ミラーレスカメラの認知が進むとともに、すっかり市民権を得た感のあるマウントアダプターだが、ここにきて強烈な製品が登場した。今回紹介するソニーLA-EA2は、ソニーEマウントを採用するNEXボディに、ソニーAマウントレンズを装着するためのマウントアダプター。特徴は、Aマウントボディと同様、位相差AFでのピント合わせが行なえる点だ。
LA-EA2。価格は3万9,900円 |
それを可能にしたのが、ソニー独自の「トランスルーセント・ミラーテクノロジー」。透過型ミラーを使用することで、レンズからの光を撮像素子と位相差AFセンサーの両方に導くシステムで、小誌の読者ならα55の登場以来、すでにおなじみだろう。現行の最上位モデルα77にも使われており、いまやソニーAマウントシステムの看板的な技術になっている。
LA-EA2が発売される以前、ソニーはNEX-5とともにLA-EA1というマウントアダプターを発売している。発売当初、AFが行なえなかったLA-EA1は、2010年10月に公開されたファームウェアにより、SSMレンズとSAMレンズ限定でコントラストAFに対応。喝采を持って迎えられた。
しかし、Aマウントレンズはそもそも位相差AFでの利用が前提なので、NEXボディ側のコントラストAFで作動させるのは無理がある。結果、AF速度は遅く、一眼レフカメラとミラーレスカメラの間に横たわる深い溝に、改めて気づかされたのだった。
2010年、NEX-5やNEX-3とともに発表されたLA-EA1。三脚を使用する撮影やMFでの利用に限れば、今でも利用価値は高い |
一方、トランスルーセント・ミラーテクノロジーを採用するLA-EA2は、その内部に透過型ミラー、AF駆動用モーター、位相差AFセンサーを持っている。つまり、α77など現行Aマウントカメラのミラーボックスが再現されているわけだ(ミラーの角度や位相差AFの場所は上下逆)。そのため、AF速度がAマウントボディに劣ることは原理的にないものと、期待がかかる。
透過型ミラーのため、背後が透けて見える | 底面には三脚ネジ穴を装備。LA-EA1と異なり、三脚座は一体型になった |
NEX-5Nに装着したところ |
今回はLA-EA2を介して、NEX-5NにPlanar T* 85mm F1.4 ZA、または70-300mm F4.5-5.6 G SSMを組み合わせて使ってみた。結論からいうと、どちらもAマウントボディで使うのと遜色のないAF速度が得られた。
特に今回のレンズは重量級なので、LA-EA1なら三脚を併用してのマニュアルフォーカスがメインになるところだろう。しかしLA-EA2なら、手持ち撮影でも十分に実用範囲。NEX-5Nの背面液晶モニターに、AFがガンガン合う様子が映し出されるのは新鮮な体験だった。もちろんAEも利用できる。LA-EA2の登場により、NEXはAマウント機のサブカメラとして、さらに使い勝手が良くなったことを実感した。
Planar T* 85mm F1.4 ZA装着例 |
70-300mm F4.5-5.6 G SSM装着例 |
ただし、Aマウントボディと異なり、NEXはボディ内手ブレ補正機構を搭載していない。Aマウントボディと同じ感覚で撮影していると、手ブレの発生率が高まることに注意したい。EVFが欲しいと強く感じた理由もこれだ。
また、LA-EA2側のAFセンサーを使用するため、AF周りの機能がAマウント機と同様になるのも不思議な感覚だ。例えばAFエリアはワイド、ローカル、中央固定から選ぶことになり、ローカルでは15点から測距点を選択。フォーカスホールドボタン操作にも対応する。
Eマウントレンズと平行して使用してとまどうのは、DMF時の挙動だろう。Eマウントレンズは測距後にフォーカスリングを動かすと拡大画面に遷移する。ところがLA-EA2を介してAマウントレンズを使う場合、フォーカスリングを回しても画面が拡大しない。拡大させたい場合は、フォーカスモードをMFにする必要がある。ただし、ピーキングが使えるので、拡大することなくピントの山が確認できる場合も多々あった。
オートフォーカスモードの切替。AF-SとAF-C | オートフォーカスエリア。Aマウントと同じく「ローカル」「ワイド」「中央に固定」から選べる |
ローカルで測距点を選択したところ |
ピーキング表示もLA-EA2をつけた状態で行なえる。機能はEマウントレンズ装着時と同等。これが望遠レンズ使用時に使いやすく便利だった |
MF時はピントを合わせたい位置を拡大することも可能 |
今のところEマウントには、超広角ズームレンズ、大口径標準ズームレンズ、大口径望遠ズームレンズが存在しない。また、望遠ズームレンズにしても、E 55-210mm F4.5-6.3 OSSが最長。明るいズームレンズや、300mmクラスや400mmクラスの望遠レンズが必要な撮影は、Eマウントシステムだけでは不可能だ。
ところがAマウントレンズユーザーなら、LA-EA2を購入するだけで、手持ちのAマウントレンズで様々な画角をまかなえるようになる。また、今回改めて思ったのは、ZAレンズやGレンズの画質の良さだ。Aマウントレンズにはまだ多くの名レンズが存在する。AマウントとEマウント、両方のシステムを所有する人はぜひLA-EA2を試して欲しい。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
2011/12/1 00:00