山岸伸の「写真のキモチ」

第39回:毎年恒例、新春ヨドバシ記念撮影会

10年目の大台に

私は2014年よりマルチメディアAkiba店を担当。佐藤倫子さんは3年前から私と同じくマルチメディアAkiba店でそれぞれに撮影ブースを持つ、現役アシスタントの近井沙妃は3年前から上野店を担当

毎年お正月に開催される「新春ヨドバシ記念撮影会」マルチメディアAkiba店を担当して10年という1つの大台を突破された山岸さんにお話しを聞きました。(聞き手・文:近井沙妃)

2014年から、10年目

おかげさまで「新春ヨドバシ記念撮影会」を今年も無事に終えることができました。全国のヨドバシカメラのうち、20店舗で行われるこの記念撮影会。新年の記念写真をプロのカメラマンが撮影、その場でプリントし写真台紙に入れてお客様にプレゼントする企画です。

冒頭にあった告知ポスターは各店に飾ったり、各カメラマン・写真家の先生がこれを元にお客さんにアピールをします。マルチメディアAkiba店ではポップに加え、告知ポスターをキャビネサイズに印刷したものを店内各フロアに置いて案内していました。ほかにもヨドバシカメラ ザ・ポイントネットワークへの掲載や、近隣の店舗で情報がまとまったチラシなどで大々的に告知・宣伝されます。

マルチメディアAkiba店、マルチメディア錦糸町店、マルチメディア上野店の情報がまとまったチラシ

毎年大きな盛り上がりを見せるイベントですが、今年は特にすごかった。何がすごいか? 本当にお客様の列が途切れなかったこと。そして私はこの企画にカメラマンとして携わって10年目、中にはスタートから毎年通ってくれたお客様が今までの全写真を持参して見せてくれたり、「10年ですね」と声をかけてくれたり、家族が増えた方や成長していくお子さんの姿など、この10年での出会いを振り返り感動させられるシーンが沢山あったことです。

セッティングと使用機材

思い出話の前に、セッティングと機材のお話を。マルチメディアAkiba店はお客様の流れが大変多く、また私が店内の環境に少し弱いので、屋根があり広く風通しの良い第1エントランスを会場に使用させていただいています。店舗によっては本番前日の閉店後にセッティングをする方もいます。私が担当するAkiba店の会場はよくイベントに使用されるエリアですが、普段は皆さんが通ったり、お正月は初売りで並ばれたりするので当日の朝に行います。

今年は早朝7時半に伺い、いざセッティング。私の到着前に垂れ幕の設置をヨドバシカメラのスタッフの方が済ませてくれていました。アシスタントのマッハ佐藤君とOBの山口君が背景紙を吊る作業に取りかかります。

私はグリーンで佐藤倫子さんはイエロー。背景紙を何色にするかは非常に悩みます。私が敢えてクロマキーっぽい色を選んでいるのは後で何かあった時のためにグリーンが1番いいんじゃないかと思うからです。撮影直後でもPC上で背景を簡単に何色にでも変えられると思うのですが、スピード感が損なわれます。撮って出しでプリントをするというその場の臨場感、カメラマンとしての腕の見せ所はここがやはり肝になっています。

会場には使用機材リストが掲示されています。細かい機材はこのリストに載っていませんが、本当にたくさんの協力があり成り立っています。カメラは今回ソニーを使用しましたが、瞳AFと写りが抜群に良かった。マルチメディア川崎ルフロン店を担当している水谷たかひとさんも、ソニーαの瞳AFにすごく良く助けられたとSNSに書いていました。

照明機材は昨年からLEDにしています。倫子さんは大型ストロボを使用するので、お互いストロボだと発光する光が迷惑をかけたら悪いなと思い、Phottix製のLEDを4灯用意していただき撮影。本当のことを言えば1灯でも2灯でも今のカメラは素晴らしいので撮れなくはないのですが、“お祭り・にぎやか・派手に”ということを考えるとこれぐらいのセッティングは必要かなと思います。

撮影した写真をモニターでチェックしセレクト中(撮影:上田健次)

そして私の場合は、アシスタントのマッハ佐藤くんが10年サポートしてくれています。最初の頃はテザー撮影をしてPC上で写真を選んだ後にその都度SDカードを抜いてプリンターに差していました。今はテザー撮影を大型テレビモニターに映してリアルタイムで皆さんに写真を見てもらい、私が皆さんの前で写真を選んでプリント指示を出すという大胆なやり方になりました。

