写真展告知

飯田夏生実写真展:in the picture

(ニコンプラザ東京)10月12日~10月25日

飯田夏生実さんの写真展「in the picture」がニコンプラザ東京内のニコンサロンにて開催される。会期は10月12日(火)~10月25日(日)。

ある日突然、私は味覚も心も無感覚になり、外出さえできなくなった。それは子育てを終えた母親が陥る「空の巣症候群」だった。一年が経った頃、そんな自分を受け入れ、老いていくことを恐れず、日々生きる姿をとどめることで前に進もうと、セルフポートレートを撮り始めた。

その過程で徐々に知ることになったのだ。

母親は子供を「内なる他者」として受け入れて初めて「親」となること。しかし、成長し巣立った子供が不在となった後、喪失を埋めるかのように常に輝くような真新しさで幻影は甦り、その度に不在の痛みが鋭く心を刺しつらぬことを。それは無情にも「親」である私の心を引き裂く。さらに、私と私の母との関係もそうだったのかと腑に落ちたのだ。

やがて、写真はその中の私を暗い部屋から、空の下へ、街へと、連れ出していくだろう。写真を撮ることが、私を世界へと解き放っていくと予感する。喪失感も血肉となって、自分を生きていくのだ。

ステートメント

作家コメント

私は「空の巣症候群」に苦しんだ4年間を通じて、母と子の関係性、そして母親という存在のありようの不可思議さを真摯に見つめ直すことになった。セルフポートレートをそのための手段とし、日々撮り続けたことが与えたものはきわめて大きかった。

写真を撮る行為、そして写真の中の自分を見ることは、苦悩の最中にいる自身を支える力となり、より冷静に苦悩の在りどころを見つめることを可能にした。さらには、写真を撮ることで社会とのつながりを保持しつつ、より開かれた回路へと修復するだろうとの予感を提示する。

これらはセルフポートレートの概念を拡張する試みでもあった。言わば<セルフポートレートの冒険>を実践したインスタレーション展示となっている。

同時に、これまで取り上げられることの少なかった、老年期に入ろうとする女性のライフステージ転換期をどうしたら、否定することなく、さらに自らを高めて生き延びられるのかという模索の日々の記録でもあるのだ。

会場

ニコンサロン
新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー 28階 ニコンプラザ東京内

開催期間

2021年10月12日(火)~10月25日(月)

開催時間

10時30分~18時30分(最終日は15時00分まで)

定休日

日曜日

作者プロフィール

1954年、東京都生まれ。現在、フリーランスの編集者。
日本大学芸術学部映画学科卒業後、建築関係の雑誌記者を経て、映画書専門の出版社に入社。映画関係の書籍の編集を通じて、取材撮影を経験、また映画のスティル写真を大量に扱う。2012年に写真教室に入り、2013年より作品制作に取り組み始める。数年のブランクを経て、2020年より写真作品の制作を再開。

2014-2016年:六甲国際写真祭レビュー参加。
2014-2015年:2年連続で「KAWABA NEW-NATURE PHOTO AWARD」ファイナリスト選出。
2015年:「横浜御苗場Vol.16レビュアー賞(池田修氏セレクト)」ノミネート、「HUNGRY ISSUE 4in Basel(Bjane Bare氏 /ギャラリーMELK)」セレクト。
2017年:kyotographyレビュー、東川町赤煉瓦フォトレビューなどに参加。

2014年:二人展「Chaos--Tingle, Entangle, and Wave」(ブライトフォトサロン)
2015年:グループ展「Photographers Obscure」(Ricoh Imaging Square GINZA)ほか多数参加
2021年:「写真学校10校合同選抜展」(品川キヤノンオープンギャラリー2)。