梅本製作所「SG-80」

~5年の歳月を費やして完成したクイックシュー

クイックシュー「SG-80」(手前)とシュープレート(奥)。シュープレートは上から見ると台形になっており、確実にシュー本体に固定される構造となっている。プレートのカメラと接する部分はコルクが貼られ、カメラ底部へのダメージを軽減する。また、カメラとのガタツキを防止する特許技術「剛性体」(4つの黒丸)も備えている

 クイックシューは、三脚や一脚などの使用頻度の高いカメラ愛好家には便利なアイテムである。カメラの雲台への取付け取外しはワンタッチで、スピーディ。撮影する度に三脚ネジを締めたり緩める必要がないし、確実だ。

 仕事柄、写真家の撮影に同行したり、機材を見せてもらうことが多々あるが、風景、山岳、鉄道などに関わる写真家はクイックシューを装着していることが多いことからも、利便性や信頼性は実証されているといえる。

 さて、今回紹介するのは梅本製作所が製造するクイックシュー「SG-80」とクイックシュー直結専用自由雲台「SL-60AZD」、「SL-50AZD」、「SL-40AZD」だ。


ラインナップ

価格

SG-80セット
(クイックシュー本体とカメラプレート1枚のセット)

15,800円

SG-80ダブルプレートセット
(クイックシュー本体とカメラプレート2枚のセット)

19,800円

SG-80シュー本体のみ

11,800円

SG-80シュープレートのみ

5,800円

SL-60AZD(クイックシュー専用自由雲台、大サイズ)

14,800円

SL-50AZD(クイックシュー専用自由雲台、中サイズ)

12,800円

SL-40AZD(クイックシュー専用自由雲台、小サイズ)

10,500円

“くさび効果”で強力に固定するクイックシュー

シューにプレートを差し込むと、シューのカムフォロア(シルバーの上方へ突き出した突起部)がプレートのカム(「UMEMOTO」と打刻されていない方の凹部)に沿って動き自動的にロックされる。プレートを外す場合は、カムフォロアと一体になったレバー(写真ではシューの左側面に見える)をスライドさせる

 SG-80は、同社のWebサイトによると5年の歳月をかけて完成させた製品という。基本的な構造としては、雲台に装着するシュー本体とカメラに装着するプレートからなる。プレートは上から見ると台形の形をしている。シュー本体に取り付けるとこの形が生み出す“くさび効果”によりプレートが左右から挟み込まれ強力に固定される。

 プレートのシューへの装着自体はほかのクイックシューと同じような要領だが、固定が完了するといかにも剛性の高そうな心地よい音がする。これはシューに内蔵されたカムフォロアとプレートのカムの連動によるもので、その後はユーザーがレバーでプレートを締め付ける動作などは一切必要ない。


カメラへのプレートの装着は、台形の小さな辺のほうをカメラ前面側にして行なう。取り付けの際はコインでネジを締めるが、望遠レンズなどの三脚座にプレートを装着する際はマイナスドライバーの使用がメーカー推奨となるなお、SG-80の耐荷重は6kg。快適に撮影できる範囲は5kg以下となっている。

 シューの側面部にはカムフォロアと一体になるレバーが備わり、シューからプレートを外すときは、このレバーをスライドさせるとそれまで強力に固定されていたロックがあっけなく解除される。ちなみにプレートをシューに固定する際、ロックされる音が耳障りとなる場合は、レバーでロックを解除した状態にしプレートをシューに装着するようにする。

 シューおよびプレートとも堅牢なアルミ合金製だが、肉抜き加工が施されており見た目よりも遥かに軽量だ。シュー本体は幅100×奥行き50×高さ15mm、質量は110g。プレートは同じく77×47×8.5mm、質量50gとなる。また、シューおよびプレートともそれぞれの角は丸みがつけられ、特にプレートはカメラを手に持って撮影した際、手の平に当っても痛くなるようなことがない。カメラへのプレート装着は従来どおりコインなどを使用するが、レンズの三脚座に装着する際は締め付けトルクが不足するため、市販のマイナスドライバーで締め付けることが推奨されている。