この流れが確立されてから一連のスピードがかなり上がり、まして10年もやるとこの撮影の良い所と悪い所がわかってきて、皆さんをお待たせする時間が短くなってきたのではと思います。特に今年は元旦・2日と天気が良くて風も無く、順番待ちのお客様のために毎年用意しているハロゲンヒーターが不要だったため、いつもより会場を広く作り、密にならないようにヨドバシさんも対応してくれました。

倫子さんの撮影風景と使用機材リスト

1,500組、初めての経験

各店舗で撮影組数と枚数がカウントされます。10年という節目で今回ヨドバシさんがカウントしてくれた撮影組数は2日間で合計1,500組。もちろん私と倫子さんの撮影数を合わせてです。このような場で短い時間の中で写真を撮るということは”完璧な写真”はなかなか望めません。お子様が泣く、目を瞑る、時に外国人の方で英語だけでは言葉が通じない場合も多くあります。

Akiba店の人の流れは外国人の方が半分と言っても過言ではなく、ましてその中でもほとんどが家族連れで今年は最大11名のご家族を一発撮り。背景紙はサベージのもので、横幅2.72mに11人となると非常に大変です。背景紙の足りない部分をデジタルで加工すればもちろん綺麗になりますが、その場でプリントをするということが1つのテーマです。約5分もない短い撮影時間の中で瞬時に様々な判断をして自分なりの最適解を出す、皆さんに不愉快な思いをさせないで写真を撮る、皆さんが喜んでその写真を持って帰れる為の努力はしています。

そして毎年多くの方を撮影させていただいて、感じること。これだけの人数の方のお顔はなかなか覚えられません。ですが2回3回、もっと回数を重ねると「あ、今年も来てくれたんだ」という方がたくさんいます。徐々に皆さんも私の事を、私も皆さんの事を覚えていくという好条件が成立し増えてきています。

ありがたいことに、お年賀や差し入れなどをたくさんいただきます。今年も2日間にわたりたくさんいただきました。これは初日にいただいた分だけです。少年がビニール袋に入ったジュースを持って来てくれたり、外国人の方が撮影後に戻ってきて感謝の言葉と差し入れをくれたこともあります。一生懸命撮影している中、皆さんのお気持ちが大変嬉しく感じます。

初日にいただいた差し入れ

皆さんと、たくさんの思い出と

許可をいただき、皆さんとの思い出を少しお話させていただきます。

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私の知り合いの農園から採れ立ての野菜を持ってきてくれる小山さん。今年はご長男が入試とのことで一緒には来られませんでしたが、ご長男が幼稚園生の頃から来ていただいています。私が「農業女子に会いたい」というテーマで写真を撮っているときに知り合った安田農園さんのご近所だということで、わざわざ野菜を買って毎年朝一番に来てくれます。日頃たくさん応援していただいていますが本当に涙が出るくらい嬉しいです。今年は愛犬とご一緒で3ショット。

実は私の撮影場所はエントランスなので犬やペットを連れてきていただいても基本的に撮影をお断りすることはございません。2,000人近くの方がそれぞれに一緒に写真に残したいアイテムや一緒に写りたいペットを連れていらっしゃいますが、やはり動物は難しいです。短い時間で目線を貰うのも大変。ストロボなら音と光でシャッターを押しているタイミングが伝わりますが、LEDだと音も鳴らずに静かでその感覚が無く、多く枚数を撮ることになり目瞑りの写真も増えます。加えてLED独特の眩しさ。LEDとはいえ、これだけの明るさを出すと相当眩しいと思います。その眩しさの中でペットを交えての複数人や複数のペットなどを撮影するのはとても苦労します。大きい声を出したり、音の出るおもちゃを使用して必死に撮らせていただいています。

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毎年来てくれる凸版印刷写真部のOB、太田さん。30年以上前に私が写真を始めた頃、憧れの写真家の方でした。いつも奥様と愛犬を抱いてきてくれます。ただこの2匹は異常に仲が悪く、目線を合わせると吠えたりするらしいです。私なりに愛犬をメインに、なんとか、なんとか押さえることができました。撮影は立ちポーズばかりとはいかないので、私のスタジオから持ち込んでいる白いソファに座っていただくこともありました。

