インタビュー
小型化と高性能化を両立
ニコン「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」
位相フレネルレンズの仕組みとは?
Reported by 杉本利彦(2015/3/6 15:00)
ニコンが1月に発売した「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」は、従来から大幅に小型化を図ったと同時に画質も向上させた35mmフルサイズ用の超望遠レンズ。実に14年ぶりとなったリニューアルでは、ニッコールレンズで初めてとなる「位相フレネルレンズ」を採用した。
今回は、この位相フレネルレンズやニッコール史上最高という約4.5段分の手ブレ補正機能などの技術的側面を中心にニコンに伺った。(聞き手:杉本利彦、本文中敬称略)
フルサイズ用で世界最軽量の300mmレンズ
――まずは、このレンズのコンセプトからお願いします。
早川:ニッコールレンズとしては初めてPF(Phase Fresnel=位相フレネル)レンズを搭載し、FXフォーマット用の焦点距離300mmのAFレンズとしては世界最軽量を達成しました。
特徴としては小型軽量である事、VR機構がノーマル時に約4.5段分の手ブレ補正効果がある事、そして高い光学性能を併せ持つという事、さらにはナノクリスタルコートによりクリアーな描写が挙げられます。用途としては、スポーツから風景、ポートレートまで幅広い用途でご利用頂けると考えています。
――300mmというと望遠レンズとしてかなりはっきりと引き寄せ効果があり、アマチュアユーザーに人気で、絵作りの上では1つの上限の焦点距離の印象が強いですね。これより長い超望遠レンズは、ある意味特殊な世界で、レンズの価格も百万円前後コースとなってしまいます。
今回のレンズは、十分な望遠効果が得られ、かつ軽量化の効果が大きい焦点距離として300mmを選択されたということでしょうか?
早川:おっしゃる通り、400mm以上になりますとどうしても本体が大きくなり高価なものになってしまいますから、まず小型化のメリットが最大限に活かせる焦点距離を考えました。PFレンズはどの焦点域でもある程度小型化の効果を期待できますが、広角や標準域のレンズでは小型化の比率は同じでも寸法としてはそれほど大きな効果は出ません。
そこでまずは望遠レンズで採用する事を考えました。その中でも、300mm F4のスペックならば、小型化のメリットが大きく、一般のお客様にも手に取って頂ける価格を実現できるのではないかと考えました。
――英文の宣伝文句に「revolutionary=革命的」の文字が使われていますが、具体的にどういった部分が「革命的」なのでしょうか?
早川:ご覧頂きました通り、300mmレンズとして非常に小さく軽くまとまっていて、従来の常識では考えられないほど携帯性に優れ、使い勝手が良く、かつ画質的にも優れていると言う部分です。これはPFレンズの採用があって初めて実現できました。
――技術的にも革命的と言えるほどすごい内容なのでしょうか?
早川:一般的なフレネルレンズは光を拡散させる用途で使用しますが、このレンズの場合は収束する結像光として使っているところが今までと違います。
――従来の「Ai AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED」は全長約222.5mm、約1,300gと大きく重いですが、AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VRは全長約147.5mm、約755gと、大きさ重さともおよそ半分強。体感的には半分くらいに見えますので小型軽量化の効果は明らかですね。
ところで、最近リリースされた超望遠のニッコールレンズは、いずれも小型軽量化が1つのキーワードになっていますが、小型軽量化に対するユーザーからの要望は、それほど大きいのでしょうか?
早川:レンズ全般として小型化のご要望は常にございます。最近の超望遠レンズで蛍石を使用したり、キットレンズで沈胴式の構造を採用したりしているのも小型化のご要望にお応えするためです。このレンズでは、小型化のためPFレンズの技術を採用しました。Ai AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-EDに関しましては小型化の他にVR機能を追加して欲しいというご要望はたくさん頂いていました。
――従来の300mm F4には現行レンズで唯一のライトグレーがありましたが、新製品はブラックのみです。ライトグレーはなぜ終了してしまったのでしょうか?
