フォトコン生活のすすめ

第2回 応募作品を選ぶ

フォトコンテストに応募したいデジカメ Watch読者を応援するこの企画。フォトコテンストの魅力を解説した第1回に続き、今回は「写真のセレクト」について岡嶋さんに解説してもらいました。セレクトは応募の第一歩。その考え方やテクニックを一緒に学びましょう。(編集部)

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セレクトこそ応募の第一歩

筆者の岡嶋和幸さん。「デジタルカメラマガジン」をはじめ、多数のフォトコンテストの選者を担当している。

今回はフォトコンテストに応募する写真のセレクトについて解説します。

フォトコンテストに入賞できるかどうかはセレクトで決まると言っても過言ではありません。応募された写真だけが審査の対象となるため、撮影と同じくらい、いやそれ以上にセレクトは重要だと考えます。入賞する可能性がある写真が撮れていても、それを自分で選んで応募しなければ結果にはつながらないのです。

応募するからには入賞を狙うのは当然です。でも、自分なりに上手に撮れた、あるいはきれいに撮れた写真を選んでも入選するかどうかは分かりません。それを判断するのは審査員だからです。もしかしたら選んだ写真の前後の写真の方が魅力的に感じられるかもしれないのです。ここがフォトコンテストの難しさでもあり、面白さでもあります。

それだったら、撮った写真を全部応募して審査員に選んでもらうのが一番確実でしょう。でも実際にはそうもいきません。プリントでの応募の場合は、印刷や郵送のコストもそのぶんかかってしまいますし、応募できる作品数の上限が決められている場合もあるからです。

フォトジェニックな被写体やシーンに出合ったとき、構図を変えるなど何枚も撮ることがあると思います。その中のどの1枚を選ぶのかはとても重要です。パッと目に飛び込んでくる写真、「おっ!」と思わず声を上げてしまうような写真など、できるだけ客観的な視点して選ぶといいでしょう。募集テーマがある場合には、それに一番合った写真ということになります。

フォトコンテストはどの写真を選んで応募するのか、その目利きが試されていると言ってもいいでしょう。

例えば雑誌の月例フォトンテストでは毎月応募作品を見続けるので、「この人はもっと良い写真を撮っているはず。それらをセレクトで外してしまっている」などといったことが分かってきます。撮影力や表現力は優れているのに、応募された作品は私が見てみたい写真とは少しずれていたりするのです。

でもそれを伝えることも、代わりに選んであげることもできません。何かをきっかけに選び方を変えるなど、セレクト力を向上してもらうしか入賞への道は開けてこないのです。

入賞作品には選んだり評価した理由が書かれた「選評」が、多くのフォトコンテストで入賞作品と一緒に公開されています。

でも当然ですが、落選した作品には何のコメントも付けられません。どこが良くなかったのか、どこを改善すれば入賞に近づくことができるのかなど、次につながる何かをアドバイスしてほしいと願うはずです。

とはいえ、入賞作品の選評にもそのヒントが隠されています。どのような驚きや発見、感動があったのかなど、審査員の興味を知ることができます。構図など入賞作品の画作りを研究するのもいいのですが、選評や総評などの文字情報から、どのような作品を応募すれば良いのか読み取ることも効果的といえます。

例えばデジタルカメラマガジンのフォトコンテストは、GANREFでも入賞作品を見ることができます。そこには「選評」も一緒に掲載されているのですが、それとは別に「アドバイス」という項目もあって、こちらは誌面でしか読むことができません。「今月のひとこと」という総評もあり、実はそれらに入賞につながるさまざまなヒントが隠されているのです。

デジタルカメラマガジンの入賞結果ページ
デジタルカメラマガジン2020年6月号よりデジタルフォト部門の入賞結果ページ。講評に加え、こうすればもっと良くなるといった選者からのアドバイスが掲載されています。選者は大和田良さん。
GANREFでも同じ入賞作品を紹介
GANREFでも入賞作品と講評を見ることはできますが、デジタルカメラマガジンに掲載されている選者からのアドバイスが省略されてます。

“消去法”では良い作品が選べない

写真をセレクトする際、多くの人が画像データをパソコン画面で原寸表示して、ブレやボケが生じているカットをまず最初に外す傾向のようです。

でもフォトコンテストの応募作品の場合、画像の一部分ではなく、まずは全体を見て写真を判断しましょう。

もちろんブレやボケが気になる場合はマイナス評価となりますが、オリジナルの画像サイズの原寸表示でそれらがほんの少し確認できても、応募サイズでは全く気にならないことがほとんどです。

魅力的な写真なのに、画面の一部分だけで判断してセレクトから外してしまうのはすごくもったいないです。実はこのような消去法でのセレクトで、入賞する可能性のある写真が外されているケースがあるのです。ブレやボケの確認は後回しにしてセレクトを行い、もし応募サイズでブレやボケが気になるようであれば、前後の写真に変更するといいでしょう。