 

プレートはアルミ合金製だが、肉抜き加工により重量は50gに抑えられているので、さほど重く感じることもないだろう。プレートの角は丸くなっているため、手持ちでカメラを構えたときに痛く感じることはない

ノブの形状も選べるクイックシュー専用雲台

左からクイックシューSG-80を装着したSL-60AZD、SL-50AZD、SL-40AZD。焦点距離200mm程度のレンズまでしか使用しないなら、中間の大きさに位置するSL-50AZDが使いやすい

 SL-60AZD、SL-50AZD、SL-40AZDはクイックシュー直結専用雲台だ。同社の自由雲台SL-AZシリーズをベースにしたものである。従来のカメラ台となるところは地のアルミ合金製のままとなり、クイックシューとダイレクトに固定されるためより高い剛性を得ることができる。

 SG-80をSL-AZDシリーズに取り付けた際、付属する止めネジを使用するとより確実に固定することができる。同じく同梱の六角レンチで締め込むだけなので簡単だ。なお、これらの雲台に直接カメラを装着することはできない。


クイックシューSG-80は直結専用の自由雲台SL-AZDシリーズとの親和性が高く、装着したときのデザイン上の一体感もある。SG-80の三脚ネジ穴は3/8インチだが、当然のことながら付属するアダプターで一般的な1/4インチにも対応する直結専用雲台にはSG-80をより強固に固定するための“止めネジ”が付属する。専用のレンチも付属しているのは便利

 それぞれの締め付けつまみは「T型レバー」と「丸形ノブ」のいずれかの選択が可能。一般に丸形ノブに人気が集中することが多いが、このSL-AZDシリーズも例外ではない。ただし、T形レバーのほうが締め付け効率が高いうえに、締め付けた角度が分かりやすく、適度なトルクで使用することができるメリットがあるという。たしかにスタイル優先であれば丸形ノブだが、使った感じからいうとT形レバーのほうが具合はよかった。

直結専用自由雲台は丸形ノブ(左)とT形レバー(右)から締め付けつまみを選ぶことができる。T形レバーのほうが適切なトルクで締め付けられ、わずかな違いではあるものの軽量だ

 雲台は全部で3種類で、一番大きなSL-60AZDは大口径の望遠レンズの装着も可能。基台部直径は直径65mm、高さは103mm、質量は455gで、最大積載質量は6kgとなる。SL-50AZDは中間に位置する大きさの雲台。基台部直径は直径54mm、高さは92mm、質量は305gで、最大積載質量は5kgとなる。一番小さなSL-40AZDは、基台部直径は直径45mm、高さは84mm、質量は210gで、最大積載質量は4kg。比較的コンパクトな三脚に適している。

SG-80をSL-60AZDに装着したところ。純正の組み合わせだけあって、デザインにも統一感がある。やはり愛用するジッツオ(型番は失念)にSG-80を装着したSL-60AZDを取り付けてみた。若干トップヘビーな感じがする。この三脚の場合は一回り小さいSL-50AZDがより適していそうだ

 このなかで一番使い勝手がよいように思えたのが、中位のSL-50AZD。伸長が170cm前後のいわゆるミドルクラスの三脚に大きさ、重さともマッチし、通常使うには過不足はないだろう。なお、いずれもSG-80以外の他社製品の取り付けも可能としている(ただし、一部装着できないクイックシューもある)。

 梅本製作所の雲台やクイックシューの精度の高さや仕上げのよさは、あらためて述べるまでもない。長年、アクセサリーメーカーへのOEMとして雲台を供給していることからも、製品を見ずともそのことは十分理解できるものである。販売は同社ホームページでの通販がメインとなるが、クイックシュー未経験者をはじめ多くのカメラ愛好家に使ってみてほしい製品だ。

メンテナンス用品として発売される雲台専用のグリース。内容量は3gだが、実際使うには十分な量で、30回以上の手入れが可能だという。材質は鉱物油脂。価格は1個500円だ

(大浦タケシ)

2009/9/15 11:08