写真展告知

連続企画「都築響一の眼」vol.2/石井陽子「鹿の惑星」

写真家・編集者の都築響一氏が、独自の切り口で最先端の写真家を紹介していく連続企画「都築響一の眼」。シリーズ第2回は、全国各地の鹿を撮り続けている鹿写真家の石井陽子氏による写真展「鹿の惑星」を開催します。神の遣いとされている鹿、街を闊歩する鹿、そして害獣として捕らえられた鹿。人間の都合に翻弄されながら、たくましく生きている鹿たちを、独自の視点で切り取った作品約20点を展示。会期中、都築響一氏と作家とのトークなど、関連イベントを開催。

写真展情報

大自然に分け入る「ネイチャーフォト」でもないし、鋭い文明批評をはらんだ「社会派ドキュメンタリー」でもない。かわいらしくもあるけれど、『猿の惑星』ならぬ映画『シカの惑星』のスチル写真みたいにシュールな光景でもある。優しさと、ヒネリの効いたクールな目線が交錯する石井陽子さんのシカを見る眼。それは「ある場所では神鹿(しんろく)、ある場所では害獣」と人間の勝手な都合で崇められたり駆除されたりしながら、人間と野生の境界線を自由に行き来する「ニッポンのシカ」のようにフレキシブルで、しぶとい。

都築 響一

写真展情報

奈良の鹿は春日大社の神鹿と呼ばれ、天然記念物として保護され、観光客のアイドルとなっている。しかし、全国の多くの地域で鹿は農作物や樹皮を食べる害獣とみなされており、頭数管理が行われている。2017年度には約16万頭が狩猟で捕えられ、45万頭以上の鹿が有害獣として「駆除」された。人の決めた境界線の中では、ペットのように鹿せんべいを与え、その外では鹿を害獣として駆除するのは人間たちの都合だ。ある意味、鹿たちは人間の矛盾を映す鏡のような存在でもある。だが、当の鹿たちは人間たちが引いた境界線を軽やかに越え、たくましく生きている。そんな自由な鹿たちをレンズ越しに見ると、そこには「鹿の惑星」が広がっている。

石井 陽子

写真展情報

会場

KKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)
東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビル405

開催期間

2019年9月11日(水)~9月28日(土)

開催時間

15時00分~21時00分

休廊

日曜日、月曜日、火曜日

ギャラリートーク

9月13日(金)19時30分~20時30分

作者プロフィール

山口県周南市(旧・新南陽市)生まれ。神奈川県在住。2011年3月より、奈良、宮島などで人の街に棲み、人間たちの決めた境界線を軽やかに越えて街を闊歩している鹿たちを捉えたシリーズを開始。2015年12月リトルモアより写真集「しかしか」刊行。2016年1月銀座ニコンサロン、2月大阪ニコンサロンで写真展「境界線を越えて」を開催。2016年11月に米・サンタフェでレビュー・サンタフェに参加。

個展
2016年1月 「境界線を越えて」 銀座ニコンサロン 2月 大阪ニコンサロン
2016年11月 「しかしかいない不思議で可愛い鹿写真展」 奈良まほろば館(東京)
2018年1月 「Life」 ミラージュ・ギャラリー (神戸)
2019年5月 「Deer Planet」 オークランド・フェスティバル・オブ・フォトグラフィ (ニュージーランド)

主なグループ展
2014年8月 OBSCURA 2014 Japanese Photography Showcase (マレーシア・ペナン)
2014年12月 Angkor Photo Festival スライドショー上映 (カンボジア・シェムリアップ)
2017年7月 YPF in Arles (フランス・アルル)
2017年9月 Stadthaus Ulm “Urban Wildlife” (ドイツ・ウルム)
2018年11月 屋久島国際写真祭 (鹿児島県屋久島町)

主な受賞
レンズカルチャー ストリート・フォトグラフィ・アワード2019 審査員賞(レベッカ・ノリス・ウェブ選)