デジカメドレスアップ主義
昭和のレジェンドレンズが甦る
α7 II + Kistar 55mm F1.2
Reported by澤村徹(2015/10/1 09:00)
- ボディ:ソニー α7 II
- レンズ:木下光学研究所 キスター55mm F1.2
- マウントアダプター:レイクォール CY-SαE
- フォーカスリングアダプター:TAAB,LLC.社 TAAB(ヘフティ)
- カメラケース:ユリシーズ α7 II/α7R II ボディスーツ(ブラック/オープンタイプ)
- ストラップ:ヴァイヒィエ・ブリーゼ 40mm“unleash wings”Strap
木下光学研究所、その名を聞いて心当たりある人は、おそらく皆無に等しいだろう。これまで業務用レンズをメインに製造してきた同社が、はじめて写真用レンズを手がけることになった。しかも昭和のレジェンドレンズ、富岡光学のトミノン55mm F1.2の復刻版だという。今回はこの復刻レンズを中心にしたドレスアップを紹介しよう。
※この記事を読んで行なった行為によって生じた損害はデジカメWatch編集部、澤村徹および、メーカー、購入店もその責を負いません。また、デジカメWatch編集部および澤村徹は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。
木下光学研究所のキスター55mm F1.2は、トミノン55mm F1.2の復刻版である。昨今、こうした復刻オールドレンズがちょっとしたトレンドだ。無一居のタンバールリメイク花影S1 60mm F2.2、ロモグラフィーのペッツバールレンズやルサール+、そして復刻トリオプラン100mm F2.8のクラウドファンディングも記憶に新しい。しかし、木下光学のキスター55mm F1.2はこうした事例と一線を画している。構造的な復刻のみならず、開発思想すら受け継いでいるからだ。
実は同社の会長である木下三郎氏は、かつて富岡光学に勤め、トミノン55mm F1.2の光学設計を担当していた。今回の復刻プロジェクトでは、当時の開発者の愛弟子がキスター55mm F1.2の設計を担当している。設計図からただ再生産するのではなく、設計思想をも含めた復刻作業が本プロジェクトの真骨頂だ。販売はマップカメラで取り扱いがあり、木下光学研究所でも直販が行われる。描写については作例部分で改めて後述しよう。
さて、めざとい人はレンズ外周のレバーに気づいたことだろう。これはTAABという後付けフォーカシングレバーだ。ライカをはじめとするレンジファインターカメラのレンズには、ピントリングにこうしたレバーを持つものがあり、これを後付けするのがTAABである。TAABは3サイズ展開で、ミニが44~57mm、スタンダードが50~64mm、ヘフティが64~76mm口径のレンズに対応する。ここでは最大サイズのヘフティをキスター55mm F1.2に付けている。
見た目は樹脂製でしなやかに伸びそうだが、実物は思った以上に固い。これは操作中にズレたり外れたりしないように、あえて固い素材を用いたという。取り付けに少々手こずるが、一度装着してしまえば気兼ねなく使える。ちなみに、装着位置はライカレンズに倣い、無限遠で7時方向にレバーがくるように取り付けた。たかがレバーと言うなかれ。ピント操作は格段に快適になり、知らず知らずのうちに指先がレバーを探すようになる。一度使うと元に戻れないタイプの製品だ。
ドレスアップ面を見ていこう。レザーケースはユリシーズのものだ。ユリシーズのケースは以前フルカバードタイプを紹介したことがあり、今回はオープンタイプを選んでみた。液晶チルトに対応しているのが特徴だ。また、底面にフリップカバーがあり、ケースを付けたままバッテリー交換できる。無論、メモリカードもそのまま交換可能だ。
ストラップはヴァイヒィエ・ブリーゼの新作、40mm“unleash wings”Strapを合わせた。40mmのワイドストラップに、スタッズとパンチングで翼を描いている。これまでスタッズによる意匠はロックやバイカーズ風のものが多かったが、本製品はどことなくモードっぽい見え方が新鮮だ。レザーはグラデーション染めされており、使い込むほどに濃淡が出てくる。写真のストラップはひと夏使い込んだサンプルで、ほどよくエイジングが出てきたところだ。
キスター55mm F1.2の描写を見ていこう。1970年代に登場したトミノン55mm F1.2を復刻しただけあって、開放で柔らかく、絞るほどに鋭さを増す。この緩急の付き方はオールドレンズファンを虜にするだろう。単層コートのレンズだが、フードなしで撮影してもフレアに悩まされることは少なかった。オリジナルのトミノンと比べると、ごくわずかにコントラストが強い。しかしながら、ボケ方はオリジナルとそっくりで、両者の写真を混ぜて並べたら見分けがつかないほどだ。
本レンズはKCYマウントという独自マウントを採用している。わかりやすく言うとヤシカ/コンタックス互換マウントだが、マウントアダプター経由でデジタルカメラに付けることを想定したマウントだ。ヤシコンマウントの自動絞りなどには未対応なので、フィルムカメラと組み合わせるときは要注意だ。また、ミラーレス機では制約なく使えるが、キヤノンのフルサイズデジタル一眼レフとの組み合わせではミラー干渉のリスクがある。なお、APS-CのEOSでは問題なく撮影できる。