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ケンコー・トキナーの田原さん。今回SLIKの三脚をお借りしました。偶然倫子さんもSLIKの三脚です。朝、使用している三脚の調子を見に会場に顔を出してくれました。本当はメーカーの方を掲載させていただくのは控えようかと思ったのですが、田原さんのこの笑顔、自然でとても良いです。彼はYouTubeをしていたり、SNSでの露出も多い方なので皆さんがお顔を拝見する機会も多いかと思いますが、なぜかこの力の抜けた笑顔がとても気に入って1点使用させていただきました。

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数年前はおひとりで来ていた小髙さん。カメラを持ってジャンプをしたり結構面白い記念写真を撮っていたのですが、いつの間にか恋人ができ、結婚なさって今は奥様と2人です。プライベートで知り合いましたが小髙さんはテレビ局で報道カメラマンをされていて、一度私の特集を作ってもらったという恩人のような方です。

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このイベントへの参加は9年目だそうです。鈴木さんは大手建設会社のOLさん。彼女、写真は決して上手くありませんが社内で写真クラブを作り、私が顧問をさせていただいています。大きい会社はいいですね、たくさんの私のお友達と知り合いになり本当によくしてくれています。この2日間は最初から最後まで会場で私のそばにいてサポートをし、たくさんの友人などを会場に呼んでくれてその対応もしていました。お隣の白い帽子の方は妹さんです。姉妹でこうして私のカメラの前に立つことも中々ないのでいい記念になると思います。笑顔がとても素敵です。

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中央は元某化粧品会社の社長をされていた末広さん、左はカラーセラピストの川邉さん、右は笑顔表情筋プランナーの北野さん。本当にこの3名の方は私を応援してくださり、お正月にはこのイベント参加後にヨドバシカメラのレストラン街で食事をするのが恒例になっているとのこと。とても明るく、とても素晴らしい方々です。

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右から写真が大好きな後藤さん、中央は新井さん、左は栗村さん。楽しい3人です。いつも何かがあれば必ず来てくれる3人です。ありがとうございます。私は昨年からお正月を感じる小道具として和凧や羽子板などを用意しています。パッと明るくおめでたい記念写真に。

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おひとり様の皆さんです。

(左)上田さんはこのイベントで私が撮影している姿を毎年撮りに来てくれて、素敵な写真をプレゼントしてくれます。笑顔も素敵ですが、彼の撮る優しい私の写真は超お気に入りです。上田さんありがとうございます。

(中央)前田さんはヨドバシカメラ撮影会のフォトコンテストで社長賞、特賞、審査員賞を取るほどの腕前を持つアマチュアカメラマンです。今は何故かニコンのカメラを買いユーチューバーになりつつ動画を一生懸命撮られています。また、遊びに来てください。

(右)山﨑さん。着物に負けているとご本人は言いますが、そんなことはございません。この撮影のために着物を着て来てくれているということに感動です。いつも私の大好きな甘いものを差し入れてくれます。これからもよろしくお願いいたします。

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舞台写真を多く撮られていて日本写真家協会(JPS)、日本舞台写真家協会(JSPS)の会員である写真家のヒダキトモコさん。とても素敵なお母様と来てくれました。元旦からありがたいです。今年も頑張って良い写真を撮りましょうね。

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田部ちゃんはいつも私が写真展を開催するときは会場に来てくれて、動画で記録を撮ってくれたり、”田部ちゃん撮り”という独特の撮影方法で面白い記念写真を撮ってくれます。今年は坊主でしたね、何か失敗でもして頭を丸めたのかと思いましたが心機一転とのこと。田部ちゃんと奥様の笑顔通り、お嬢さんも可愛らしくて良い笑顔ですね。誕生日でチェキを買ってもらったと言って会場でもバシバシ撮っていました。田部ちゃん、チェキのフィルムは高いよね(笑)。

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ローズ麻生育子さんは私が審査をしたミスコンに出場されてシニア部門で優勝された方です。とても素敵な60代、こんなに素敵な60代がこの世にたくさんいたら私はどんなに写真を撮ることができるでしょうか。またシニアグループで一緒に何かできたらいいなと思っております。

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隣の撮影ブースにいる倫子さんを呼び、皆で記念写真。左から今絶好調の日本広告写真家協会(APA)副会長の善本喜一郎さん。私のアシスタントは年末のテレビ番組で善本さんを観たというくらい、写真集「東京タイムスリップ1984⇔2021」が大ヒット。善本さんがこの本を出版する前に「この本は絶対に売れるよ」と私は一言。善本さんはご飯をフルコースでご馳走してくれるそうです。嬉しい。知人がこうして出版不況の中で大ヒットを飛ばすということでまだまだ写真に希望が見えます。善本さん、これからも良き写真の道を作ってください。

