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秋田エプソンの新棟が竣工。プリントヘッド生産能力を増強

秋田エプソン株式会社は12月22日(金)、インクジェットプリンター用ヘッド(以下、プリントヘッド)の同社生産拠点に、2022年11月から建設していた新棟がこのほど竣工したと発表した。投資額は総額約35億円で、同社におけるプリントヘッドの生産能力を将来的に現在の3倍程度に拡大する見込みという。

新棟が担うのは、インクジェットプリンターの基幹部品となるプリントヘッドの製造と組み立て。大容量インクタンク搭載プリンターおよびビジネスインクジェットプリンター用の部品になるという。セイコーエプソン株式会社広丘事業所(長野県塩尻市)における、「マイクロTFPプリントチップ」前工程の増産投資に対応する。

生産効率のため、新棟は既存のプリントヘッド生産工場棟に併設。新たな設備設計で自社製ロボットを導入しほか、最適なレイアウト構想の追求、高効率生産ラインにより生産性30%向上を目指すとしている。

同社によると、オフィス・ホーム向けインクジェットプリンター市場は、COVID-19以降の分散印刷化や、先進国での大容量インクタンク搭載プリンターの需要の高まりを受け、今後も全世界で需要増加が継続する見通しという。さらに、商業・産業向けインクジェットプリンターにおいてはアナログ印刷からデジタル印刷へのシフトに伴い、デジタル捺染など紙以外の分野における需要拡大も想定している。

現在、エプソンの商業・産業向けインクジェットプリンターの多くには、マイクロTFPプリントチップを用途に合わせて柔軟に組み合わせた「PrecisionCore(プレシジョンコア)マイクロTFPプリントヘッド」を採用している。これは、エプソンが培ってきたインクジェット技術と経験に、高精度MEMS加工技術や薄膜ピエゾテクノロジーなどを融合させたテクノロジーで、印刷速度を大幅に向上させながらも高画質な印刷を実現するほか、使用インクや印刷可能な素材の幅を大きく広げるものという。

エプソンのインクジェットプリンターにおけるPrecisionCoreマイクロTFPプリントヘッドの搭載比率は現状で2割程度。商業・産業向けプリンターや高速ラインヘッド搭載のインクジェット複合機などでは1台あたりの使用チップ数が多くなるため、今後さらに搭載比率を増加する見込み。

秋田エプソン新棟においては、PrecisionCoreマイクロTFPプリントヘッド搭載インクジェットプリンターの需要増加による製品ラインアップ強化や、プリントヘッド外販の拡販対応も視野に入れ、将来的に設備の増設スペース確保も踏まえた建屋としている。

新棟の概要

所在地

秋田県湯沢市岩崎字壇ノ上1番地

事業内容

インクジェットプリンター用ヘッドの製造および組立
(大容量インクタンク搭載プリンターおよびビジネスインクジェットプリンター用)

建築面積

3,664.80m²(鉄骨造3階建て)

延床面積

10,682.32m²

稼働

2024年1月予定

本誌:宮本義朗