早川:以前はライトグレーのご要望がかなりあったのですが、最近ではそれほどでもなくなったのが大きいですね。
――オリンピックのたびに報道陣のカメラのレンズの色が、白が多いか黒が多いかという話題で盛り上がりますが(笑)、ニコンはやはり黒といった認識が強くなっているのかも知れません。
話は変わりますが、従来品よりも高価になっている理由は? 位相フレネルレンズにコストが掛かっているのでしょうか?
早川:前のタイプに比べますと全般に機能アップしているところが主な理由です。今回のレンズでは、PFレンズという新しい技術を導入し、VR機能はニッコールレンズで過去最高の約4.5段分の補正効果を実現しています。また、ナノクリスタルコート、フッ素コートなどコストのかかる技術も導入しています。
細かなコスト的に見ると旧タイプの設計時よりは、シミュレーション技術の向上などコストダウンしている部分もありますが、新しい技術の投入によってコストアップしている部分もあり、トータルで見て従来品より少し上の価格設定になっています。
位相フレネルレンズの仕組み
――今回のレンズの目玉技術であるPF(位相フレネル)レンズの仕組みを教えてください。
藤本:構造は、2種類の光学樹脂を組み合わせたブレーズド型の回折光学素子になっています。
――ガラスと樹脂を組み合わせた複合非球面レンズのように、ガラスの片面に樹脂で回折格子を形成したような構造ですか?
早川:そうですね。2種類の光学樹脂でブレーズド型回折光学素子を形成しています。
――名称にもあるフレネルレンズのような構造で、どうして光が回折するのですか?
藤本:まず、学生時代に物理で習った光の干渉について思い出して頂きたいのですが、例えば間隔のあいた2点のスリットに光が当たると、2つのスリットから出た光は互いに干渉を起こして強め合ったり打ち消し合ったりして、まっすぐ進む光と斜めに進む光の幾つかの方向に別れることはご存知かと思います。
スリットを通過して回折した光は、ちょうど波長の整数倍だけ位相がずれる方向(回折しない光が0次、1波長分ずれる方向は±1次、2波長ずれる方向は±2次……)で強め合って進みます。
――物理の時間に習ったような気がします(笑)。
藤本:これと同様の原理で、ブレーズド型回折格子では、光学素子の形を鋸のようなギザギザ状にする事で、回折の方向をやや斜めに曲がる1つの方向(1次)にほぼ絞る事ができます。実は少しだけ別角度に曲がる回折光の成分があるのですが、それがどうなるかは後でご説明します。
次に、回折の角度はギザギザの山の間隔によって決まり、山の間隔が広いほど緩やかに、間隔が狭いほど光は大きく曲がる性質があります。この性質を利用して、中心部は山の間隔を広く、周辺部ほど間隔が狭くした構造の回折光学素子を作ればレンズと同じように光を曲げて1点に結像させる事が可能になります。山の間隔を適度に調節すれば、非球面レンズと同じような特性も与える事ができます。
――なるほど、回折を使うと屈折レンズのように厚みがなくても同じように光を曲げられるのですね。また、非球面レンズ的機能が実現できるほど自由度が高いというのはすごいですね。
藤本:はい。ここで、先ほどの回折の方向性についてですが、回折光学素子を屈折レンズのように使用するには、全ての光が回折によって意図した方向(1次)に曲がる必要があるのですが、実際には一部は別の方向(0次、2次)に曲がってしまうのです。
古くから回折光学素子は異常部分分散ガラスよりも高い収差補正能力があることがわかっていたのですが、交換レンズにほとんど使用されなかった原因の1つは、このフレアを取り除くのが難しかったからです。
しかし、最近の研究でフレアの発生を抑える事ができることがわかり、実用化しました。
――他社の同様の技術とはどこが異なりますか? 優位点はありますか?
