デジタルカメラマガジン
2022年・熱田護F1カレンダー「Honda Last Battle」ができるまで
2021年11月26日 12:00
F1にPU(パワーユニット)メーカーとして参戦しているホンダが2021年をもってF1から撤退する。その最後の戦いをまとめたカレンダー「Honda Last Battle」を9月28日に発売した。写真は日本人で唯一開幕戦から撮影している熱田護さん。カレンダーのデザインは熱田さんの写真集『500GP』でも担当した福田典嗣さん。今回はデザイナーの福田さんに、カレンダーをどんな考え方でデザインしたのかを伺った。
ホンダ・ラスト・バトルをどうデザインするのか
タイトルはスピード感を手書きで表現
「ホンダF1最後の闘いを中心にまとめたカレンダーを作ります!」と編集部から連絡が入ってから数日後、熱田カメラマンから写真が送られてきた。写真を見る前に、すでに自分の中でタイトルデザインは決まっていた。
どんなに最先端技術の塊でも「闘うのはひと」。それがモータースポーツだから、タイトルは手書きで仕上げる! 手書きといっても筆のかすれを生かしたものでは、悲しげになってしまうので、スピード感があってポジティブな印象を与えたい。結果、カリグラフィーペンで書いたものをIllustratorで整えながら、画面にかぶりつき、丸3日かけて仕上げた。
送られてきた写真は1,240点
写真セレクトはデザイナーの仕事
熱田護というカメラマンは、撮った写真の全てに思い入れが強く、自分で写真を選ぶのは苦手……。近年ではだいぶがんばってはいるけれど、それでも始めは僕がセレクトすることが多い。それが、彼との仕事でおもしろい部分だし、ちょっと面倒くさい部分でもある(笑)。
写真は直感的に選んでいく
第一弾の写真が送られてきたのは6月30日。9月末の発売を考えると前半戦最後のハンガリーGPまでの写真の中から選ぶことになる。開催中のグランプリと並行しながら「雨降ってくれるといいよね」とか「観客で埋まったスタンドをバックに撮れるかも」など、状況やイメージを熱田カメラマンと共有しながら進め、集まった総カット数は1,240点。連写やドライバーの違いなどでバリエーションは200点ほどだったと思う。
そこから、直感的に「良いじゃん」と感じた128点をセレクト。さらにそれを細かく分析。この写真のポイントはここだな……。空にもう少し魂が感じられたらもっといいのに……。これ狙って撮ったのならすげぇな……。めっちゃ、ヘリを撮っているけど、向こうも撮影しているヘリだしな……。といった具合に勝手気ままに絞っていくこの時間は、僕だけに許された贅沢で楽しいプロセス。そして12カ月分の12枚の写真をマシンの向きや、フレーム内の大きさなどのリズムを考えながらデザインに落とし込んでいった。ある程度まとまった段階で編集スタッフの方々にも意見を伺い、さらに入れ替えを繰り返し決めていった。
そして完成へ
ちょっとしたこだわり
あまり大げさに発信することでもないのだがお伝えしておくと、タンザック部分(カレンダーを留めている上の部分)は写真を邪魔しないように特色のグレーとし、裏面にはちょっとした吹き出しのメッセージを忍ばせた。そして、購入いただいた方の手元に届いたときに少しでも喜んでもらえたらと、梱包用の段ボールにもタイトルをきっちり印刷するなど、できる範囲でデザインさせてもらった。
けれど、反省点も……。見本が届いて気が付いたのだが、段ボールを開封する際にカッターなどでカレンダーを切ってしまわないような注意喚起のピクトグラムを入れておけばよかった。みなさま、すみません、どうぞ気をつけて開封してください。
ホンダの最後に思いをはせつつ
完成した作品を、あまり振り返って見ない僕にはめずらしく、届いた見本を部屋の壁に掛けて眺めている。カレンダーでありポスターでもある「Honda Last Battle」。ホンダ撤退にモチベーションをどう維持してこうかなぁ……なんて思いながら……。写真集『500GP』に続きインプレスさんのおかげで、自由にデザインさせていただけたことに感謝。そしてこれからも、僕はデザイナーとして。熱田カメラマンは写真家として。お互いの想いをぶつけ合いながら、良き作品を創っていきたいです!
プロフィール
福田典嗣(ふくだ ふみつぐ)
1965年、千葉県千葉市生まれ。東京都の本郷高校デザイン科を卒業後、株式会社スパ・インターナショナルに入社。モータースポーツやスポーツカー関連の広告やカタログなどを数多く手がける一方で、熱田 護氏の写真集『Turn in』『IGNITION』『500GP』などのデザインをほぼ全て担当。現在はフリーランスとして活動中。