写真家の引き出し

冬場のポートレート撮影を成功に導く名脇役

ベンチコート&もふもふガウン(河野英喜)

スナップや風景、ポートレート、スポーツ、鉄道、航空機など各分野で活躍されている写真家に普段の撮影で活躍しているアイテムや便利グッズをご紹介いただきました。写真家たちは撮影機材のほかにどのようなアイテムを駆使して撮影を進めているのでしょうか。便利ポイントや具体的な活用方法も教えていただきました。(編集部)

愛用品

今回はベンチコートとマイクロファイバー素材のガウンを愛用品としてご紹介します。もちろん僕が実際に使用するのではなく、モデルの防寒用途で使用するためのものです。この2品の組み合わせで威力を発揮するので、これからの季節、屋外でのポートレート撮影を計画されている方の参考にしてもらえればと思います。

愛用している理由

さて、ご存知のように僕の撮影ではモデルの85%以上が女性タレントやモデルです。女性のほとんどが寒さを苦手としていて、中には冷え症と自覚している人も多くいます。ですから大げさではなく、概ね9月中旬から5月いっぱいまでは防寒用の外着が必須。僕は9月になったら常に車に積みこむようにしています。

ちなみに、このベンチコートとガウンはセットで着用することが前提となります。外側のベンチコートは、あえてやや薄手のものをチョイス。ジャンバーのようなシャカシャカした素材ではなく、洋服感覚で肌馴染みの良い素材を選びました。また、中に重ねるガウンはタオル地のものでなくマイクロファイバー製に。冬などの寒い時期に着用することもありますから肌にあたった瞬間に冷たさを感じないように、と考えた組み合わせです。

マイクロファイバー素材という呼称に馴染みがなければ、「着る毛布」とか聞いたことはありませんか? ふんわりした風合いで肌あたりがソフトなので“冷たさ”とは無縁。ベンチコートの下に着込むことで冷たさを直接感じないですむというわけです。

ベンチコートのポイントは、今述べた通りやや薄手でシャカシャカしていない素材であることです。素材の特性上、触れた際に冷たく感じにくいのと、やや薄手にしていることで重ね着の際にも重量を感じにくいこと、また動きやすさも考慮しています。

今回選んだベンチコートはポリエステル系の素材ですから保温効果が下がります。それを補うためにマイクロファイバー製のガウンを加えている、というワケですね。

便利ポイント

選択のポイントは実際に着用するモデルの立場を考えて選ぶこと。また、金額的にも高価でないところも重要です。さらに、様々なタレント・モデルさんが着用することになりますから、丸洗いできることも必須条件です。常に清潔な状態で、かつ気負わずに気持ちよく使ってもらいたいですからね。

今回のチョイスではどちらも丸洗い出来ることを重視しています。ジャンジャン洗って、古びてきたら気兼ねなく新しいものに買い替えられる価格帯を意識しているところもポイント。

高価なものであるよりも、気持ちよく着てもらえるよう清潔さとキレイな状態を保つことが重要です。どうしても付け外しの多い保温着は傷みも激しく、外での使用も多いので高価で古く感じさせるものより、2〜3シーズンで新しいものに買い替えていった方が着る側の気分も良いはずだと思っています。

ベンチコートをポリエステル素材の薄手のものにすると、それ自体が軽量ですから膝下まで覆うタイプでもそこまで重くありません。モデル側にとって重さで動きづらかったり疲れてしまっては元も子もありませんし、電車移動など車なしでロケをする場合でも、ちょっと荷物に加えるだけで持ち運べます。

ポートレートはモデルの表情や仕草が肝。寒さで表情が曇ったり、動きが硬くなってしまってはお互いにテンションが下がってしまいます。そうならないためにも、モデルへの配慮のひとつとして参考にしてもらえればと思います。

河野英喜

こうのひでき:島根県浜田市出身。中学の頃に友人の持つカメラに強く惹かれカメラを手にして独自にポートレートを習得する。人物撮影のジャンルでは媒体を問わず幅広く活躍している。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。

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