寺尾:他社の技術についてはコメントを差し控えさせて頂きますが、ニコンとしては同様の技術を工業顕微鏡の対物レンズやウエアラブルディスプレイ「UP300」シリーズ、COOLPIXシリーズ用のテレコンバーター「TC-E3PF」などで既に実用化しており、着実に技術ノウハウの蓄積をしてきました。
――回折格子を通過すると、どうして分散特性が逆になるのですか?
藤本:通常ガラスは長波長になるほど屈折率が下がる性質がありますので、凸レンズを光が通ると、青い光ほどよく曲がって手前に結像し、赤い光ほど曲がりにくく、遠くに結像します。
これに対して、回折格子の場合は、光の波長が長くなるほど回折角が大きくなりますので手前に結像し、青は逆に遠くに結像しますので、分散特性は全く逆になります。
これは、回折をご説明しました図2に戻って頂きますと、例えば1次回折光は0次と比べ、1波長分位相がずれた方向に曲がりますので、回折角は波長が長いほど大きく、波長が短いほど小さくなる事がわかります。
なぜPFレンズで軽量化ができるのか
――位相フレネルレンズを使うとどうしてレンズが小型軽量化できるのですか?
藤本:屈折レンズの場合、凸レンズと凹レンズを組み合わせて色消しをしますが、PFレンズの場合は凸レンズであっても屈折型の凸レンズで発生した色消しが可能ですから、屈折レンズだけの場合と比べ少ないパワー(屈折力)で色補正ができます。
その結果、屈折レンズだけで設計する場合に比べて、同じスペックであればより高性能なレンズになりますし、屈折レンズでは少々無理のある設計もPFレンズを使えば実用レベルの設計が可能になるのです。
早川:通常は凸レンズと凹レンズを組み合わせが必要なところで、凸レンズと凸レンズの組み合わせが使用できる。この余力を小型化に活用しているという事です。
――望遠レンズを短くするにはどうするとよいのでしょうか?
藤本:望遠レンズを短くするにはおおざっぱに、前群を凸レンズ、後群を凹レンズとすればよいのですが、前後のパワーを大きくするほどレンズは短くできます。しかしそうすると、今度は色収差をはじめとする諸収差が増大しますので、ガラスレンズでは補正が難しい。
そこで、色収差能力が非常に高いPFレンズを使用すれば、小型化と画質の両立が可能になるということなのです。
実は、小型化の1点だけにこだわれば、さらなる小型化も可能なのですが、そうすると重い硝材を使う必要があり、VR機構やフォーカス機構などにも影響が出ますので、各機能とのバランスを考慮して現在の設計に落ち着いています。
――なるほど、仕組みがよくわかりました。しかし、PFレンズは回折現象を利用するのですが、回折自体が画質面へ影響することはありませんか?
寺尾:旧タイプの300mm F4とMTF特性を比べましても今回のレンズのほうが性能は上回っていますので特に問題はありません。
藤本:回折が解像力やMTFに影響するという事はありませんが、それよりもPFフレアのほうに開発当初は危惧もあったのですが、試作や実写を重ねた結果大丈夫という事になりました。
PFフレアとは?
――今PFフレアの事が出ましたが、PFレンズの説明でフレーム内やフレームのすぐ外側に強い光源があると、リング状の色フレアが出ることがあるとしていますが、欠点をいとわずあえて製品化された理由は?
早川:これは、小型化とフレアのバランスだと思うのですが、どちらかと言えば小型化のメリットのほうが大きいという判断があったからです。
――現像ソフト「Capture NX-D」に、PFフレアの軽減機能が追加されたそうですが、これはどんな機能ですか?
寺尾:先ほどのリング状のフレアを画像処理で軽減する機能です。軽減と申しましても全くゼロになるというものではなく、状況によっては効果がない場合もあります。
――ナノクリスタルコートなどを応用して、フレアの低減はできないのでしょうか?
藤本:発生原理が異なりますのでコーティング技術では対応できません。
――PFフレアは、日の出、日の入りの太陽位の強さの光源でも出ますか?
