イベント告知

「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭 2026」が4月18日より開催

今年のテーマは「EDGE(エッジ)」 来場者30万人を目指す

次期駐日フランス大使のベアトリス・ル=フラペール=デュ=エレン氏。数日前、来日した

14回を数える「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の開催概要が、東京・広尾のフランス大使公邸で発表された。会期は2026年4月18日(土)〜5月17日日の1カ月間だ。今年は8カ国から13組の写真家とアーティストが参加する。

昨年の来場者は前年比43.1%増の29万7658人。今年は30万人の大台を目指す。

次期駐日フランス大使のエレン氏は、今夏のアルル国際写真祭に足を運び、SIGMA×KYOTOGRAPHIE共同制作の川田喜久治『Endless Map ? Invisible』展を鑑賞したそうだ。

「KYOTOGRAPHIEは世界的に知られる催しとなっている。芸術は人と人の理解を深め、分断を乗り越える力を持つ。本展は日本とフランスの特別な絆をもたらしている」と話す。

第14回のテーマは「EDGE(エッジ)」。端や周縁を指すほか、鋭利な刃先の意味もある。


「今年のKYOTOGRAPHIEはこの『あわい』を緊張と変化が同時に生まれる場所として描き出す。エッジは不確実性に満ちた場所であり、同時に可能性の生まれる場所でもある。そして1つの終わりが、次の始まりへと導かれる」と示す。

日本人写真家は3名が選ばれた。森山大道氏の全貌をブラジル人キュレーターのチアゴ・ノゲイラが解き明かす「A RETOROSPECTIVE」だ。写真を通して「現実の表象」や「真実と虚構」「記憶と歴史」について思索してきた。雑誌や出版物にフォーカスを当て、その在り様を展観する。本展はブラジル、ドイツ、イギリスなど6ヵ国で巡回された。

FromLetter to St-Loup, 1990. ©Daido Moriyama/Daido Moriyama Photo Foundation.
FromPretty Woman, Tokyo, 2017. ©Daido Moriyama/Daido Moriyama Photo Foundation.
Stray Dog, Misawa, 1971. FromA Hunter. ©Daido Moriyama/Daido Moriyama Photo Foundation.

柴田早理氏

柴田早理氏はKYOTOGRAPHIE2025で行われたインターナショナル・ポートフォリオ・レビューでルイナール・ジャパン・アワードを受賞。その副賞で仏のランスに約2週間滞在し作品制作を行なった。その成果を発表する。

作者は富山県南砺市の山間で育ち、その後、都市で暮らした。現在は東京と南砺市を行き来し、人間と自然の関係、環境変容、グローバル資本主義が周辺コミュニティに与える影響を探求する。

ランスでは女性が成長するストーリーを展開させた。

「自然に戻る体験がどれほど深く心を動かすものなのかを思い出した」と柴田氏は話す。

©Sari Shibata
©Sari Shibata
©Sari Shibata

福島あつし氏

もう1人は福島あつし氏だ。高齢者専用の弁当店で配達員となり、その光景を撮影。「ぼくは独り暮らしの老人に弁当を運ぶ」が2019年のKG+SELECT Awardでグランプリを受賞し注目を集めた。

2018年からは友人の誘いで農業に従事してきた。自然と触れ合う穏やかな日常を想像していたが、全く別物だった。実りを愛でるような感覚はなく、知識と労力をつぎ込み、収穫量を増やし労働単価を上げることに喜びを見出すビジネスの世界だった。

「特に夏は過酷な環境にさらされる。動物と自然の恵みを奪い合う現実があり、人間も自然の一部なんだと実感させられる。そこには闘う農業だから感じる高揚感があります」と福島氏は話す。

会場では自然の厳しさと、生と死のエネルギーが体験できる空間を作る。かつては飲食店が入る雑居ビルだったスペース、ygionで収穫物を楽しみながらの展示とする予定。

©Atsushi Fukushima
©Atsushi Fukushima
©Atsushi Fukushima
©Atsushi Fukushima

1970年代のパンクシーンから登場し、イギリスで影響力のある1人、リンダー・スターリングを日本で初めて紹介する。「フェミニズムの先駆者」であり、写真やフォトモンタージュを使い、欲望や女性の身体に関する既成概念に挑み、再構築してきた。主要作品を含め、彼女の足跡をたどる。

