山岸伸の「写真のキモチ」
第33回:写真と⾳楽のコラボレーション
「瞳 写×⾳」コンサート
2022年10月31日 13:00
2019年7⽉に渋⾕Hakuju Hallで開催された、写真と⾳楽のコラボレーション『瞳 写真×⾳』。⼭岸さんがチェリストの新倉瞳さんを被写体に撮った作品を背景に、新倉さんが⾳楽を奏でる、初めての試みでした。異⾊のコンサートはどんな始まりだったのでしょうか。(聞き手・文:rinco)
最初のコンサート「神と⾳と写」
はじまりは、とても素晴らしいホールをもっている会社の原浩之社⻑(株式会社 ⽩寿⽣科学研究所)と、あるインターネット放送の番組で知り合った時のことでした。そのときに、僕が「Hakuju Hallでこんなコンサートを開催したい!」と話したんです。それは写真と⾳楽のコラボレーションコンサート。そう話したら原社⻑が「ぜひ! やりましょう!」と⾔ってくれたのがきっかけです。
その後、サクソフォン奏者の平野公崇さんを紹介していただきました。この企画を実際にコンサートで演奏すると、サクソフォンだけでは難しいこともあり、ピアニストの⼭⽥武彦さんとのコンサートとなりました。
舞台上にプロジェクターで僕の代表作、上賀茂神社を中⼼に写真を投影しながら観せて、その写真からイメージした⾳を平野さんが、即興で演奏して聴かせるコンサートでした。「神様」を写すというテーマもあり、タイトルは「神と⾳と写」となりました。当⽇は上賀茂神社の宮司様もお越しいただき、⼤成功に終わったんです。
チェリスト 新倉瞳さん
その第2弾として企画されたのが、「瞳 写真×⾳」です。国際的に活躍しているチェリストの新倉瞳さんを被写体にお願いしました。新倉さんはとても⼈気の⾳楽家でしたし、モデルとしても美しく、ぜひ撮影したいと思っていました。
前回と同じHakuju Hallで開催することになり、演奏にはアコーディオニストの佐藤芳明さんも参加して、新倉さんと⼀緒にセッションすることになったのです。また、撮影では僕が新倉さんをメインに撮影し、その僕と新倉さんとの撮影場⾯の空気感やアコーディオニストの佐藤芳明さんを、佐藤倫⼦さんが撮るという4⼈でのコラボレーション企画となりました。
撮影は⼤々的にやろうと始まりました。最初は新倉さんが住んでいるスイスでの撮影を企画していたのですが、⾊々あって、⽇本でのロケになりました。今考えてみたら、これだけ贅沢に様々な場所に⾏ってひとりの⽅を撮影したのは、はじめてじゃないかな。撮影には1年をかけました。
⼗勝帯広、茨城のスタジオ、都内某所、僕のスタジオ、それとおやまゆうえんハーヴェストウォークとロケーションを変えての撮影です。
⼗勝帯広は撮るところも多いですし、協⼒してくださる⽅もいるので、最初に向かいました。このフライヤーも帯広にある真鍋庭園で撮影したものです。
彼⼥のチェロはとても素晴らしく、そしてとても有名な楽器でしたので、その楽器のことを何より考えなければならなかった。湿気や気温など環境で変化しますし、楽器が⼀番いい⾳がする状況でなければならない。そういう場所でないと、という彼⼥の思いもあり、きちんとしたところを借りてのロケを考えました。
たった1回のコンサート
発表するのに、非常に多くの作品を作らなければならなかった。もちろん、中途半端な写真を⾒せることはできなかったですし、思いっきり撮影しました。結果、このコンサートで倫⼦さんと2⼈で148カットを発表しました。
舞台の⼤画⾯に、2⼈の撮り下ろし写真をスライドショーで投影し、その前で新倉さんと佐藤さんが演奏する。チェロとアコーディオンと写真のコラボレーションです。
この時の勢い、というか……今振り返っても、すごいことをしたと思います。300⼈⼊るコンサートホールは満員で、たくさんの⽅が来てくれた。この4⼈で埋めたのですから、本当、凄かったと思う。
1時間のコンサートでしたが、豪華絢爛という⾔葉が似合うくらいでした。司会進⾏は、フリーアナウンサーの柴⽥玲さんにお願いしました。このとき、彼⼥とも久しぶりに会えてね、嬉しかったです。
本当は定期的にやりたいくらいなんです。例えば、半年に1回とか……。そういう考えもあり、僕はクラッシック⾳楽にどんどん魅了されて、今に繋がっているんです。でももう少し、早い動きができたらいいなって思います。例えば、クラッシックのコンサートで僕の写真を使ってもらう企画ができたらね。
それに300⼈のホールはとてもいい具合だと思うんです。たった1回のコンサートで終わらせるにはもったいなかったと思いました。でも、また新しい試みを新しいカメラで挑戦したいと考えてます。