RECOMMEND 8/EOS R8を使うべき理由

春の鉄道風景を「軽量フルサイズ」で描き出す——福島啓和

春の嘉例川駅に咲く満開の桜に、傾き始めた太陽の光が差し込み、透過光が柔らかく桜の花びらを浮かび上がらせる。華やかさと侘しさを望遠レンズの圧縮効果を生かして切り取った
EOS R8/RF100-400mm F5.6-8 IS USM/248mm/マニュアル露出(F7.1、1/640秒)/ISO 800/WB:オート

キヤノン「EOS R8」はフルサイズ機でありながら、小型・軽量で誰もが自由で快適に撮影できる1台。上位機譲りの最新AFや連写性能など、小さなボディながら、その表現力は∞(無限大)の可能性を秘めている。

さまざまなシーンで活躍する写真家たちが、それぞれに感じた「EOS R8」の魅力をレコメンド(推薦)する連続企画。

第3回では、九州を拠点に活動する鉄道写真家・福島啓和さんが登場。「EOS R8」で撮り下ろした春の鉄道風景写真とともに、カメラの魅力を語ってもらう。(編集部)

福島啓和

1975年、福岡県生まれ。父親の影響で5歳から鉄道写真を始める。スタジオ勤務を経て、2013年に独立。以来、JR九州の公式撮影や広告写真、CMの撮影をメインとして活動。5月にはキヤノンとJR九州の初タイアップ撮影ツアーを開催予定。

EOS R8
【発売日】2023年4月14日
【価格】26万4,000円(ボディ単体)、29万3,700円(RF24-50 IS STMレンズキット)※いずれもキヤノンオンラインショップでの税込価格

【SPEC】
有効画素数:約2,420万画素
映像エンジン:DIGIC X
常用ISO感度:100~102400
連続撮影枚数:約40コマ/秒(電子シャッター)、約6コマ/秒(電子先幕)
ファインダー:0.39型約236万ドット
背面モニター:3.0型約162万ドット
外形寸法:約132.5×86.1×70.0mm
質量(バッテリー、メディア含む):約461g

軽さを生かして新しい撮影地へと向かいたい

なんといっても軽量なボディ。地味に効いてくる機材の重さから解放される喜びを感じた。手にした瞬間に、列車に乗って撮影旅に出掛けたくなるカメラだ。鉄道写真はとにかく歩く、登るの繰り返し。

必要であれば三脚も持ち歩くわけで、カメラの軽量化は「もっと、この先まで」と新しい撮影地へ向かうモチベーションを生み出す。軽いだけでなく、鉄道を検出できる最新のAFシステムを搭載し、連写性能にも優れたEOS R8は、編成写真はもちろん、列車からの車窓や、列車が脇役となる鉄道スナップまですべてにマッチングする。

空が白み出すと始発列車までもう少し。レールが輝き出し、小さな駅のディテールが見えてきた。構図などは意識せずに、50mmの単焦点でこの瞬間を素直に切り取った
EOS R8/RF50mm F1.8 STM/50mm/マニュアル露出(F9、1/125秒)/ISO 400/WB:オート

秒間最高約40コマで車両に当たる一瞬の光にまでこだわって撮れる

EOS R8の電子シャッターによる最高連写速度は秒間約40コマ/秒。ここまで高速で連写できると、撮り損ねる一瞬がなくなる。下のゆふいんの森号の写真では光がわずかに差し込む瞬間を捉えることができた。今まであきらめていた場所でも撮影ができる。乗り物優先AFは精度が高く、一度合焦したら離さない。ピントの不安はもう気にしなくて良くなる心強い存在だ。

車両すべてがきれいに収まる鉄橋だが、春は光線が繊細。わずかに光が差す部分があると線路を見て判断。40コマ/秒と乗り物優先に設定して、その瞬間を捉えた
EOS R8/RF100-400mm F5.6-8 IS USM/225mm/マニュアル露出(F8、1/800秒)/ISO 800/WB:オート
検出する被写体は鉄道にも対応する「乗り物優先」に設定しておく
数コマ違うだけで車両に木の影が落ちてしまうシビアな状況だけに、コマ速がものを言う
鉄道撮影に欠かせない取り回し抜群の“軽量超望遠ズーム”
RF100-400mm F5.6-8 IS USM
【発売日】2021年10月
【価格】9万3,500円 ※キヤノンオンラインショップでの税込価格

