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カーボン外筒に排気ファン3基を搭載…超大口径アストログラフ「SCA310」に見る徹底した熱対策と光学設計

「SCA310」と、株式会社サイトロンジャパンの渡邉耕平さん

サイトロンジャパンが発売した天体望遠鏡「SCA310」を取材した。7月の製品リリース時に、多くの読者から注目を集めた製品だ。

製造元のSHARPSTAR社は中国に本拠を置く光学メーカーで、主に天体写真向けの望遠鏡を手がけている。ポピュラーな「Askar(アスカー)」ブランドも展開しており、近年では一般的なメインストリーム製品をAskar、少しエッジの効いたチャレンジングなモデルをSHARPSTARブランドから送り出す傾向にあるという。

今回の「SCA310」は、SHARPSTARとしても初となる口径30cmを超える超大口径モデルであり、フラッグシップかつ挑戦的な意欲作という位置づけだとのこと。お話はサイトロンジャパンの渡邉耕平さんに伺った。

星雲撮影に特化した超大口径アストログラフ

「SCA310」は、焦点距離1,178mmで口径310mm、F3.8という明るさを誇るディープスカイ(星雲・星団・銀河)撮影向けのアストログラフ。イメージサークルは55mmを確保しており、35mmフルサイズはもちろん、中判フォーマットの大型センサーによる撮影にも対応する。各マウントアダプター(別売)を介してミラーレスカメラの装着も可能となっている。

本機が得意とするのは、宇宙に淡く広がる「星雲」の撮影だ。月や惑星の撮影には高い拡大率(長焦点)が求められるが、暗く広範囲に広がる星雲の撮影では、光を効率よく取り込める「F値の明るさ」が何より重要になるという。F3.8という明るさにより、従来より短い露光時間で、暗い天体のディテールや色彩を鮮明に描き出せるのが強みだ。

ターゲットユーザーは、星雲撮影を極めたいハイエンドユーザーや本格的な天体写真愛好家。導入や運用には一定の専門知識と環境が必要となるが、これまでにない描写力を求める撮影者に応えるスペックを備えているという。

サンプル画像(©张宇航|IC405|SCA310 + ZWO ASI461MM Pro)

カセグレン式と内蔵補正レンズによる光学系

光学系には、非球面主鏡と石英ガラス製の球面副鏡を組み合わせたカセグレン式を採用している。主鏡・副鏡には反射率95%以上の増反射アルミニウムコーティングが施され、光の利用効率が高められている。

鏡筒後部には、EDガラス1枚を含む3群3枚構成の補正レンズを内蔵。これにより、像面湾曲や各種収差が高度に補正され、55mmの広いイメージサークル全体にわたって周辺光量ほぼ100%を維持しながら、画面の隅々までシャープな星像を結ぶ。

メーカーはこれを「スーパーカセグレン」と呼称しており、カセグレン式の長所を生かしつつ補正光学系により性能を高めた設計となっている。

奥に見える筒が主鏡。手前に見えるリングが副鏡。カメラ用レンズで言う、ミラーレンズ(レフレックスレンズ)のような構造だ

カーボン鏡筒と熱対策、上級者向けの調整機構

鏡筒の外筒には、軽量で強固なカーボンファイバー素材を採用している。天体撮影では20℃の室内から-20℃の屋外へ持ち出すような状況で激しい温度変化が生じることもあるが、熱膨張率の低いカーボンを使用することで、温度変化によるピント位置のズレを最小限に抑える意図があるという。主鏡や副鏡にも気温変化による変形が起きにくい特殊ガラスが用いられている。

鏡筒後部には3基の排気ファンとデジタル温度計を搭載している。大口径の反射望遠鏡は内部に温かい空気がこもりやすく、空気の密度差による揺らぎ(筒内気流)が星像を歪ませる原因になる。自然冷却では温度順応に数時間かかってしまうため、撮影前にファンを回して強制的に空気を排出し、短時間で外気温になじませる仕組みだ。

後部
排気ファン

主鏡と副鏡のそれぞれに光軸調整ネジが設けられているのも特徴。反射望遠鏡は移動時の振動や姿勢変化、温度変化によって光軸が微妙にずれやすいため、撮影者自身が現場で最終的な光軸の追い込み調整を行うことが前提となっており、この点でも玄人向けの硬派な仕様といえる。

光軸調整ネジ

カメラの装着と、システム全体の導入環境

カメラの取り付けはシンプルで、目的に応じてアタッチメントを選択しねじ込んでいく。一般的なミラーレスカメラもマウントアダプター経由で接続できるが、本機のような本格アストログラフでは天体撮影専用の「冷却CMOSカメラ」での撮影が一般的だという。

天体写真は数分間の長秒露光を繰り返すため、センサーの発熱によるノイズが課題となる。ファンとペルチェ素子を備えた冷却CMOSカメラであれば、センサー温度を外気温より数十度下げて撮影でき、ノイズを大幅に抑えることが可能。手軽さではミラーレスカメラに分があるものの、鏡筒の性能を最大限に引き出すには冷却CMOSカメラが適しているといえる。

冷却CMOSカメラを取り付けるところ。ねじ込み式になっている
冷却CMOSカメラの後部にはファンが搭載されている。基本的にはPCなどを介して撮影するため、そのための各種ポートも備えている
センサー部。冷却による結露を防ぐためのヒーターも内蔵している
天面に刺さっているのは乾燥剤(別売)
各マウントに対応するアダプター(別売)を使用すれば、カメラも装着できる
このアンバランスさが新鮮だ

導入にあたって考慮すべきは、システム全体のスケール感。「SCA310」の価格は約120万円だが、鏡筒重量だけで23.5kgに達するため、これを安定して精度高く追尾させるには大型の赤道儀が不可欠となる。さらに撮影用カメラや制御用PC、電源などを合わせると、システム全体での予算は300万円からが目安になるという。

大型の鏡筒を支えるため、システム全体として大型化するのは否めない
地平線近くの天体を撮影するときは、これほどの傾きとなる。しっかりとした脚が必要だ

安心の国内検品体制

海外製の超精密光学機器において、輸入時の長距離輸送による振動や衝撃は避けられない。サイトロンジャパンでは、ユーザーへ安心した品質を届けるため、同社の新潟工場および東京本社の専用設備にて受入時に外観検査と光軸検査を実施。独自の厳しい検査基準をクリアした個体のみを出荷する体制を整えている。

今回取材を行った東京・落合にある直営ショールームでは、実機を確認することができる。ただし、「SCA310」は大型の受注生産品であり展示台数に限りがあるため、見学を希望する場合は事前に店舗へ展示状況を確認のうえ足を運ぶのがおすすめだ。

直営ショールームの様子。所狭しと天体望遠鏡が並ぶ

ショールーム概要

  • 場所:東京都新宿区西落合3-9-19
  • 営業時間:10~18時
  • 定休日:日曜日、月曜日
本誌:宮本義朗