寺尾:Webサイトに夕日の作例があるのですが、太陽のまわりに若干フレアが出る程度です。おおむね、あれくらいなら大丈夫という評価も頂いております。
藤本:フレアが出そうな状況では何段か絞りを絞って頂きますとフレアを低減する事ができます。
――フッ素コートの採用理由は? 光学系に影響はないのでしょうか?
寺尾:「AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR」でも採用していますが、レンズの最前面にコーティングする事で、汚れや油分、ホコリがつきにくく、汚れがたついた場合も簡単に落とす事ができるというものです。弊社のWEBページでも、その効果を動画で紹介しています。
藤本:光学系への影響は全くありません。
――防塵防滴には対応していますか?
寺尾:特に機能としてうたってはいませんが、配慮はしています。カメラボディーと同程度の防塵防滴性は備えています。
早川:当然ですが、防塵防滴性のテストはしています。また、他社との比較においてもむしろ優秀なくらいで、特に劣っているという事はありません。
手ブレ補正に「SPORT」モードを搭載
――400mm以上の望遠レンズやシフトレンズ以外の、一般レンズとしては初めて電磁絞りが採用されています。電磁絞りのメリットを教えてください。また、デメリットはありますか?
寺尾:メリットとしましては、電磁絞りにする事により、高速連写時ですとかテレコンバーター使用時に、より安定した絞り制御が可能になります。
特にテレコンバーター使用時は、メカ連動箇所が多くなりますので、どうしても誤差の要因が増えてしまいます。もちろんメカ駆動でも基準内には入っているのですが、高速連写時には誤差が大きめになる事もあり電磁絞りを採用しました。電磁絞りの場合は、テレコンバーター使用時も絞りを通信で制御できますので、より安定した露出ができるようになります。
デメリットは、対応機種が限られてしまう事です。現行のデジタル一眼レフは全て対応していますが、フィルムカメラおよび、D2シリーズ、D1シリーズ、D200/100/90/80/70シリーズ、D3000、D60/50/40シリーズでは使用できません。それと、D4Sなど11コマ/秒クラスの高速連写機の場合、F16を超える小絞りでコマ速が9.5コマ/秒まで落ちる事があげられます。
――そこまで絞り込んで高速連写する状況はあまりないかと思いますので大丈夫ですね。
次に、VR機構の手ブレ補正効果が約4.5段分になったといいますが、改善点はありますか?
寺尾:VR機能は日々進化していますので、その一環で設計の最適化ですとかパラメータやアルゴリズムのチューニングなどの積み重ねで4.5段を達成しています。
――新たに搭載した手ブレ補正の「SPORT」モードとは?
寺尾:「AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR」に続き、採用は2本目になります。機能としては、鳥や動物、スポーツなど動きの激しい被写体でファインダー像がより安定し、フレーミングしやすいモードという事になります。露光中はもちろん、半押し中や動画時にもご使用になれます。
――従来の「アクティブ」モードとはどう違うのですか?
寺尾:「アクティブ」モードでは、シャッターボタンを半押しから全押ししたときに、一旦手ブレ補正レンズを中央に戻してからもう1度補正動作を行う仕様でした。これは、中央から補正レンズを動かしたほうが可動範囲を大きくとることができ、手ブレ補正効果を最大限に得る事ができるからです。
しかしこの場合、シャッターを全押しする直前に見ていたファインダー像と、ミラー復帰後のファインダー像が微妙にずれて見え、連続撮影をするとファインダー像があちこちに移動して違和感があるというご指摘を頂いていました。
そこで「SPORT」モードでは、ファインダーの見え方を優先して、シャッター全押し時に補正レンズを中央に戻す動作を行わず、見え方の連続性を重視するアルゴリズムに変更しました。ただし、この場合は状況によっては、手ブレ補正の効果が従来より落ちてしまう場合もあります。
テレコンを付けても高い画質を維持
――ここまでお聞きした以外に、工夫点や苦労した点などありましたらお聞かせください。
藤本:光学設計としましては、テレコンバーター装着時に光学性能が落ちないように工夫しました。軽量化という課題をクリアーするうえでメカニズム面でも高機能化していますが、光学系もガラス重量をできるだけ減らすなど、軽量化についてもだいぶ工夫しました。
寺尾:メカニズム面では、全長が短くなった上で、VR機構を始め電磁絞りなど機能的な要素が増えていますので、限られたスペースに多くの要素を組み込む意味で設計の難易度が上がり、その面ではだいぶ苦労しました。あとは、ニッコールとしては初めてとなるPFレンズの開発から生産までの工程をきちんと確立する作業で苦労しています。
――フード、三脚座は付属しますか?
