インタビュー

早くもチャンネル登録1万人! 写真家 米美知子がYouTubeを始めた理由

新型コロナウイルスによって私たちの生活は激変した。テレワークが導入され、リモートによる活動が定着しつつある生活の中で重要になってきたのが「動画」によるコミュニケーション。

それは写真家にとっても同じ。従来のような撮影や写真教室が行えない中、写真家としての活動方法を模索している人も多い。先日のCP+2021はオンラインでの開催となり、各社趣向を凝らした動画コンテンツでイベントを盛り上げた。

そんな中、デジタルカメラマガジンで「詩的憧憬」を連載中の米美知子さんがYouTubeで番組を配信するというニュースが飛び込んできた。先日公開された「Michiko Yone / 米美知子」のチャンネル登録者数はあっという間に1万人を超えた。写真家が配信するYouTube番組とはどのようなものなのか、米さんにお話をうかがった。

——YouTubeの登録者数1万人おめでとうございます。米さんがまさかYouTubeを始めるとは意外でした。このタイミングでYouTubeをはじめようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

(米美知子さん。以下同)ありがとうございます。まさかこんなに多くの方が登録してくれるとは思いませんでした。誰もが予期しなかった新型コロナウイルスの蔓延で、自分自身の生き方を考えるようになったのがきっかけです。当たり前だった自由な行動や撮影が、ある日突然、制約されて家から出ることができなくなってしまいました。そして東京在住だと、いつ自分も罹患するか分からないという恐怖心もあります。

そんな中、自分の生き様と言ったら大袈裟ですが、テント泊登山などの結構しんどいロケで、目的地にたどり着くまでの一歩一歩の歩みや感動などを自分自身が撮った映像で残したいと思ったんです。素晴らしい自然の一瞬は、今まで通り写真というワンカットの芸術で表現しますが、動画で自分の姿や声を残しておきたいというのが一番の理由だと思います。

自然写真の撮影はいつも緊張の連続ですが、コロナ禍になって余計に「もし、自分が突然居なくなったら何が残るだろう……」と思うようになりました。年齢のせいもあるかもしれませんね(笑)。

——動画で発信しようとする写真家が増えていますが、魅力的なコンテンツに仕上げるのがなかなか難しいような印象があります。そのあたりに心配はありませんでしたか?

私、今までYouTubeってほとんど見たことがなかったんです。ゴルフのレッスン動画ぐらいかな(笑)。だから写真家の方が増えていることも知らなくて……。でも何か調べたいときに検索するとYouTubeがヒットして、問題解決の足掛かりになったりしたこともあるので、自分自身を残すこと以外に、写真愛好家の方に何か役立つコンテンツを作っていけば受け入れてくれるかもと思って始めました。

——現在、3本の動画がアップされていますが、視聴者にやさしく語り掛けるような、夜に寝る前や朝食のときなどに見て楽しめる雰囲気がありました。心掛けていることは何かありますか?

3本目までは今までの写真などを使っての動画になりますので、室内での収録になります。外では元気な声で喋る私ですが、さすがに家の中で大声では話せません(笑)、というのは冗談ですが、聞いてくださる方が分かりやすいように、ゆっくりと喋るようにしています。

——特に2本目と3本目は、いっしょに登山をしているような体験ができるのが楽しかったです。撮影時の裏話が満載なのは、日々撮影に出掛けている米さんだから作れるコンテンツだなと思いました。このネタをYouTubeで話したら面白いだろうなというネタはどんな基準でセレクトしていますか?

ネタを作っているつもりはないのですが、結構1人でやらかしていて……(笑)。登山ロケや特にテント泊登山はやっぱり誰もができることではないので、行けない方の仮想登山になったら良いなと思っています。頂いたコメントにも「昔は山に登っていたけど怪我をして行けなくなった」とか「登った気分になった」「自分もテント泊登山をしてみたい」とあって、自分の見てきた景色や体験を正確にお伝えしつつ、ちょっと私のドジな部分も紹介しています。

——米さんの番組はBGMも素敵です。音楽のチョイスはどうされているのですか?

使用する音楽に対しては著作権の問題があるので、YouTubeなどで使える海外の業務用音楽ライブラリーを契約して使っています。そして動画にも起承転結があるのでストーリーに合わせて曲はチョイスしています。自分の語りのところでは基本的にインストゥルメンタルの曲を使って、エンディングなど自分の写真とコラボさせる部分ではさまざまなジャンルやタイプの曲を使っています。

私は写真家になる前にエレクトーンの講師をしていたので、やっぱり音楽にはこだわりたいんですよね。一曲全部を使うことはまずないので、絵に合わせて短くするときはコード進行などや拍の表裏、強起や弱起などを意識して編集しています。そして音楽=BGMというのではなくて、映像と音楽のコラボレーションを表現したいと思っています。

——動画の編集技術を1か月ほどで習得したというのは驚きでしたが、何が一番、難しかったでしょうか?

何といっても時間が少なかったことですね。2月になって始めようと思い立ったので、そこから猛勉強をしました。動画編集やYouTubeについて調べ上げて、書き留めたノートは3冊目でボールペンは4本目です(笑)。まず、動画編集の概念が全くないので、ソフトの仕組みなどを理解するのが大変でした。あと海外のソフトは英語から翻訳された日本語が分かりにくくて(笑)。

そして実際に始めてみると、音に関する事が一番難しいですね。やはり視聴者の観る環境がそれぞれ全く違うことで、音質や音量がさまざまに聞こえているようです。YouTubeの視聴スタイルもパソコンやスマホだけでなくテレビで観ている方も多いですし、スピーカー出力やイヤホンやヘッドフォンの種類によっても全然違います。

2本目は結構派手なエンディングの曲にしたのですが、家でも古いパソコンで再生したら音割れしていて、でも新しいパソコンやステレオイヤフォンで聴くと全く音割れせずキレイに聞こえます。この辺が今後も一番難しい部分じゃないかなと思っています。

——カメラやマイクなど、現在、使用している機材を教えてください。

パソコンはWindowsとMacを併用しています。カメラはキヤノンEOS R5、EOS R、PowerShot G7 X Mark III、GoPro HERO9です。マイクはBlue Microphones Yeti Nano USBで話しています。編集ソフトはブラックマジックデザイン DaVinci Resolve 16を使用しています。

——今後の展開もとても楽しみなのですが、 どんな配信内容を予定されているのでしょうか?

3本目までは今までの写真などを使って配信しましたが、この後は徐々にYouTube用に撮影したコンテンツを使って、風景写真の楽しさをお伝えしていけたらと思っています。

【CP+2021】アフタートーク第2弾!「テント泊登山!立山&燕岳」
福島晃