デジカメアイテム丼

大切なデジタル画像が消えて“ゾッと”する前に…バックアップを手軽に、より安全に!

2ベイ外付けHDDの最右翼、WD「My Book Duo」を試す

筆者がはじめてデジタル一眼レフカメラを買ったのは、今から約13年前の2004年春のことだった。その後蓄積された画像データは膨大な量になり、ハードディスク(以下HDD)の空き容量は悲惨なことになっている。

加えて、画像データは同じものを別のHDDに保存する“バックアップ”が必須だ。HDDは工業製品なのでどうしても自然故障の不安がつきものであるし、雷サージや物理的衝撃などによる不慮の事故でデータをすべて失ってしまう可能性だってある。撮影仕事のクライアントに「すみません撮った写真消えてしまいました」などと言わねばならない事態は考えただけでゾッとする。

筆者がバックアップソリューションとして重視するのは、画像データを末永く守り続けてくれる「信頼性」、高度な知識や複雑な環境を必要としない「手軽さ」、撮っても撮っても余裕で保存できる「大容量」の3つである。

そんな都合のいいものあるだろうか? と思っていたところ、このたびデジタルストレージのリーディングカンパニーとして知られるウエスタンデジタル(以下WD社)から、新しいデスクトップRAIDストレージ「My Book Duo」が発売されたというので試してみることにした。

煩雑でやや脆弱? な筆者のバックアップ環境

ちなみに現状での筆者のバックアップ環境はというと、これが少しややこしい。

まず、データのバックアップには外付けのHDDケースをeSATAで接続して使っている。3.5インチのHDDを4つ格納できるタイプのもので、4ベイのうち3ベイを使用し(1ベイは未使用)、それぞれに2〜3TBのHDDを格納している。これら3つのHDDを、それぞれ「外付けHDD1」、「外付けHDD2」、「外付けHDD3」と呼ぶことにしよう。

そしてPCは、3TBのHDDを1つと、256GBのSSDを1つ内蔵しているだけである。この内蔵HDDを「内蔵HDD1」と呼ぶことにしよう。

仕事で撮影した画像データ(これが最も頻繁にアクセスし、かつ大量)は、撮影の都度、個別のフォルダを作成し、内蔵HDD1に保存している。OSやアプリケーションはSSDにインストールしてあるので、内蔵HDD1に保存されるのは仕事関連のデータだけである。

その、内蔵HDD1に保存されたデータが「すみません事故で消えちゃいました」という、考えただけで顔が青くなる事態は絶対に避けねばならないので、折に触れて外付けHDD1にバックアップしている。つまり内蔵HDD1と外付けHDD1は同じデータが保存されている手動のミラーリングの状態だ。

それでは、写真展などのために作品として撮影した画像データや、日々の大切な記録写真などはどうしているのかと言うと、これはまず外付けHDD1に保存した後、やはり「お金かけて時間かけて撮った一期一会の写真が消えるのはイヤ」という理由で、外付けHDD2にバックアップしている。外付けHDD2と外付けHDD3も仕事のデータと同じように手動のミラーリングの状態になっているという訳だ。

ただ、このバックアップ方法、やや複雑なので何をどこに保存すればいいか迷いがちになるし、HDDの容量が減るごとに複数のパーツを交換しなければならないので、何のかんので出費がかさむことが難点……。信頼性も、手軽さも、容量も、正直言って低めだ。

筆者ののぞみに適うのか? 最大20TBの大容量に対応

そこで何かよい手段はないものかと試してみたのが、WD社のMy Book Duoなのである。

My Book Duoとは、写真、ビデオ、ドキュメント、音楽などあらゆるデジタルデータを保存できる大容量ドライブ。つまりは外付けHDDの1種なのであるが、何しろ注目したいのはその高いパフォーマンスだ。

My Book Duo

第1の特徴が大容量であること。6TBから20TBまで必要に応じて搭載されるHDDの容量を選ぶことができる。これをUSBケーブルでPCとつなげば、自由にバックアップ環境を構築することができる。これは簡単でいい。

第2に、RAID 0が設定済みなので、購入後すぐに使用可能であること。RAID 0は書き込み/読み込みをするデータが複数のハードディスクに分割して記録されるため、複数のHDDがあたかも単一のストレージであるかのように扱われ、データ通信速度を飛躍的に速くすることができる。

My Book Duoは2台のHDDで構成されているので、理論上、容量は1台のHDDの2倍となる。しかもRAIDの制御はMy Book Duoがしてくれるため、PCが変わってもデータの引継ぎがスムーズにできるところがいい。

