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セイコーエプソン、インクジェットプリンターの「双方向印刷における印刷ムラ低減法」で全国発明表彰受賞

「文部科学大臣賞」を受賞者した角谷繁明氏(セイコーエプソン株式会社IJS事業部IJS開発戦略部)

セイコーエプソン株式会社は5月31日、公益社団法人発明協会主催の令和4年度全国発明表彰において、IJS事業部IJS開発戦略部の角谷繁明氏が「インクジェット双方向印刷における印刷ムラ低減法の発明」で文部科学大臣賞を受賞したと発表した。

全国発明表彰では、科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的として、多大な功績を挙げた発明などのほか、その優秀性から今後大きな功績を挙げることが期待される発明などを表彰している。文部科学大臣賞は、科学技術的に秀でた進歩性を有し、かつ顕著な実施効果を挙げている発明などを対象とする第1表彰区分において、恩賜発明賞、内閣総理大臣賞に次ぐ賞となる。

同社が同賞を受賞したのは、平成18年度の「プリチャージ駆動方式の液晶表示装置の発明」以来、2回目。また、全国発明表彰における同社の受賞は、令和3年の「内閣総理大臣賞」に続いて2年連続となる。

受賞にあたり角谷氏は、「この度の受賞は、当社が多くの仲間と共に、画質では妥協しないという姿勢を貫いてきた長年の苦労が認められた結果であり、インクジェットの応用範囲が広がりを見せる中、今後もあらゆる分野で高速で高画質なプリント手段を提供できるように努めてまいります」とコメントを寄せている。

なお、発明実施功績賞を、同社代表取締役社長の小川恭範氏が受賞している。発明実施功績賞は、文部科学大臣賞を含む特別賞などを受賞する該当法人の代表者に贈られるものとなる。

インクジェットプリンターの双方向印刷における印刷ムラを低減

表彰の対象となった発明は、プリントヘッドを紙面上に往復走査してドットを形成するインクジェットプリンターの双方向印刷に関するもの。

同社によると、双方向印刷は高速印刷のためには必須の技術だが、プリントヘッドの往復両走査にて形成されるドット間の位置ズレにより、印刷ムラなどの重大な画質劣化の原因となっていた。また、この位置ズレ自体は各種要因から発生するため解消は困難だったという。

今回の発明では、往走査時に形成するドットと復走査時に形成するドットの各々について、偏りがないようにドットを分散配置。ドット分布を人が認識できないブルーノイズ特性とすることで、位置ズレがあってもドットの偏りの発生を抑え、高速・高画質印刷が可能になるという。

発明の概要

同発明により、ホーム・ビジネス、写真、商業産業のさまざまな分野への高速・高画質印刷のインクジェットプリンターの提供が可能となり、印刷のデジタル化による環境負荷低減・生産性向上や、写真・ファッション・アートなど、芸術文化の醸成にも貢献する。

本発明を搭載したインクジェットプリンターの製品例
飯塚直

(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。