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DxO、10万個のカメラ・レンズ補正モジュールを達成

独自の研究所で開発 補正技術の仕組みを公開

DxO Labsは2月4日(火)、カメラ・レンズ補正技術「DxOモジュール」の累計登録数が10万種類を突破したと発表した。あわせて、その開発を支える研究所の詳細と補正技術の仕組みをWebサイトで公開している。

2004年に開発されたDxOカメラ・レンズモジュールは、特定のカメラとレンズの組み合わせを数学的にモデル化したもの。イメージセンサーのノイズ特性、色再現性、ダイナミックレンジといった情報に加え、レンズのシャープネス、歪み、周辺減光、色収差までを精密に分析する。DxOのソフトウェア製品である「PhotoLab」「PureRAW」「ViewPoint」「FilmPack」で利用できる補正データの1つ。

撮影パラメータや視野の位置によって特性が変化するため、すべてのISO設定、焦点距離、絞り、撮影距離での測定が必要となる。この精密なデータを元に、機械学習を活用した高度なアルゴリズムがハードウェアの限界を超える画質補正を行う。高精度かつ詳細に測定できれば、その分補正効果も向上するという。

DxOは独自の校正研究所を保有し、高度な技術を持つスタッフにより、ツールとプロセスを構築してきた。

レンズのシャープネス測定では、超微細なグレイン紙に特殊インクで印刷したチャートを使用する。これらは平らなガラスやアルミニウム複合材にマウント。チャートのサイズは測定するレンズによって異なり、最小で直径5cm、最大で2mに達する。

測定時には、チャートを精密なレール上に配置し、60kgのスタジオスタンドにカメラを取り付ける。ライティングには昼光に近い色再現性を持つ照明を使用し、少なくとも7点での測定で均一性を確保しているという。

広角レンズのパフォーマンスを正確にモデル化するには、より小さな単位での多数の画像が必要になることもある。特に望遠レンズの測定では、わずかな振動でもブレが生じるため、より厳密な条件が求められる。

一般的な画像処理ソフトでは、フレーム全体に単一のシャープニングを適用するため、中央部は適切でも隅がソフトになったり、逆に周辺部は良くても中央部が過度にシャープになったりする問題があった。

これに対しDxOのソフトウェアは、モジュールのデータを基にフレーム内の様々な場所で異なるレベルのシャープニングを適用し、中央から周辺まで均一な画質と自然なボケを両立させるという。

レンズの歪みを補正する際も、単純な補正では画像のクロップが必要になり、広角レンズの視野角が損なわれる。例えば16mmのレンズが実質18mmの画角になってしまうケースもある。DxOでは可能な限り最大の画像を保存するよう補正アルゴリズムを最適化している。

色収差の補正では、ドットチャートを使用してRAWファイルを分析。各色チャンネルの幾何学的位置を再調整し、ディテールとシャープネスを維持しながら色のにじみを排除する。

周辺減光の測定には完全に均一な光源である専用の積分球を使用。フレーム全体の輝度をマッピングし、ノイズや色かぶりを発生させることなく補正を行う。

技術的な測定だけでは十分ではない。DxOでは最終段階として、実際の写真でモジュールの効果を検証しているという。

ラボの撮影スタジオには様々な色とテクスチャを含むテスト環境が用意され、肌のトーンは実際のモデルで確認。屋外では建物の撮影で歪み補正を検証し、公園での撮影で色再現性をチェック。

これらの最終チェックは写真経験を持つ技術者が実施。こうした人間の目による検証が、ラボでの測定精度と実際の使用感の間のギャップを埋めているという。

本誌:佐藤拓