吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

14品目:音声モニター用に“信頼できる”ヘッドフォンを選ぶ

SONY「モニターヘッドフォン MDR-7506」

青いステッカーが目印とされる製品で「青帯」の通称でも知られる。モニターヘッドフォンの定番で、30年以上も愛され続けているロングセラー商品だ

この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

今回紹介するのは、業務用のモニターヘッドフォン。音楽などを楽しく聞くことが目的ではなく、あくまでも原音に近いサウンドをチェックするためのヘッドフォンだ。

SONY「モニターヘッドフォン MDR-7506」

役立ち度:★★★★★
コスパ:★★★★★
マニアック度:★★★★

動画における「音の重要性」

動画撮影で映像以上に気をつけたいのが音声。写真の延長で、目で見る情報のチェックには慣れている人でも、音声に関しては意外と無頓着な場合が多い。だが実際の映像作品では、音声の収録状態が全体に与える影響はかなりのウェイトを占めるものだ。

そこで、映像収録のキャメラマンが欠かさないのが収録中の音のチェック。プロの収録現場では音声は専門の「音声さん」に任せるため、キャメラマンは簡易チェック用のイヤフォンで済ませている場合も多い。だがワンオペで収録をするならば、キャメラマンは本製品のようなヘッドフォンで収録中の音をモニターするのがいいだろう。

本製品は実はかなりのロングセラー。音楽スタジオの定番と言えるSONYのヘッドフォン「MDR-CD900」シリーズはハウジングに貼られた赤のステッカーが印象的で、通称「赤帯」と呼ばれる30年来の定番。よく知られる例では「THE F1RST TAKE」でアーティストがつけているのもこれだし、録音スタジオの現場写真などで見られるヘッドフォンの多くが赤帯だ。

信頼のおけるヘッドフォン

このMDR-7506は、実は赤帯の姉妹機。そっくりな外観で、ハウジングには青いステッカーが貼られていることから「青帯」と称されている。音質は赤帯に近く、原音を忠実に再生する傾向はそのままに、低音の迫力が少し強いと感じられるもの。

なぜこの青帯が動画収録にぴったりなのかといえば、第一に密閉型であるということが挙げられる。多くのヘッドフォンは開放感を求めた「オープンエア」と呼ばれる外部の音が耳に入りやすいものだが、青帯は耳全体をすっぽりと包むイヤーパッドに覆われ、外部音をある程度遮断して、カメラからの音声に集中できる仕掛けになっている。

さらに嬉しいのはケーブルで、赤帯がストレートケーブルに標準プラグなのに対し、青帯はカールコードとミニプラグの組み合わせになっている。ミニプラグはほとんどの映像機器で採用されており、アダプター類を用意しなくても直接カメラやレコーダーに接続できる。また、ワンオペではキャメラマンがカメラを離れる場面も多いので、ヘッドフォンを外し忘れてケーブルで三脚を倒してしまうトラブルも頻発するが、カールコードなのでこれの心配も少なくなる。

さらにヘッドバンド部は折りたたみ式になっており、持ち運び時に邪魔になりにくいのも嬉しい仕様。

業務用のロングセラーなだけに、傷みやすいイヤーパッド部は交換しながら使えるなど、長年のハードな使用に耐えてくれる。

使いやすくて信頼性の高い、高コストパフォーマンスのヘッドフォンだ。

動画収録中の使用例。外部音を程よく遮断してくれ、ワンマンでの収録時にもケーブルの取り回しがしやすい。片方のハウジングをくるっと逆方向に回す形で耳から外しての片耳モニタリングも行いやすい
製品にはキャリングポーチが付属する。ヘッドバンド部分が折りたたみ式で、コンパクトに持ち運べるのもロケーション用モニターとして最適だ
吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。