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CIPA、デジカメとスマホの使い分けに関するユーザー調査結果を発表

きれいな写真を撮りたいからレンズ交換式カメラをつかう

一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)は11月14日、デジタルカメラとスマートフォンの使い分けを主な視点とするユーザー調査「フォトイメージングマーケット統合調査」(株式会社BCNへの委託)の結果を発表した。

調査実施時期は、2019年7月下旬。調査は、日本国内に住む10~70代の女性・男性。また、月平均30枚以上写真を撮る人(日常的に写真を撮る人)を対象としている。

加えて、デジタルカメラユーザーに絞るのではなく、スマートフォンだけで写真を撮る人も対象とした。

サンプル数は、1,000名(本調査)、1万837名(予備調査)。

CIPAによると、デジタルカメラの出荷はこのところ減少傾向にあるが、主力カテゴリーであるレンズ交換式デジタルカメラや交換レンズに意欲的な製品の投入が相次いでいることや、主催するイベント「CP+」の来場者が増え続けていることに表われている通り、メーカーはメーカーの立場で、ユーザーはユーザーの立場で、フォトイメージングマーケットに大きな期待を持ち続けているという。

同調査では、「誰の手にもスマートフォンがある時代にあってなお求められるデジタルカメラ像を探ることを目的に、スマートフォンユーザーとデジタルカメラユーザーの実態を対比」している。

一番よく撮影に使っている機器とその機器で撮影する理由(Top5)

レンズ交換式デジタルカメラでは、「きれいに撮れる」(79.1%)でトップ。「ズームができる/レンズを換えられる」(59.7%)、「自分が思うように撮れる」(51.1%)、「自然な雰囲気の写真が撮れる」(38.1%)、「撮影の結果が確認しやすい」(29.5%)と続いた。

スマートフォンでは、「すばやく撮れる」が(67.2%)でトップ。「いつも持っている」(66.4%)、「持ち運びやすい」(56.6%)、「使いやすい」(43.1%)、「撮った写真をいつでも見られる」(41.7%)となった。

レンズ交換式デジタルカメラとスマートフォンでは、その理由(Top5)は1つとして重ならなかった。

また、「すばく撮れる」「いつも持っている」「持ち運びやすい」はスマートフォンがレンズ交換式デジタルカメラを大きく上回るが、「きれいに撮れる」ではレンズ交換式デジタルカメラがスマートフォンを大きく上回る結果になった。

このことからCIPAでは、「気軽さではスマートフォンが圧倒する一方、もっときれいに撮りたいのならレンズ交換式デジタルカメラという構図」は揺らいでいないと結論付けている。

一番よく撮影に使っている機器で撮影する理由(一眼レフ・ミラーレス比較)

レンズ交換式デジタルカメラがスマートフォンに対して後塵を拝する「すばやく撮れる」「使いやすい」「持ち運びやすい」という項目をみると、「ミラーレス」は比較的評価が高く、スマートフォンからレンズ交換式デジタルカメラへのステップアップのハードルを引き下げる役割を果たしていると考えられる。

一方、「一眼レフ」が「ミラーレス」を上回る項目も少なくなく、「自然な雰囲気の写真が撮れる」「撮った写真を加工しやすい」「人と違う写真が撮れる」で「一眼レフ」のリードが目立つ。

「一眼レフ」にも「ミラーレス」にも各社多様なラインナップがあり、低廉な機種から高付加価値・高機能・高画質な機種までが揃う。

CIPAでは、同調査で「一眼レフ」・「ミラーレス」の評価はそれらの平均値的な受け止め方をされているものの、「レンズ交換式一眼レフ」たる魅力をストレートに体現する「一眼レフ」、「レンズ交換式一眼レフ」として新たな魅力を備えた「ミラーレス」という構図になっているという。

写真を撮る理由は何ですか?

「写真を撮ることが好き・楽しい」は、スマートフォンユーザーがおよそ3割であるのに対し、レンズ交換式デジタルカメラは7割と格差が生じている。

また、レンズ交換式デジタルカメラユーザーの4割超が「写真は趣味・生きがい」と答えた。

「お出掛け・旅行が楽しくなった」「友人・仲間が増えた」「写真を始めて人生が変わった」など、ライフスタイルの転換に結び付く回答もレンズ交換式デジタルカメラユーザーならではのものとなる。

なお、「SNS で友人・知人に見てもらいたい」でスマートフォンがレンズ交換式デジタルカメラを上回る一方、「SNS で広く見知らぬ人に見てもらいたい」でレンズ交換式デジタルカメラがスマートフォンを逆転している。

写真を撮る対象(2~3回以上は撮ったことがあるもの)は何ですか?

