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キヤノン「EOS 70D」発表会に妻夫木聡さんが登場

新像面位相差AFの詳細など

 キヤノンは2日、デジタル一眼レフカメラ「EOS 70D」の発表会を都内で開催した。ここでその模様をお伝えする。EOS 70Dの詳細は別記事を参照されたい

EOS 70D

デュアルピクセルCMOS AFは画質へのマイナス影響なし

 発表会で登壇したキヤノン常務取締役イメージコミュニケーション事業本部長の真栄田雅也氏は、「EOSにおいてAFの進化はカメラの進化に直結するもの」とAF機能の重要性を挙げ、今回キヤノンが初めて採用した像面位相差技術「デュアルピクセルCMOS AF」を「革新的な撮像面AF技術」(真栄田氏)と紹介した。

キヤノン常務取締役イメージコミュニケーション事業本部長の真栄田雅也氏。
EOSにおけるAF進化の歴史。
EOS 70D

 デュアルピクセルCMOS AFは従来の1つのフォトダイオードを2つにわけてそれぞれ別々の映像を取得し、その情報を元に位相差AFを行なうライブビュー専用のAF。

 デュアルピクセルCMOS AFの特徴は、従来のEOSのコントラストAFおよび「ハイブリッドCMOS AF」よりも高速に合焦できること。ハイブリッドCMOS AFでは最後の追い込みにコントラストAFを使用していたが、デュアルピクセルCMOS AFではコントラストAFを使用せずに、最後まで位相差AFで合焦できるため高速化できた。

新しい像面位相差AF機構を「デュアルピクセルCMOS AF」と名付けて訴求する。
EOS 70Dの撮像素子。
すべての画素が位相差AFの機能を兼ね備えるが、すべてのEFレンズで動作を確実に行なうため、AFフレームの移動は画面上の80%の領域に限られる。
デュアルピクセルCMOS AF時でAFフレームを最も端(右上)に移動させたところ。

 従来のハイブリッドCMOS AFは位相差センサーとしての画素が点在する構造で数が少ないため、最終的に位相差だけで合焦させる情報を得ることができなかったという。その点デュアルピクセルCMOS AFは、全画素で位相差情報を得ることで情報が増えたため、コントラストAFを併用せずに済んだとしている。

 ハイブリッドCMOS AFを搭載した「EOS Kiss X7」と比較して、EOS 70Dの合焦速度は約30%高速化したという(EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM使用時)。

 EOS 70Dでは、従来機にあったコントラストAFをユーザーが選択することはできなくなった。ただし、キヤノンがデュアルピクセルCMOS AF対応とする103本以外のレンズでは最終合焦にコントラストAFを併用する。103本以外のレンズとは、ほとんどが設計の古いレンズで、古いものほど合焦速度に差が生じるとしている。

 デュアルピクセルCMOS AFの精度は「キヤノンの基準に適合する」ものだとしている。今回は撮像のための画素と位相差AFのための画素が共通となっているが、撮像素子が発生する熱によってAFの精度が低下するといった現象も起きないとしている。暗い場所での測距は、光学ファインダー用の位相差AFの低輝度限界である-0.5EVに少し劣る程度だとしている。

 デュアルピクセルCMOS AFは、模式図を見ると1つの画素を物理的に分割しているように見えるが、実際には左右のフォトダイオード間に溝や壁があるわけではない。そのため、「デュアルピクセルCMOS AFによる撮影画像へのマイナスの影響は全くない」(同社)とする。

1つの画素を2つのフォトダイオードで構成。おのおので位相差AFのための別の情報を読み出せるようにした。
従来の光学ファインダーによる位相差AFと原理は同一で、合焦に至るレンズ移動量と移動方向を検出できる。
撮像時は1つの画素として機能する。
画像処理エンジンはDIGIC 5+。コンパクトデジタルカメラではよりり新しい「DIGIC 6」を搭載した機種もあるが、「一眼レフカメラは複雑で、新しいエンジンでパフォーマンスを発揮するためにはある程度期間が必要。過去にもあるが、新エンジンはコンパクト機から使いこなしていくようにしている」(キヤノン)。