早川:レンズフードは付属しますが、三脚座は別売となっています。
――製造は日本ですか?
早川:いいえ、このモデルは中国で生産しています。当然ですが、製造技術、生産管理、品質管理も日本と同じ基準で作っていますので、品質は日本で作るのとなんら変わりありません。
――どのようなユーザーにおすすめですか?
早川:非常に軽くてコンパクトですので、スポーツから航空機、野鳥、あとは小型軽量ですので山に登られる方にもおすすめです。
――野鳥は300mmではちょっと短いのでは?
早川:DXフォーマットなら450mm相当になります。さらにテレコンバーター装着時の画質が非常に優れていますので、例えば1.4倍のテレコンバーターを装着頂ければ、630mm相当になり野鳥にも対応可能になります。
――標準ズームの「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED」とほぼ同じ大きさですから気軽に持ち歩けますが、テレコンバーターを装着すればさらに小型軽量の効果が鮮明になりますね。
寺尾:1.4倍のテレコンバーターで420mm相当、1.7倍で510mm相当、2倍で600mm相当、DXフォーマットではそれぞれさらに1.5倍の焦点距離相当でお使い頂けますので、お客様の組み合わせ方によって多彩な選択肢が考えられると思います。
――テレコンバーター装着時のAF動作はどうなりますか?
寺尾:1.7倍と2倍のテレコンバーター装着時は、AF-Sモードでお使い頂く事を推奨致します。AF-C、AF-Aモードは使用できる場合もあるかとは思いますが推奨は致しません。1.4倍のテレコンバーターは、制限なくお使い頂けます。
◇ ◇
―インタビューを終えて― 求めやすい製品に最新技術を投入する姿勢に共感
最近の交換レンズを取り巻くトレンドはというと、カメラボディーの35mmフルサイズ化及び高画素化に伴い、フルサイズフォーマット対応レンズの高性能化が目立って来ている。おかげで、画面周辺部まで諸収差の少ない優秀なレンズが多くなって来たのはありがたいことだ。反面、画質面を重視するあまり「この大きさ重さはさすがにないだろう」と思われる、超広角ズームや標準レンズが続々と出現している。大方の読者の皆さんは、高画質のためなら多少の大きさ重さは我慢できる派かと思うが、筆者の場合、本能的にレンズだけで1Kgを超えるか否かが、普段持ち歩くに耐えるかどうかの境目のようだ。そういう意味では、ニッコールの300mm F4の旧タイプは約1,300g(三脚座なし)もあるので、戦う前からギブアップなのである。
そこへ、救世主のごとく現れたのが今回の300mm f/4E PF ED VRだ。24-70mm f/2.8G EDとたいして変わらぬサイズであり、重量はさらに軽い約755g(24-70mmは約900g)しかない。テレコンは1.4倍で約190gだから、これを入れても1kg以内に収まる。
正直第一印象では、300mm F4で実売24万円は少々お高いと感じたが、実際にさわって撮影してみて、その取り回しの良さや画質面にコストがかかっている事を考えれば、十分性能に見合うものである事がわかってきた。
今回のインタビューで印象的だったのは、誰でもちょっとお小遣いをためれば買える価格を考えたら300mmになったというところ。絵に描いた餅より、ユーザーの身の丈に合ったところで、最新技術の恩恵を享受させてくれるニコンの姿勢には共感を覚えた。