第3に、信頼性の高い「WD Redドライブ」が使用されていること。WD Redドライブについては後述するが、率直に言えば高速かつ高品質なHDDである。絶対失いたくないデータを保存するバックアップ用ディスクなので、耐久性の高いHDDは安心感も高く嬉しいではないか。

WDといえば業界大手のストレージソリューション企業。その最新製品であるだけに、全般的な性能を考えても期待値マックスだ。

高級感あるデザイン

そんなこんなで自宅に届いたMy Book Duoを開封した第一印象が「スリムでカッコいい」だった。現在使用している外付けHDDケースと比べると明らかにおしゃれで小さい。いい、すごくいい。バックアップ環境を人に見せるというシチュエーションはあまり想像できないものの、思わず知人を招いて自慢したくなってしまうかも。

デスクトップストレージということで机の上に置いてみた。スリムな感動が伝わるだろうか。

ケース上面がHDD格納部のフタになっている。フタを開くために付属する専用部品(ディスク交換ツールというのが名称)が付属しているが、なくても手で簡単に開くことができた。

フタを開けるとHDD格納部が見える。「Duo」だけにHDDは2台。ボタンを押しながら引き上げると簡単にHDDを取り出すことができた。造りがしっかりしたケースなので、HDDの取り出し/取り付けもスムーズで安定している。

今回試用したMy Book Duoは20TBの製品なので、HDD1台の容量は10TBだ。

デザイン上のアクセントしては、前面を横切るLEDもポイントだろう。PCと接続すると点灯、通信中はゆっくりと点滅する。青でなく白色というところがCOOL。終了時やエラー時などにはオレンジ色に光る。

左が通信中、右が終了時、またはエラー時のサイン。

背面には、ACアダプターを接続する電源コネクタ、PCとMy Book Duoを接続するためのUSBポート(Type-C)の他に、2基のUSB 3.0 Type-Aハブポートが搭載されている。

メインのUSBポートはType-Cだが、パッケージにはUSB Type-C to Type-Cケーブルの他に、USB Type-C to Type-Aケーブルが付属。従来の一般的なUSB Type-Aポートにも対応するので心配はいらない。なおMy Book DuoのUSB Type-CポートはUSB 3.1 Gen2には対応していないため、転送速度はUSB 3.0相当となる。

Type-A ハブポートには追加ストレージを接続したり、キーボードやマウスなどのUSBデバイスを接続したりできる。筆者のPCのUSBポートは全て埋まって難儀していたのでこの仕様は大変ありがたい。

写真では分かりにくいが、USBハブポートの上に電源ボタンがある。1度押すとキャッシュを削除してから正常終了、長押し(4秒)すると強制的に停止する。

空冷用のファンも背面に搭載されている。静音性の高いファンが使用されているようで、動いていても気づかないほど静かだ。

信頼の「Red」を搭載

さて、My Book Duoに格納されている2台のWD Redドライブであるが、このHDDは、数あるWDのHDDモデルのなかでもNAS用に開発された非常に耐久性の高いモデルなのである。

一般的なHDDは1日8時間、週5日程度の稼働を想定して設計されているのであるが、WD Red ドライブは本来がNAS用だけに、24時間365日の稼働条件で3年間の保証が付くという、通常のHDDよりちょっと、いや、かなり異なる高い耐久性を誇っているのである。

さらに、My Book Duoの16TBモデルと20TBモデルが搭載するWD Red ドライブは、よりヘッド制御の精度を高くでき、物理的な容量増加が見込め、消費電力も少ないという、あの「ヘリウム充填技術」が採用されている。

そんなNAS用HDDを24時間稼働のNASではなく、必要な時だけ稼働するPC用の外付けHDDとして使っちゃおう! というのがMy Book Duo。バックアップ用のHDDとしては異例の耐久性があることが理解できる。これによってRAID 0でも心配なく使うことができるのだ。

そうなると気になってくるのが、このMy Book Duoに搭載されたWD Redドライブのデータ転送速度である。せっかくなのでベンチマークソフトのCrystalDiskMarkを使って速度を測定してみた。

CrystalDiskMarkの設定は、測定回数を5回、測定のデータサイズを1GiB(ギビバイト)とした。1GiBは1.07374GB(ギガバイト)に相当する単位。約3000万画素のデジタルカメラで撮影した1枚のJPEG画像のサイズは10MB前後なので(このへんはISO感度などカメラの設定によって大きくサイズは変わるので注意)、概ね100枚前後の転送といったところだろう。