What I Do To Please You I Do, 1981–2008 ©Linder, Courtesy of the artist and Modern Art, London
The Sphinx, 2021 ©Linder, Courtesy of the artist and Modern Art, London
Oedipus, 2021 ©Linder, Courtesy of the artist and Modern Art, London

KYOTOGRAPHIEでは5年前から、アフリカの多様性を伝えるため、「アフリカン・アート・イン・レジデンス」を行なってきた。今回はケニア出身のタンディウェ・ムリウを招き、代表作「CAMO」と、京都で制作した新作展の2つを開く。

男性優位の社会の中で、女性の役割、伝統がどのように機能しているかなどを問いかける。

「CAMO」はカモフラージュの意で、極彩色の背景に埋もれる女性ポートレートを撮影する。これらは画像加工ではなく、実際に撮影して作っている作品である。

新作は京都の伝統的な布織物と、アフリカの布を使い、その類似性をも提示する。

An Abundance of Plenty, 2024 ©Thandiwe Murie
The Space Between Love and Comfort, 2025 ©Thandiwe Murie

京都駅近くの使われなくなった建物を会場に展示するのが、フランスの写真家ユニット「イヴ・マルシャン&ロマ・メェッフェル」の作品だ。長年、大判カメラで世界の廃墟や崩れ行く建造物を撮影してきた。

「廃墟は空洞のポートレートであり、地勢でありもう一つの歴史を縁取る存在です」と指摘する。AIを使い、パリや京都が朽ち果てていく光景を捉えたシリーズも見せる。

c803d74b-86ff-49a9-b633 3d83e9633402, Les Ruines de Paris, 2024 ©Yves Marchand & Romain Meffre
Ballroom, Lee Plaza Hotel, The Ruins of Detroit, 2006 ©Yves Marchand & Romain Meffre
Looking South from the embankment, Gunkanjima, 2012 ©Yves Marchand & Romain Meffre

現在も終わりの見えない争いが続くパレスチナにもフォーカスした。ガザの日常を撮り続けた写真家であり、アクティビストだったファトマ・ハッスーナは、自宅がイスラエル軍の空爆を受け、25歳の若さで命を落とした。

ガザではすでに248人のジャーナリストが死亡しており、それはかつてない数字だ。

彼女の写真を通し、その崇高な活動に敬意を表すとともに、この大きな悲劇を多くの人が考えるきっかけになることを願う。

©Fatma Hassona
©Fatma Hassona
©Fatma Hassona

また南アフリカのアパルトヘイトを内側から捉えたアーネスト・コールの「HOUSE OF BONDAGE」も開催。こちらも日本初公開だ。

1940年生まれのコールは南アで最初期のフォトジャーナリストの1人。黒人がどのような差別にさらされ、日常を送っているかを記録し続けた。

その活動から1966年、母国を逃れニューヨークへ渡る。が、彼自身は写真家活動を止め、困窮を極めた後、すい臓がんで49歳で他界する。

手錠をかけられた黒人。不法に白人専用地区にいたとして逮捕される。南アフリカ、1960年代
Handcuffed blacks were arrested for being in a white area illegally, South Africa, 1960s.
床にひざまずいて字を書く生徒たち。政府は黒人のための学校設備に無関心である。南アフリカ、1960年代
Students kneel on floor to write. Government is casual about furnishing schools for blacks. South Africa, 1960s.
人種隔離を示す標識。南アフリカ、1960年代
Segregation signage, South Africa, 1960s.

新進アーティストの発掘と支援を目的にしたサテライトイベント「KG+2026」も開く。2025年には21カ国から442人が参加し、141の会場で164の展覧会が行なわれた。

イベント名

KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭 2026

会場

京都市内各所

開催期間

2026年4月18日(土)〜5月17日(日)

開催時間

会場により異なる

入場料

パスポートチケット:一般6,000円(前売り5,500円)、学生3,000円(前売りも同額)