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被写体を追う「AIトラッキング」が秀逸 スリングハンドルも使いやすいカメラ用ジンバル

FeiyuTech SCORP 2

FeiyuTechからカメラ用ジンバル「SCORP 2」がリリースされた。最大ペイロードが2.5kgあるので、ミラーレスカメラでの本格的な撮影に対応できる。税込価格は5万9,900円で、ロア・インターナショナルが扱う。

世界初という「AIトラッキング機能」など先進的な装備を搭載するのが特徴だが、まずは一般的なジンバルとしての使い勝手を試してみた。

便利なスリングハンドル

搭載した機材はα7 IIIとFE 28-60mm F4-5.6。軽量なセットなので動作は余裕。モーター出力も2~3割しか使っておらず、さらなる大口径レンズにも十分対応できそうだ。

ジンバル単体。同梱の三脚を下部に装着している
カメラを搭載したところ
歩きながらフォローしてみたが、ブレが十分抑えられておりジンバルとして問題無いパフォーマンスだった

一般的なジンバルと大きく違うのは、スリングハンドルというグリップを装備している点。これによって地面ギリギリのローポジション撮影がしやすくなるほか、前方を向いた通常の撮影でも両手で支えられるのでより安定する。

スリングハンドルのローポジションでの使用例
スリングハンドルを持って地面すれすれで撮影したところ。片手でも保持できるので歩きながらでも撮りやすい
スリングハンドルを持てば、アイレベルのでの撮影も安定して行える

さらにスリングハンドルからは折り畳み式の脚が出てくるので、ジンバルでよく付属している三脚をグリップに取り付けなくても自立可能。このまま撮影もできるし、一旦地面に置くときにも便利だった。

折り畳み式の脚を展開したところ。これも便利な装備だ

各軸のバランス調整は一般的なジンバルと同じで、一つずつクイックシューを動かしながら調整していくものだ。この手のジンバルを使ったことがあれば、すぐに調整できると思う。初めてだと少し慣れが必要だが、同社では動画のマニュアルも用意しているので見ながらやれば難しくはないだろう。

そして新しい機材を載せたり、レンズを変えた場合はモーター出力を自動調整する機能が使える。20秒ほどで最適なモーター出力にセットされる。

本体前方にはトリガーレバーがあり、押している間は全軸フォローになる。また2回引くと位置のリセット、3回で自撮りモードになるなど他社とも共通するインターフェースだ。USB Type-Cによる充電ポートもその近くにある。

前側にトリガーレバーや充電ポートがある

また特徴的なのが「サムホイール」と呼ばれるダイヤルだ。機能を割り当てると、各軸の動作やフォーカスコントロールが可能になる。この部分のダイヤルはグリップに埋め込まれているタイプが多いが、本機はつまめるノブとして露出しているので特にロールさせたりといった動作を精密に行えるのが良かった。

回しやすい形状と位置にあるサムホイール
アプリからサムホイールの機能割り当てができる
階段を上がりながら撮影したが、かなり安定している。モデルが止まったところでサムホイールに割り当てたロールの動きを数回入れてみた

スリングハンドルにはディスプレイやジョイスティック、録画開始ボタンなどがある。ディスプレイはタッチパネルで操作可能。ジョイスティックではカメラの向きをスムーズに変えられる。

メインのコントロール部
ディスプレイの表示(ホーム画面)
これはフォローモードの切り換え画面
左側から見たところ。F1といったファンクションボタンも装備している
右側から見たところ。A/Bのスイッチは対応カメラでフォーカス位置を記録して切り換えられるボタン

ジェスチャーで動かせるトラッキング機能

本機の目玉となるのがAIトラッキング機能だろう。人物を自動的に追いかけて撮影してくれるため、例えば自撮りの際にほかに撮影者が不要という機能だ。旅行などでのVlog撮影にはうってつけだろう。

人物の認識は搭載したカメラを使うわけではなく、ジンバル自体のセンサーで行う。そのため搭載カメラをジンバルと接続していなくてもこの機能は利用可能だ。

ジンバルの青い部分がAIトラッキング用のセンサーになっている

自撮り向けということで、ジェスチャーでトラッキングの開始と終了を指示できる。手でOKのサインをするとトラッキングが始まり、再度OKのサインを出すとトラッキングが終了する。対応カメラであれば録画の開始もジェスチャーで行える。

AIトラッキング制御での撮影。ジンバルは折りたたみ脚を出して地面に置いた状態で撮っていて、誰も操作はしていない

動画を見ると結構スムーズに人物を追えており、なかなか実用的な機能だと感じた。スタジオのような場所でも有用かもしれない。

アプリの機能も充実

専用の無料アプリが用意されており、スマートフォンからBluetooth経由で本体をコントロールできる。キーやサムホイールの割り当てのほか、カメラのバランスチェックやトラッキングスピードなどの細かい設定も可能。このアプリから動画マニュアルを参照することもできる。

スマートフォンアプリのホーム画面

スマートフォン画面をジョイスティック代わりにしてリモコン操作できるほか、スマートフォンを傾けるとそれに合わせてジンバルが動くモードも用意されている。

中央下の丸い部分を動かすとジョイスティックとして動作する。また右下のアイコンを押すとスマートフォンの動きに合わせてジンバルが動くモードになる
スマートフォンの動きに合わせてジンバルが動いている様子
トラッキングスピードなどの設定も可能
他のジンバルにもあるが、本機でもパノラマ撮影やタイムラプス撮影ができる

まとめ

AIトラッキング機能という新機軸が注目されるSCORP 2だが、ジンバルとしての基本機能もしっかりしている印象を受けた。また収納時に少し大きくなってしまうが、スリングハンドルはやはり便利。一度使ってしまうと、これが無いジンバルは使いにくく感じるほどだ。

ライバルは「DJI RS 3 Mini」(直販価格5万1,480円)か「DJI RS 3」(同6万6,000円)あたりになるだろうか。価格面ではRS 3 Miniが有利だが、ペイロードは2kgとSCORP 2より小さい。一方RS 3はペイロードが3kgと大きいが価格は上になる。SCORP 2がちょうど両者の間に位置するイメージだ。SCORP 2はスリングハンドルが付いている点やAIトラッキング機能を考えるとお得感があると思う。

セミハードのキャリングケースが付属する
収納状態。フタには小物類が入れられる

大きめのカメラや大口径のレンズで運用したいなら、ペイロードに余裕があるSCORP 2は良い選択肢になると思う。一方でもう少しライトな機材を使うということであれば、FeiyuTechから「SCORP-Mini 2」というペイロード1.2kgのモデルも最近登場しているので、そちらもチェックしてみて欲しい。SCORP-Mini 2もスリングハンドルやAIトラッキング機能を搭載している。

モデル:ユーモ・アス

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。