写真展告知

榎本八千代写真展:20050810

展示されている写真は4歳の男の子の使い古された靴と服とおもちゃ。そしてその子供が住んでいたマンションの周りの風景が写っているだけです。本来ならその使いふるされたモノ達は成長ともに役目を終えて、廃棄されるべき予定のものでした。しかし、それらのモノたちは捨てられることはなく、そして誰かに譲られることもなく、ずっと戸棚の奥へ長い間、隠されておりました。

何故ならそれは、その母親が、彼が亡くなったと言う事実をどうしても認められなかったからです。しかし、それらのモノ達は11年もの間、存在はずっと忘れられていなかったものの1度も外へ出されることはありませんでした。彼女はその事実に対して 正面から向かいあう勇気がありませんでした。自分の子供の死というのは自分の残りの人生の死でもあるからです。

2016年の春、その子の母親であり 作者でもある榎本が しまわれていた箱から1つ1つ丁寧に取りし、カメラの前に置き、そしてファインダーを通して やっと11年前の「喪失」についてやっと考え始めることができました。それは、写真というツールを利用することにより自らの「喪失」の記憶について、辛いながらも向かいあう事が出来ると考えたからです。亡くなった子供をよみがえさせたいという感情と、成仏して欲しいという感情は、まったく正反対の位置にありながらも、常に榎本はそれを持ち続けてきました。写真という手段は、そのアンビバレント(ambivalent)な欲望を一時的に実現できるツールであるとも彼女は考えたからです。

写真展情報

会場

gallery 176
大阪府豊中市服部元町1-6-1

開催期間

2018年2月16日(金)~2月27日(火)

開催時間

平日:13時~19時
土曜日:11時~19時
日曜日:11時~17時

休廊

2月21日、22日

レセプション&トーク「混ぜるな危険!」

2月16日(金)18時30分~21時30分

作者プロフィール

1967年 埼玉県生まれ
2017年4月より 東京藝術大学社会連携課勤務(年棒制大学職員)
2017年3月 京都造形芸術大学通信部美術科写真コース卒業