写真展告知

鶴巻育子写真展:ALT

キヤノンギャラリー S(品川)では、写真家の鶴巻育子氏による写真展「ALT」を9月27日(金)から開催する。

鶴巻氏が視覚障害者との関わりをきっかけに、取り組んできたというプロジェクトの集大成として、「みること」について思考を巡らすことを目的とした写真展。

会場は3つのセクションにより構成。セクション1では、鶴巻氏が視覚障害者と対話しながら彼らをモデルに撮影したポートレートを展示する。

また、セクション2では、視覚障害者がそれぞれの見え方について「言語化」したものを鶴巻氏が「写真化」するという試みのもと撮影した作品を展示する。

セクション3は、「撮る、撮られる」から始まった鶴巻氏と視覚障害者の両者が、カメラを持ちながら街を歩き撮影した写真で構成される。

セクション1から3まで、計100点を超える作品を展示するという。

加えて、作品のモデルにもなった視覚障害者の3名がファシリテーターとなり、見える人、見えない人、見えづらい人が一緒に”雑談”をしながら作品鑑賞をするツアー「Altrenative View ~見える人、見えない人、見えづらい人が一緒に鑑賞するギャラリーツアー~」も開催する予定。

目を使って仕事をする写真家の自分とは対極にある「見えない、見えづらい世界」を覗いて見たい。そんな好奇心から始まったプロジェクトの第2弾が「ALT」です。
人は情報の80~90%を視覚から得ていると言われています。取材当初、私はその情報を得ずに生きる視覚障害者の人々の苦労ばかりを想像していました。しかし個人差はあるものの晴眼者となんら変わりない彼らの生き方を目の当たりにし、また「視覚障害」と言っても個人個人異なった見え方で、簡単にカテゴライズできるものではないことを知りました。私は知らず知らずのうちに、先入観や偏見を抱いていた自分に気づきました。彼らと会い対話する時、言葉が最も重要なツールとなります。そこではミスコミュニケーションが生じることもあり、言葉でのやり取りにおける難しさを実感せざるを得ませんでした。しかし当然ですが、それは相手が晴眼者であっても起こり得るものです。私は他者との認識のズレに違和感を抱くより、まずは自分の知らない領域に一歩足を踏み入れてみることを優先しました。すると、私ひとりでは辿り着けなかった気づきやアイディアが浮かび、新しい世界が見えた気がしました。
約4年の間に多くの視覚障害者の人々と時間を共有した中で最も興味深かったのは、彼らが頻繁に「みる」という言葉を口にすることでした。私は改めて見ることの意味を考えるようになり、いかに自分の視野が狭いかを思い知る体験をしたのです。目で見ることが全てではない。感じることは見ること。見ることとは何か。
「視覚障害者に興味を持ってくれるのが嬉しい」「面白い形で自分たちの世界を表現してもらいたい」など彼らの言葉が支えとなり、この作品を完成することができました。

ALTとは

alternateの略
代わりのもの、代替え、交互の、他の可能性、他の手段
X(旧Twitter)では「+ALT」ボタンは代替えテキストの略称で、画像の説明を示す用語として使われています。

作家メッセージ

会場

キヤノンギャラリーS

開催期間

2024年9月27日(金)~11月11日(月)

開催時間

10時00分~17時30分

休廊

日曜日・祝日

ギャラリートーク(先着150名)

10月5日(土)14時00分~15時30分
※先着申込順、8月5日(月)10時00分より申し込みの受け付け開始
※当日は、13時30分から受け付けを開始

作者プロフィール

1972年東京生まれ。写真家。1997年の1年間渡英し、語学を学ぶ。帰国後、周囲の勧めで写真を学び始めた。カメラ雑誌の執筆や写真講師など幅広く活動する一方、2019年に東京・目黒に写真ギャラリー「Jam Photo Gallery」を開設し、若い写真家への場の提供やアマチュアの育成にも力を注いでいる。国内外のストリートスナップで作品を発表しながら、視覚障害者の人々を取材し「みること」をテーマとした作品にも取り組んでいる。主な個展に「芝生のイルカ」(2022年/ふげん社)、「PERFECT DAY」(2020年/キヤノンギャラリー銀座・梅田)、および「3[サン]」(2015年/表参道スパイラルガーデン)など、主なグループ展は「icon CONTEMPORARY PHOTOGRAPHY」(2022/AXIS Gallery)、アルファロメオ企画展「La meccanica della emozioni」(2017/寺田倉庫)などがある。