隣は妻の佐藤倫子さんです。大きい声を出して撮影をしているので疲れていますよね(笑)。そして中央は私。そのお隣はAPA専務の長嶋正光さんです。善本さんと仲が良さそうで嬉しいです。お忙しい中ありがとうございます。そしてトンボちゃんことOMDSの田中博さん、今年は1月から写真展をされていてトンボを撮ったら日本一。また今年もよろしくお願いいたします。

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この会場にはあまり似つかわしくないお2人です。私が所属している日本写真家協会 会長の野町和嘉さん、そして奥様の榎並悦子さん。榎並さんとは何十年もの付き合いです。ヨドバシカメラのモデル撮影会や舞子撮影会ではご一緒して楽しくご飯を食べたり写真を撮らせていただいています。野町会長とは写真展でお会いしてご挨拶をする程度しかお話しをする機会がありませんが、お正月にお2人でお越しいただき私は感動してシャッターを切るのも震えました。会長・榎並さん、ありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

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20年前に3年間私のアシスタントをしてくれたOGの伊月です。今は結婚してこんなに可愛いお子さんもいて、20年ぶりに会いました。彼女は私のアシスタントを辞めてから結婚して長野の方でカメラマンや上絵付け作家などをしています。思い出は語り切れないほどたくさんあります。女子としては4人目くらいのアシスタントで、力があり、面白い子でした。とても楽しく海外ロケに行ったり、泣いたり笑ったり一緒に頑張った助手です。この日は昔ハワイロケ中に私が買ったというバッグを下げてきてくれました。嬉しいね。

本人はこの写真を撮られながら泣いていたと言っていましたが、私も撮りながら泣いていました。伊月だけではなくOGの鈴木さや香も旦那さん・息子さんと差し入れを持って来てくれました。寒いのに遠い所ありがとう。写真を出したいのですが、今回は言葉だけで。ありがとう、すーちゃんと言わせてもらいます。こうやって子供が生まれても写真を撮っているOG達を見ると本当に嬉しいです。

さて、今回は皆さんの写真を使わせていただいて思い出をお話ししましたが、もちろん皆さんとヨドバシカメラさんから許可を取っています。取っていないのは嫁の佐藤倫子さんぐらいです(笑)。

こうやってお正月に記念写真を撮れたということを記事にするのはとても勇気がいりますが、今回は10年という節目と、アシスタントOGが大きくなったお子さんを連れてきてくれたり、たくさん思い出を振り返らせてくれるお客様たちがいて、そしてAPAやJPSの副会長や会長もいらしていただいて、私はカメラマンとして携わっていている身ですが、少しずつヨドバシカメラさんのこの撮影会に対する想いが徐々に浸透してこうして写真界の中にも伝わっているんだなあという自負があります。

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倫子さんの撮影ブースにて、今回お世話になったヨドバシカメラのスタッフの皆さん、アシスタントのマッハ佐藤君、OBの山口君、皆さん本当にありがとうございました。店長さん、副店長さんなどここに載っていない方もいらっしゃいますが、これだけの人が私たちを支えてくれています。ありがとうございます。

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最後に、本当にいろいろなことを仕掛けてくれて写真界やカメラマンを応援してくれるヨドバシカメラの日野専務。これは上田さんが横から撮ってくれたものです。とてもいい笑顔です。ありがとうございました。

2日間で1,500組、約2,000名の記念写真を撮らせていただきました。本当にたくさんの人に支えられて今年も無事に終わることができました。さあ、今年も頑張るぞ。

(やまぎし しん) タレント、アイドル、俳優、女優などのポートレート撮影を中心に活躍。出版された写真集は400冊を超える。ここ10年ほどは、ばんえい競馬、賀茂別雷神社(上賀茂神社)、球体関節人形などにも撮影対象を広げる。企業人、政治家、スポーツ選手などを捉えた『瞬間の顔』シリーズでは、15年をかけて総撮影人数1,000人を達成。また、近年は台湾の龍山寺や台湾賓館などを継続的に撮影している。公益社団法人日本写真家協会会員、公益社団法人日本広告写真家協会会員。