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キヤノン、120本の「EF400mm F2.8L IS II USM」を国際研究プロジェクトに提供

暗黒物質の性質解明など目指す、総計168本の望遠鏡アレイ

米国ニューメキシコ州に設置された「Dragonfly Telephoto Array」
Image by Pieter van Dokkum, Yale University.

キヤノンは11月19日、米国のイェール大学とカナダのトロント大学の国際研究プロジェクト「Project Dragonfly」が研究を進める望遠鏡アレイ「Dragonfly Telephoto Array」の拡張計画に、120本の交換レンズ「EF400mm F2.8L IS II USM」を提供すると発表した。

Dragonfly Telephoto Arrayは、Project Dragonflyが2013年に設計した望遠鏡アレイ(array=配列)。複数のレンズを束ねて1つの大きな望遠鏡のように活用することで、従来の望遠鏡では見つけることが困難だった大きな銀河を撮影でき、低表面輝度宇宙の研究を通じた暗黒物質の性質の解明や、分散型望遠鏡の概念の活用を目的としている。所在地は米国ニューメキシコ州のスカイズ天文台。

「Dragonfly Telephoto Array」で撮影された天体写真(月の画像は縮尺表示用)
Image by Pieter van Dokkum, Yale University.

今回新たに120本のレンズが加わることで総計168本の望遠鏡アレイとなり、焦点距離40cm、口径1.8mの屈折望遠鏡と同等の集光力を備えるという。

168本のレンズを配列した「Dragonfly Telephoto Array」の完成予想図

これまでにもDragonfly Telephoto Arrayは、2016年に超拡散銀河「Dragonfly 44」を発見し、2018年の暗黒物質がほぼ存在しない銀河「NGC1052-DF2」を特定するなど、銀河系外天文学における大きな成果を生み出しているという。

キヤノンUSAによると、拡張計画の完了は2023年夏頃の予定。キヤノンUSAが保有している120本のEF400mm F2.8L IS II USMを提供し、キヤノン株式会社がレンズを制御するための技術を提供するという。

EF400mm F2.8L IS II USMは、2011年8月に発売されたEFレンズ。現在はIII型にバトンタッチしている。発売時価格は税別125万円で、今回提供された120本分を(特に計算する意味はないが勝手に)単純計算すると1億5,000万円相当。

2015年以前の「Dragonfly Telephoto Array」
「Dragonfly Telephoto Array」を組み立てている様子
米国ニューメキシコ州に設置された「Dragonfly Telephoto Array」
Image by Pieter van Dokkum, Yale University.
米国ニューメキシコ州に設置された 「Dragonfly Telephoto Array」
Image by Pieter van Dokkum, Yale University.
本誌:鈴木誠