EOS R8の軽量性を生かすために、今回は小型レンズを中心に撮影した。鉄道撮影に欠かせない望遠ズームはRF100-400mm F5.6-8 IS USMを選択。非常に軽量で撮影のテンポを上げてくれる。

焦点距離の幅は鉄道撮影には十分で、Lレンズではないが400mmまでの焦点距離を搭載したところは評価が高い。400mm側は開放F8となるが、高感度に強いEOS R8との組み合わせだと特に問題はない。

画面周辺の解像感も以前のレンズとは比べ物にならないくらいに安定し、Lレンズユーザーでも安心して使える1本だ。

手持ちでも楽に撮れるサイズ感が魅力。400mm撮影時もレンズ単体で約5.5段分の手ブレ補正効果を得られるので、三脚を立てられない場所でも難なく撮影ができる
日本的な風景が広がるこの場所は、どの画角で切り取るかを迷う。超望遠側で鉄橋メインでも良いが、列車の顔が影になるのが目立つ。100mmから400mmまで幅広い焦点域を持つズームレンズは構図を細かく調整できて非常に便利だ
EOS R8/RF100-400mm F5.6-8 IS USM/113mm/マニュアル露出(F6.3、1/1,250秒)/ISO 800/WB:オート
アウトカーブ0度で特急「ソニック」を狙う。270mmという細かく刻んだ焦点距離を設定できるのは望遠ズームならでは。シルエットでも乗り物優先AFは正確に列車を捉え、883系車両の複雑なディテールも見事に表現してくれた
EOS R8/RF100-400mm F5.6-8 IS USM/270mm/マニュアル露出(F9、1/1,600秒)/ISO 320/WB:オート

列車や車窓風景をぶれずに撮影できるHDR動体優先

HDR動体優先を使うと、通常のHDRでは合成処理で流れてしまう走行中の列車や車窓風景を、ぶらさずに撮影できる。明暗差が弱まり、やや絵画調に仕上がる画質は、旅と鉄道をテーマにした写真によく似合う。

通常は暗い影になる駅舎をHDRで明るく持ち上げながら、駅に来た列車も流さず写せた。HDR特有の柔らかい表現が、ローカル線ののどかさにマッチする
EOS R8/RF35mm F1.8 MACRO IS STM/35mm/マニュアル露出(F2、1/2,500秒)/ISO 800/WB:オート
のどかな車窓風景がどんな場所から見えた景色なのか表現したくて、窓枠を入れて撮影。HDR動体優先なら風景は流れず窓枠も暗くならない。明るい旅のシーンを表現できた
EOS R8/RF50mm F1.8 STM/50mm/マニュアル露出(F1.8、1/4,000秒)/ISO 800/WB:オート

ボタンカスタマイズでAFとドライブ設定を状況に合わせて変更

手持ち撮影ではファインダーをのぞきながら設定変更をしたい。突然の状況変化や、瞬間的に浮かんだ新しい構図に迅速に対応するため、速写関連の機能を割り当てた。ドライブモードやクロップの有無、AFフレーム移動などを任意のボタンに設定しておくことで、設定の遅れで撮り逃すことがなくなる。

何でも撮影できる幅広い対応力を持つミドルクラスフルサイズ

EOS R8はミドルクラスのフルサイズ機として非常にポテンシャルが高いと感じた。プロのようなシビアな撮影をしたいときは高速連写やAF性能が発揮され、ゆっくりと鉄道風景をスナップしたいときは軽量サイズが実にうれしい。常に持ち歩きたくなるサイズ感が撮影を促し、しかもハイクオリティーな写真を撮ることができるので、もっとこのカメラと出掛けたくなる。

有名撮影地の下原ダムはどんな焦点距離でも絵になる。デビュー間もないHC85系の存在とダムの湖面をバランス良く収めたくて、迷わず標準ズームレンズを選択した
EOS R8/RF24-105mm F4-7.1 IS STM/57mm/マニュアル露出(F6.3、1/1,000秒)/ISO 1250/WB:オート

EOS R8は行動派の友人みたいなカメラで、今まで行かなかった撮影地や撮らなかった表現にどんどんチャレンジしたくなる。幅広い対応力が魅力のカメラだけに、これからミラーレス機に乗り換えるというユーザーの不安も取り除いてくれることは間違いない。

山並みに美しい夕日が落ちる寸前に西九州新幹線「かもめ」がやってきた。広角レンズにしたことで夕日が構図に収まり、車体も伸びやかに写し込めた
EOS R8/RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM/27mm/マニュアル露出(F6.3、1/1,600秒)/ISO 1000/WB:オート

協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

福島啓和