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「ニコンフィルム&フォトコンテスト 2024-2025」授賞式が開催
映像部門を強調した名称に変更後、初の式典
2025年10月19日 12:00
ニコンは10月12日(日)、写真・映像コンテスト「ニコンフィルム&フォトコンテスト 2024-2025」の授賞式を都内のニコン本社で開催した。
ニコンフィルム&フォトコンテストは、映像と写真の国際コンテスト。1969年から実施している「ニコンフォトコンテストインターナショナル」の流れをくみ、2012年からは「ニコンフォトコンテスト」として実施していた。通算40回目にあたる今回は名称を「ニコンフィルム&フォトコンテスト」に改め、動画作品の発信機会という側面を強調している。
今回のテーマは映像・写真ともに「Inspire」。動画部門は20~40秒の「スーパーショートフィルム(Super-Short Film)」と3~5分の「5分フィルム(5-Minute Film)」、写真部門は「単写真(Single Photo)」と「組み写真(Story Photo)」の合計4カテゴリーで「新たな視点や感情を呼び起こす作品」を募った。募集期間は2024年10月から2025年3月で、180カ国から約2万人、合計4万5,412作品が寄せられた。
授賞式では各カテゴリーから6名が選出され、この中からグランプリ1名、優秀賞2名、奨励賞3名が発表された。グランプリには賞金50万円とZ8、NIKKOR Zレンズ、優秀賞にはZ6IIIとNIKKOR Zレンズ、奨励賞にはZ50IIとNIKKOR Zレンズが贈られた(動画部門ではこれに加えてリグなどの動画アクセサリーが追加で贈られる)。
なお受賞作品を含む一次選考通過作品は、本コンテストのWebサイトで鑑賞できる。
写真に加えて映像表現も支援
株式会社ニコン代表取締役兼社長執行役員COOの徳成旨亮氏は授賞式開催挨拶の中で「私たちは視覚的なストーリーテリングを信じている」と話した。
「今日私たちは、レンズを通して世界を輝かせるクリエイターたちの卓越した創造性と才能を称えるためにここにいます。今回は180を超える国と地域から情熱を感じる作品が集まりました。これは写真と映像がともに人の感情を呼び起こし変化を促す力を持ち、ビジュアルストーリーテリングが文化の隔たりを埋める普遍的な言語であることを示しています」
また40回目の節目を機にコンテストの名称を変更したことにも触れ、写真と映像を通じた創造的な表現への関与と、伝統的な枠組みを超えた新しい形のストーリーテリングを探求するアーティストを支援する決意を反映したと述べた。
スーパーショートフィルム
スーパーショートフィルムカテゴリーのグランプリは、イラン・イスラム共和国から応募したHamed Nobari氏の作品「The Small Red, Big Blue」。イランが抱える深刻な水資源の問題をドローンによる空撮で表現した。
動画部門の審査員として参加した映画監督のMike Figgis氏は本作について「純粋なシネマだ」と評価。徐々に構図を引いていく過程で作品の全貌が明らかになるカットの難しさに言及し、制作の苦労が忍ばれる旨をコメントした。
優秀賞は同じくイラン出身のSoheil Masoumi氏による「A trace in the wind」とインドのAnindya Sundar Basu氏による「Shiuli - the one who still knows」が受賞。奨励賞は日本の前大道豊氏による「Beautiful Struggle」、Deshan Zhang(张德山)氏による「奔腾不息(Keep on going)」、オーストラリアのTracey Taylor氏による「Desert Hours」がそれぞれ受賞した。
5分フィルム
5分フィルムカテゴリーのグランプリは、ナイジェリアのAdemola Falomo氏による「Finding Serenity」が受賞した。ラゴス出身のアーティストYimikaの詩に触発されて制作したという本作では、元の英詩をヨルバ語に翻訳して主人公のモノローグとし、「混沌の中の平和」と「不確実性の中の美しさ」を探求しながら、詩の具現化を試みている。
Figgis氏は、詩を具現化するプロセスの一つとして用いられている「音の使い方」に着目。すべての音が完璧に融合した、美しい作品であると評した。「大きなスクリーンで見たかった作品の一つ」とも話した。
優秀賞はイタリアのLorenzo Morandi氏による「Sweet Little Girl」と、同じくイタリアのMarco Russo氏による「Awaiting the Lightning Bolt」。奨励賞は中国Ning Qian氏の「Fluffy Ball」、モルドバのJohn Donica氏による「Whisper」、アメリカのTyler Hicks氏による「I Know Who I Am」。
単写真
単写真カテゴリーでは、フィンランドのTiina Itkonen氏「Jonas」がグランプリを受賞した。
極夜と白夜が数カ月ずつ続く過酷なグリーンランドの辺境に住むイヌイットの少年を撮影した写真だが、近年では海氷が薄くなってきており、伝統的な生活様式が失われつつある現状にも触れた。

優秀賞はイランのFarshid Ahmadpour氏の「Hunter」とブラジルのAndre Ferreira氏による「Kite Festival」、奨励賞はマレーシアのLiew Hong Hooi氏による「I am Unstoppable!」、中国Xianhui Fang(房贤慧)氏の「Mom's scent」、ギリシャStelios Tsagris氏の「Evening passenger」がそれぞれ受賞した。
組み写真
組み写真カテゴリーのグランプリは、中国Lei Yang(楊磊)氏の「Farewell-able」。
Yang氏はまもなく日本の写真学校を卒業する立場にあるが、応募作品は故郷の町を離れる前に撮影した作品をまとめたもの。新しい生活へ踏み出す前の思い出を振り返ることを通して「別れ得るもの(Farewell-able)とは何か」の理解を試みたという。




優秀賞はドイツのNils Boddingmeier氏による「Nel mio sangue(in my blood)」と中国のYi Liu氏による「生命的舞台(The Stage of Life)」。奨励賞はポーランドJacek Gasiorowski氏の「American Dreaming」、アメリカKang-Chun Cheng氏の「Maasai Children of Malanga」、中国Ximeng Tu(屠栖蒙)氏の「山来水来(Mountains and Rivers)」。
世界から集まった「物語の力強さ」
閉会に際して、株式会社ニコン専務執行役員 映像事業部長の池上博敬氏は「我々はニコンフィルム&フォトコンテストについて、単なるコンペティションではなく、参加したクリエイターが互いに刺激し合い、成長していくコミュニティであると考えています。視覚的なストーリーテリングの力は、ときに言葉よりも雄弁に語りかけてくるものです」
「今年の受賞作品には、構図の美しさだけでなく、写真と映像を通して語られる物語の力強さがありました。それぞれ独自の視点と文化的背景を持ち、作品に込められた感情と物語を表現しています。これらの素晴らしい作品は、アジア、ヨーロッパ、南米、北米各地から集まった審査員による真摯な議論によって選ばれたのです」と挨拶し、授賞式を締めくくった。