 なお、ピント検出のための映像はピント検出だけに使用されるわけでは無く、そのままライブビュー画像や撮影画像としても使用される。ピント検出用画像を取得した後にライブビュー表示用画像を得る、といったシーケンスでは無いという。ライブビュー撮影では特定のフレームレートで読み出しているため、デュアルピクセルCMOS AFは光学ファインダー使用時の位相差AFには速度的に及ばないという。

 また今回のデュアルピクセルCMOS AFは位相差AFセンサーのピクセルが左右に並んでいるため、光学ファインダー使用時の位相差AFセンサーのような「クロス測距」には対応していない。いわゆる“縦線検出”は可能だが“横線検出”はできない。一方、光学ファインダー使用時の位相差AFは19点すべてでクロス測距が可能となっている。

 今回のデュアルピクセルCMOS AFについて真栄田氏は、「静止画撮影のためだけに作ったものでは無い。静止画のAFは被写体に対して最速で合焦することが求められる。一方動画では最速の動きでは違和感がある。静止画も動画もどちらにも適応的に最大に対応できるAFだ」と説明した。動画時のデュアルピクセルCMOS AFは、自動的にピントの移動が自然になるよう調整してあるという。

無線LAN機能を搭載しており、スマートフォンからのリモコン撮影や画像転送に対応した。
無線LANのユニット。
光学ファインダー使用時の位相差AFユニット。測拠点が19点に増えた。
光学ファインダー使用時の位相差AFセンサー。
シャッターユニット
ミラーボックス

妻夫木聡さん「一眼レフカメラは一体感がある」

 発表会には、EOS Mに引き続きコミュニケーションパートナーとして起用される俳優の妻夫木聡さんが応援に駆けつけた。スコットランドで撮影したEOS 70Dの新CM(8月下旬放映)にも出演する。

妻夫木さんは、「これからは、そろそろ1人旅にチャレンジしたい」、また「なんと言っても日本を象徴するものなので、富士山を撮影したいです」と話していた。
EOS 70Dを構える妻夫木さん。

 妻夫木さんは、「EOS Mでデジタルカメラの良さを知って、今回一眼レフのEOS 70Dを使った。ファインダーを覗いて撮れるということに、僕自身とEOS 70Dとの一体感があった。思い通りのものが撮れる安心感がある」と一眼レフカメラの良さをアピールした。

CM撮影で訪れたスコットランドで妻夫木さんがEOS 70Dで映した写真も披露。「風景を撮るのに、引いて撮るのかアップにすれば良いのかが難しかったです」(妻夫木さん)。この写真が最もお気に入りの1枚とのこと。
新CMのメイキング映像も上映された。司会はクリス・ペプラー氏。

 キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長の川崎正己氏は国内マーケットについて、「2013年の上半期はレンズ交換式カメラの内、一眼レフカメラが約6割でユーザーの一眼レフカメラ購入意欲は高い。そのなかで、キヤノンは上半期にレンズ交換式カメラのシェアトップだった。年間を通してもシェアナンバーワンを目指す」と述べた。

 EOS 70Dは、一眼レフカメラの入門機やEOS Mなどのミラーレス機からのステップアップユーザーをターゲットとしており、「ステップアップに応えるカメラ」(川崎氏)とする。

キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長の川崎正己氏
EOS 70Dのキャッチコピーは「イチガン新世界。」

 EOS Mの位置づけについては、次のように語った。「ミラーレスカメラは今後も進化していくが、現段階ではエントリー機と判断している。EOS Kissというヒット作もあるが、EOS Mによってレンズ交換式デジタルカメラから遠い場所にいるお客様にも近づいて頂けた。ある意味では、一眼レフカメラの入り口にEOS Mがあると考えている」(キヤノンマーケティングジャパン取締役専務執行役員イメージングシステムカンパニープレジデントの佐々木統氏)。

EOS KissシリーズやEOS Mからのステップアップ層がターゲット。
国内のレンズ交換式カメラは、ミラーレス機が躍進しているが一眼レフも6割を占める。
同社は、一眼レフカメラへのニーズも依然高いとみている。

【2013/08/09】記事初出時、「暗い場所での測距は、光学ファインダー用の位相差AFの低輝度限界である-3EVに少し劣る程度だとしている。」とありましたが、正しくは「暗い場所での測距は、光学ファインダー用の位相差AFの低輝度限界である-0.5EVに少し劣る程度だとしている。」になります。

(本誌:武石修)