ブレやボケはデジタルカメラの多画素化などにより目立ちやすい傾向です。でもその度合いがわずかであれば、パソコン画面で画像全体を表示したり、プリントしたときに気にならないケースがほとんどです。それなのにせっかくの魅力的な作品をセレクトから外してしまうのはもったいないです。そもそもいきなり原寸表示でブレやボケを確認すると、画面全体の印象で写真の良さに気づかないままセレクトから外している可能性もあります。

露出の失敗は不自然になりがち

応募作品のセレクトの際、ブレやボケよりも注意したいのが露出です。RAW現像やフォトレタッチで大幅に改善しないと応募できないような失敗写真は、思い切ってセレクトから外した方がいいでしょう。

シャッターチャンスを捉えたお気に入りの写真は、露出アンダーや露出オーバーでも何とか救済して応募したいものです。でも、きちんと撮れた写真とは違ってどこか不自然な感じがするなど、そのような応募作品に対する審査員の目は厳しいです。後から容易に手を加えられるデジタル写真は、そのあたりの認識が甘くなりがちです。過度な画像処理で入賞のチャンスを逃しているケースも少なくありません。フォトコンテストでの画像処理の考え方については、次回もう少し詳しく解説します。

クオリティーの高い作品を見慣れている審査員には、撮影での失敗を誤魔化しても簡単に見破られてしまいます。ハイライトの白飛びを無理矢理なくそうとしたり(左)、シャドウを明るく持ち上げすぎたり(右)など、画像処理による不自然さには特に敏感です。失敗写真は勇気を持ってセレクトから外すことで、その後の撮影で同じミスを繰り返さないようになるでしょう。そのようにしてレベルアップを図ることで、入賞に一歩近づくことができます。

フォトコンテストに応募するのは、力作や自信作を評価してほしいと願うケースが多いと思います。

でも既視感のある写真は難易度が高くなる傾向です。どんなに技術レベルの高い写真であっても、入賞できるとは限らないのがフォトコンテストの難しさでもあります。

入賞作品に類似した写真が次の募集でたくさん見られることがあります。「その手があったか。じゃあ私も」という感じなのかもしれませんが、実は逆効果です。「先を越されてしまった。じゃあこれはどうだ」くらいの意識で選んだほうがちょうどいいでしょう。もちろんフォトコンテストの方向性や審査員などによって違ってくると思います。

パソコン画面はスペースに限りがあるためセレクトが行いづらいです。複数の写真を並べて比較するとき、数が多くなるほど表示が小さくなって見づらくなります。目が疲れやすく、長時間集中して見ていられないため適当な判断を下しやすいです。その点、プリントはテーブルにたくさん広げて見比べたり、気になる写真を手に取って細部を確認できるなどセレクトに向いています。この手軽さ、快適さこそが写真を選ぶ作業でとても重要なのです。目が疲れにくく、長時間集中して作業を続けられます。

細部をじっくり比較するのではなく、瞬間的に目に飛び込んでくるものを直感で選んでいくと良いでしょう。撮影者は自分が体験した時間や現場の様子など、さまざまな情報を持っています。それらを通して写真を見るため、客観的な判断が下しづらいです。審査員は情報を一切持っていないので、写真だけを見て判断することになります。自分だけが知っている情報をできるだけ排除して選ぶことも必要です。

訴求力のある写真は、インデックスプリントの小さなサムネイルでも瞬時に目に飛び込んできます。サムネイルで見ていまひとつ魅力が感じられない写真は、大きくプリントしてもその印象が変わることはありません。

組写真はセレクトや構成の仕方で作品の表現力が大きく変わります。その組み合わせは無限なので、まずは作品のテーマやコンセプトを決めて、それに合うように選んだりまとめたりするといいでしょう。

経験がない人は「組写真は難しい」というイメージを持たれているようですが、経験がある人は「単写真のほうが難しい」と口を揃えて言います。単写真以上に撮り方より選び方がポイントとなるため、入賞作品を研究したり、選評をヒントにまずは挑戦してみるといいでしょう。単写真とは違った組写真の面白さに気づくことができれば、思ったよりも早く入賞のチャンスが訪れるかもしれません。

今回紹介した内容は、書籍「写真総合」や「写真力アップのための新トレーニング」でも詳しく解説しています。よろしければぜひ参考にしてみてください。

岡嶋和幸

1967年、福岡県生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「ディングル」(SBクリエイティブ)、「風と土」(インプレス)など、著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」(富士フイルムフォトサロン)、「潮彩」(ペンタックスフォーラム)、「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」(キヤノンギャラリー)、「九十九里」(エプソンイメージングギャラリー エプサイト)、「風と土」(ソニーイメージングギャラリー)などがある。