中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
また訪ねたい海外の思い出「ジョイテツ! in the World」vol.05 タイ編(その1)
2021年5月10日 07:00
緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発出され、まだまだ新型コロナウイルスとの戦いは続きそうですね。どこにも行けないこんなときは、収束後に行きたい場所をチェックして、旅への気持ちをためこんでおきましょう! もちろん、マスク・手洗いなどの感染対策は忘れずに、頑張って乗り越えましょう。今回からは一緒にタイを旅します。ご紹介するのは、メークロン市場です。
軽トラでドナドナされて到着したのが、このメークロン市場です。アジアの熱気がムンムンと感じられる、エネルギッシュな市場ですが、え?なんで鉄道写真家がわざわざ市場に行くのかって? 次の写真をよ〜くご覧ください。
市場の床の部分をよ〜く見てみると、そう、鉄道の線路があるのです。このメークロン市場は、線路の上に市場が立つことで世界的に有名で、タイを代表する観光地のひとつになっているんです。
線路脇には、所狭しと商品が並べられています。アジアの市場に行くと「こんなに同じような店が並んでいて、よく商売になるなぁ?」と不思議に思いますが、おばちゃんに聞くとそれぞれの店に常連さんがついていて、ちゃんと商売として成り立つとか。ちなみにこの日はテレビロケだったので、お約束のゲテモノ食いシーンで、揚げ芋虫を食べることに。見た目はかなりグロいのですが、食べてみると外はカラッとしているのに中はトロッとしていて……最悪でした。
ブラブラと撮影していたら、なんかみんながソワソワしはじめました。よく見るといつのまにか奥の屋台がなくなっているではあ〜りませんかっ!
するとおばちゃんたちは慌てる様子もなく、日除けテントを畳んでいきます。商品棚もスライド式に工夫している店舗もあり、あっというまに線路が丸見えになりました。耳を澄ますと、各国の言語で列車が近づくアナウンスが。「列車がくるので下がってください」という感じのカタコトの日本語でも放送されてビックリ! それだけ、この市場のドタバタ劇がイベント化されており、ここを目当てに世界中からたくさんの観光客が訪れるのです。
そして屋台の屋根が畳まれた瞬間、列車が近づいてきました。線路ギリギリの低い位置に置かれた魚はそのまま(笑)。列車の高さを熟知しているおばちゃんスゲー! そして周囲にブレーキの鉄粉をふりかけながら、列車は躊躇なく通過していきます。
ちなみに車内から見るとこんな感じ。車内から夕飯の買い物のロケハンができそう(笑)。
観光のおばちゃんもノリノリです。ちなみにこの写真は車内から手を伸ばして撮影したのではなく、車外からフツーに撮影しています。まさにすべてがギリギリ、綱渡りの運行ですが、不思議とほとんど事故はないそうです。
そうして列車が通り過ぎると、何事もなかったかのように、もとの市場に戻ります。その手際の良さたるもの、見ていて気持ちいいほど。
望遠レンズで圧縮効果を活かして撮影すると、こんな大迫力な感じになります。観光客たちは、列車が近づいてもお構いなしのやりたい放題。ふだんから鉄道を撮影している僕たちのほうがオロオロしてしまいますが、何かとマナーで束縛しあう日本の社会を思い出して、なぜか「自己責任って素敵だな」と思っちゃいました。
ビルの管理人のおじさんに頼んで、ビルの上に登らせてもらって撮影。真上から見ると、モーゼの十戒で割れた海のように、屋台が割れて列車が近づいてきます。2枚目の奥に見えるのが終点のメークロン市場駅。メークローン川に付き当たったところで、線路も途切れています。
それにしても、これだけの有名観光地になりながらも、スれていないのがこの市場の魅力です。台湾の十分などもそうですが、こういう市場は観光地化するとみんな日常品の販売をやめてお土産物屋さんに変わってしまいますが、このメークロン市場は、昔と変わらず日常的に使う食材が中心です。いつまでもこのまま、変わらないでほしいなぁと強く思いました。次回は有名な「戦場にかける橋」を訪ねます。