ズームレンズの場合、手持ちでそこまで微妙な操作を行なうには、そうとう腕力がある人ならともかく、訓練が必要だと思います。足下が悪くて風のある日は、さらに難易度が上がることでしょう。
画面の一部を拡大してピント合わせ。三脚とライブビューの相性は良い | 目線より高い位置にカメラが来ても、ライブビュー+三脚なら撮影できる |
ライブビューの良さは、大きな背面液晶モニターを見ながら、落ち着いて撮影できること。また、ファインダー視野率の低いカメラでも、視野率100%での撮影が可能です。視野率100%のファインダーのカメラを使っていたとしても、ライブビューなら画面も大きいので、画面の端に写り込んだ余計なものが、より気づきやすくなります。ただし、明るい直射日光が液晶モニターに当たるような状況では、ファインダーの方が使いやすい場合があります。
■粘って撮る風景写真の味方
今回、三脚があって一番良かったと感じたのは、氷結して雪が積もった湖に、ぽつんと残された樹木を遠方から狙ったシーンです。背景に人工物があるため、いったんは撮影を諦めました。しかし、樹木の後ろが吹雪くと、人工物が上手い具合に隠れてくれます。それを望遠ズームレンズで延々と待っていたのですが、三脚のおかげで構図を変えることなく、ベストな状態になるまで待つことができました。風があり、雪も降っていたので、手持ちで構図を決めながら待ち続けるのは不可能だったと思います。
三脚にカメラをつけたまま粘った結果、自分の理想に近い状態で撮影できた D700 / AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR II / 約2.5MB / 2,832×4,256 / 1/160秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / WB:カスタム(5,000K) / 130mm |
また月並みですが、三脚があれば低感度で高画質な撮影が可能です。晴れの日の日中の雪景色は比較的明るく、速いシャッター速度を切れますが、今回のような降雪時はプラス補正することもあり、予想以上にシャッター速度が遅いものです。また、望遠レンズで絞り込んだり、マクロ撮影を行なうことも多いでしょう。
今回使ったD700は高感度画質が優れているので、少しぐらい感度を上げてもあまり気になりません。AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR IIの手ブレ補正も強力に感じました。最短撮影距離でも
ただし日没寸前の夕暮れ時になると、手持ちではISO1600やISO3200での撮影が必要になっていたと思います。白やグレーの雪にカラーノイズがのると、プリントしたときにとても目立つものです。
■まとめ
最後に三脚の仕様について。普段、ナットロックの三脚を愛用している私ですが、手袋をした状態だとレバーロックが便利に感じました。また、寒い場所での撮影は、ウレタングリップ付きの製品が役立ちます。雲台は3ウェイが微調整がやりやすいのでおすすめ。さらにカメラボディを複数使う場合は、クイックシュータイプの雲台だと、手袋をしていてもカメラの交換がたやすくなります。今回はボディは1台でしたが、ボディとAF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR IIの2カ所にクイックシューを取付けました。
ライブビュー+三脚はローアングルも便利。この状況で寝そべって撮る気は起きない | 三脚座のあるレンズだと、横位置と縦位置を切替えても光軸の位置が変化しない |
雪景色撮影の基本はプラス補正。青空がない場合はコントラストが下がるので、川面や木々を探して構図に入れてみてください。ホワイトバランスを太陽光にすると、降雪時は青みがかった世界になります。色を入れたい場合は、落ち葉や木の実がワンポイントになります。
また、スキー場近辺の気軽な撮影とはいえ、雪が激しく降っている場合や、雪崩の危険が強い場合は、撮影を断念することも大事です。湖の上の氷にも注意してください。氷の上に雪が積もっていると、どこから氷なのかわからないことがあります。とにかく無理をせず、雪景色の撮影を楽しんでください。
2010/1/8 12:06