結果は、読み込み速度が310.5MB/sで書き込み速度が303.9 MB/s。

筆者の使っているSSDが読み込み520.9MB/s・書き込み498.5 MB/sなので、USB接続の制約を受けていたとしてもHDDとしてはかなりデータ転送速度が速いことが分かると思う。上記の約3000万画素のデジタルカメラで撮影したJPEG画像100枚なら約3.5秒でバックアップが完了する計算になる。

ただし、これはMy Book Duoの初期設定である、RAID 0での速度である。

それでは、WD Redドライブ単体での速度はというと、読み込み213.9MB/sで書き込み214.9 MB/sであった。

WD Redドライブは単体でもバックアップ用ドライブとして十分に速い。

ちなみに、筆者が現状で使っているHDDを同様に測定してみると、読み込み89.33MB/s・書き込み82.84 MB/sであった……。約3,000万画素のデジタルカメラで撮影したJPEG画像100枚のバックアップとして考えると、13秒近くかかることになるMy Book Duoと比べるとあまりにも遅い、

……遅い、My Book Duoと比べるとあまりにも遅い。JPEG画像100枚の保存が3.5秒か13秒か、100枚程度なら9.5秒程度の違いでしかないが、実際の撮影では1,000枚や2,000枚以上のカットを撮ることはザラにあるし、1週間も海外に撮影に行けば何万枚の撮影数になるのが当たり前だ。仮に1万枚の画像を保存しようとすると、My Book Duoなら約5.8分で済むところ、現状の筆者の環境では約21.7分もかかってしまう。

日々のバックアップ作業が妙に大変だった原因のひとつはここだったのか、と気づいてしまいとても悲しい。

付属ソフトで好みの設定も

My Book Duoは初期設定で、2台のHDDがあたかも単一のストレージであるかのように扱われるRAID 0に設定されているのであるが、実は、付属の「WD Drive Utilities」ソフトウェアを使用することで、2台のHDDでデータミラーリングできるRAID 1や、2台のHDDを個別のドライブとして使用するように、ドライブを再構成することが簡単にできる。

RAID 1や個別ドライブとして使用する場合、PC内蔵HDDを使わなくてもMy Book Duoだけでデータのバックアップ体制が成立することになる。

ただし、My Book Duoの容量はRAID 0の約半分になるため、必要に応じてHDDの容量が大きなモデルを買う必要がある。

また、My Book Duoには256ビットAESハードウェア暗号化機能が搭載されており、付属の「WD Security」ソフトウェアを使用することで、パスワードロックを設定することができる。

パスワードロックを設定すると、My Book Duoを他のPCに接続したり、内蔵のHDDを取り出して使おうとしたりしても、パスワードを知らない限り保存したデータを見ることはできなくなる。

もっとも、パスワードを忘れてしまうとドライブを消去または再フォーマットする以外、永久にデータにアクセスできなくなってしまう。データにアクセスできなくてはバックアップの意味がないので、パスワードの設定・管理は慎重に行う必要があるだろう。

まとめ:バックアップを簡単に

というわけで、My Book Duoが筆者の求める条件にどこまで迫れたかをまとめてみたい。

信頼性については、NAS用に設計されたWD Redドライブを、WD社自身が造ったハードとソフトで制御しているということで抜群であると言える。高い耐久性と安定した動作で大切なデータをしっかり守ってくれるので実に頼もしい。

手軽さについては、USBで接続するだけでPCが認識してくれるので、手間がなく便利だ。ネットワークなどの構築に疎い筆者からみると、バックアップ体制が簡潔で分かりやすく、何かあってもすぐにシステムを再構築できるだろうという安心感がある。データ通信速度が速い点も満点だ。

容量については、初期設定のRAID 0で使うなら、最低モデルでも6TB、最高モデルなら20TBあるため、今後も永らく十分にデータを保存しつづけることができそうだ。HDDの空き領域が少なくなって戦々恐々とする日々から解放されるなんてステキなことか。

で、問題は気になるお値段なのであるが、6TBが6万5,000円前後、8TBが8万円前後、12TBが10万9,000円前後、16TBが13万7,000円前後、20TBが16万円前後といったところ。外付けHDDだと考えると、正直少々考えさせられる価格になっている。

しかし、写真愛好家にとって画像データのバックアップの重要性はいうまでもなく、そうした意味では信頼性・手軽さ・容量と三拍子そろったMy Book Duoは決して高い買い物ではない。

当たり前のことだが、大容量モデルほどお買い得になるので、ここは思い切って、予算の許す限り、余裕のある容量のMy Book Duoに決めるようにしたい。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。