デジタルカメラマガジン
7月号は、"色の演出"で写真の個性を決める「カラーグレーディング」を特集
2020年6月20日 00:00
デジタルカメラマガジン2020年7月号の特集1は「カラグレで行こう!」と題して、カラーグレーディング(色調を作り込むこと)によって写真の表現意図を明確にするための個性と技術を学びます。
ここでのカラーグレーディングとは、色調の作り込みを通じて表現意図を明確にするための編集作業をいいます。動画編集でよく聞かれる言葉ですが、写真も「フィルム風に仕上げてノスタルジーを表現する」など、個性を表現するための補正工程として紹介・解説しています。
オリジナルの状態から、まずはカラーコレクション(Color Correction=色の補正)の工程を経て、"色の演出"であるカラーグレーディングに進み、最後に部分補正としてレタッチ(段階フィルターでの補正、部分的な画像合成、ゴミ取りなどの修正作業)を行っていきます。
また、実際にカラーグレーディングを行う場合、目指すイメージに対して各パラメーターをどのように操作すればよいのか、基本的な操作解説も掲載しています。今回はLightroom Classic(バージョン9.2.1)とPhotoshop(バージョン21.1.3)が基準です。
こうしたカラーグレーディングについて、本書では写真家25人の作業手順を追う形で収録しています。ここでは以下に、髙木慎平さんのカラーグレーディングについて抜粋で紹介します。
エメラルドグリーンを差し込んで柔らかな印象に(写真・文:髙木慎平)
写真で自分なりの個性を出すためには、写真のどこかに自分の好きな色を仕込むというのが重要なポイントになる。今はパステルカラーのエメラルドグリーンがお気に入りで、ハイライト部分や白壁などにこの色を乗せることが多い。そのため、私の写真に写っている白は『白』ではなく『エメラルドグリーン』に見えるような写真が多い。白は編集による色の変化が一番分かりやすいので、まずはここを意識すると良いだろう。
階調をフラットにして彩度を上げておく
ハイライトを下げ、シャドウを上げて明暗部のディテールを分かりやすくすることで、トーンカーブによる色の変化が見やすくなる。RAWデータの場合、彩度が低いので自然な彩度を上げておく。彩度を上げないとトーンカーブがきれいな形にできたとしても、地味に感じてしまう。
STEP1:色温度と色かぶり補正でベースとなる色を作る
自分が適正だと思う色合いに「基本補正」の色温度と色かぶり補正で調整する。今回の場合ではわずかに黄色みを加えている。ホワイトバランス選択ツールは使わない。第三者の判断が少しでも入ると自分の色ではなくなってしまう。自分が適正と思う色が正解なので、基準を持っておこう。
STEP2:トーンカーブの各色調整でエメラルドグリーンに決める
この写真は白い壁が多く広がっているので、「トーンカーブ」を使ってこの壁を自分の好きな色に仕上げていく。ただ頭の中で好きな色を思い描いてそれを基準にしても、イメージ通りに仕上げるのは難しい。はじめはカラー見本などを手元に用意して、色をしっかり確認しながら行うと編集しやすくなる。
白壁をエメラルドグリーンにするには、それぞれのカーブを直接編集できるモードにして、ハイライト側(右上)を移動して黄色と緑を加える。黄色を加えるには青を下げるなど色の相関関係も理解しておく。
写真の中に自分の目印となる色を入れる
撮影場所や被写体、クライアントが変わっても、私の作品だと分かるように、どの写真にも目印になるような色を入れている。自分の中にお気に入りの色をハイライトやシャドウで表現するようにしているのだ。自分の中でそのようなルールを作っておくと編集がとてもスムーズになるし、作りたい色がはっきりとしているので、トーンカーブやホワイトバランスに迷うことはなくなる。
STEP3:HSLでオレンジと青の色合いを調整する
肌の色は「HSL」を使ってあえて色白には仕上げず、健康的に見えるように黄色を少し残している。水の色も壁の色に合わせることによって写真の統一感を出している。
実践テクニックを解説する25人の人気写真家(敬称略)
amatou、上田晃司、大村祐里子、大和田 良、岡嶋和幸、加藤康朝、久保陽平、黒田明臣、小野友暉、コハラタケル、斎藤朱門、佐々木和一朗、澤村洋兵、杉本優也、髙木慎平、高橋直哉、土肥美帆、Nana*、萩原れいこ、藤原嘉騎、別所隆弘、万城目 瞬、Hiro、茂手木秀行、和合幸恵