どちらも1位は「風景・夜景」(レンズ交換式デジタルカメラ:77.7%、スマートフォン:54.9%)、2位は「国内旅行」(レンズ交換式デジタルカメラ:64.7%、スマートフォン:46.1%)となった。

スマートフォン上位にある「料理」(33.2%)と「ペット・動物」(28.3%)は、レンズ交換式デジタルカメラでもよく撮られており、必ずしもスマートフォンを特徴付ける被写体ではない。

しかし、レンズ交換式デジタルカメラで上位にランクインしている「花・植物」「スナップ」「乗り物」については、スマートフォンとの差が目立つ結果となった。

写真を撮る対象(2~3回以上は撮ったことがあるもの)は何ですか?(年代別)

5つの被写体で最高値に達したのは70代と30代。70代は、「風景・夜景」「国内旅行」「花・植物」「夫・妻・恋人・パートナー」「孫」で1位、60代にこそおよばなかったものの「海外旅行」「スナップ」で2位につけた。

街を闊歩し、植物園や山野に分け入るアクティブシニアは、「孫」で突出するばかりか「夫・妻・恋人・パートナー」で20代・30代を凌駕する。

30代は、「子ども」「料理」「オークションに出品するもの」「親・祖父母」「星・天体」で1位となった。

「子ども」の値が高いのは40代にもみられる傾向だが、50代は低下し、「ペット・動物」が上昇する。

最も若い年代となる10代では、「友人・知人」「仲間との行事」「自分自身」「学校行事」で最高値を記録。「テーマパーク・遊園地」も20代にこそおよばなかったものの2位となった。

写真を撮る対象(2~3回以上は撮ったことがあるもの)は何ですか?(男女別)

男女ともに「風景・夜景」が1位、「国内旅行」が2位になった。しかし、3位は女性が「料理」、男性が「花・植物」と結果が分かれた。

「花・植物」については、女性でも4位に位置付けおり、その比率はわずかながら男性を上回っている(男性36%、女性36.5%)。一方の「料理」は、女性(40.5%)と男性(22.8%)の差が大きい。

同様に女性で支持が多く、男性との差が大きい被写体には「子ども」「ペット・動物」「テーマパーク・遊園地」「自分自身」などがある。

また、男性の側の支持が多く女性との差が大きい被写体には、「スナップ」「乗り物」が挙げられる。

写真を撮り始めたのはいつごろからですか?(写真撮影の経験年数)

他の項目とは異なり、月間平均撮影枚数で調査対象を絞り込む前の事前調査の中の設問

写真撮影の経験年数は、最長選択肢とした「9年以上前から」が過半数(52.2%)となった。5年以上の選択肢の合算が7割を超える一方で、最短選択肢とした「撮り始めて1年未満・最近」は、わずか5.1%と最小値になっている。

CIPAでは、「写真撮影は生活の当たり前、経験値ならベテランの域に達する人が多数派という、当業界が向き合う市場の世界観」を再確認したという。

あなたが写真を撮り始めたとき、使っていた機器は何ですか?(入門機器)

全体では、「フィルムカメラ」(28.6%)での入門が最も多く、「スマートフォン」(22.5%)、「コンパクトデジタルカメラ」(22%)と続いた。

また、「スマートフォン」で写真を始めた後、「デジタルカメラ」へとステップアップした人の割合(現在デジタルカメラを所有)は3人に1人に達するという。

入門機器は、世代による違いも鮮明に出た。10代~30代はスマートフォンから入ったユーザーが最も多い。40代は「コンパクトデジタルカメラ」で、50代~70代は「フィルムカメラ」だった。

あなたが今後1年以内に購入したい機器は何ですか?(購入意向)

1位は「スマートフォン」(14.4%)、2位は「パソコン」(11.3%)、3位は「デジタルカメラ」(8.4%)で、来年国内での開催が予定されているオリンピック東京2020前年にあって、「デジタルカメラ」は「テレビ」(7.9%)を上回った。

中でも「デジタルカメラ」を年代別にみると、20代~70代が1桁だったのに対し、10代では最も高い18.6%という結果となった。

今回の調査では、スマートフォンユーザーにもっとデジタルカメラへの関心を高めてもらうためのヒントとして、「あなたは写真をどのように楽しんだり、役立てたりしていますか?とっておきを教えてください」という質問も試みている。

代表的な回答は以下の通り(抜粋引用)。

10代女性:「撮ってるだけで楽しいし、喜ばれるし、飾っておくだけで空気が変わる気がする」(一眼レフ)
10代男性:「体育祭などで撮影した写真をクラスメートに提供する」(一眼レフ)
20代女性:「撮った写真をフォトブックにして、写っている人に渡したりしている。画像をパソコンで現像するのもとても楽しい」(一眼レフ)
20代男性:「仲間内で出掛けた際に自分たちで決めたテーマに合った写真をそれぞれ撮ってあとで集まり一番を決めたりしている」(一眼レフ)
30代女性:「ペットとの思い出としてペット仲間に公開します」(コンパクト)
30代男性:「撮影それ自体が楽しみ。自分の眼にしたものをそのときの感動ごと記録保存すること、いかにそれを的確にできるか追求することが自分の趣味」(一眼レフ)
40代女性:「アルバムにクラフトパンチで作ったフレームに可愛く飾っています。家族の楽しい記録として、出産を機にカメラ、ビデオカメラを購入し撮影するようになり、今でも楽しんでいます」(ミラーレス)
40代男性:「1年間撮りためた写真をその1年の成果としてカレンダーにしている」(一眼レフ)
50代女性:「ハンドメイドの作品を記録しておいて次回以降のデザインの参考にする」(コンパクト)
50代男性:「写真コンクールに応募して、しばし、当選の夢を見る」(コンパクト)
60代女性:「夫との共通趣味」(一眼レフ)
60代男性:「友人と写真を見せ合いながら写真談義をする」(一眼レフ)
70代女性:「植物園でのお花の紹介。お花の全集を作成中。1万枚超の写真で図鑑作成中」(一眼レフ)
70代男性:「登山が趣味で自然の美しさをカメラで残すこと。山頂での日の出・日没、四季折々の自然は経験者しか味わえない」(一眼レフ)

飯塚直

(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。