中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
また訪ねたい海外の思い出「ジョイテツ! in the World」vol.04 イタリア編(その2)
2021年4月10日 07:00
前回に引き続き、今回もイタリアの鉄道がテーマ。ただし被写体はオシャレな新幹線とはまったく雰囲気の違う超ローカル線です。イタリアを代表するリゾート島として有名なサルディーニャ島をひっそりと走るサルディーニャ鉄道をご紹介しましょう。
僕がこの鉄道を訪ねたいと思ったきっかけは、昔ながらのかわいいディーゼルカーと、学生を運ぶ旧型客車が健在だというウワサを聞いたから。さっそく現地のコーディネーターに調べてもらったところ、どちらもすでに廃車になったよ!というツレナイ返事。でも最近撮ったであろう写真がSNSにアップされていたので、イチかバチかで現地に向かいました。
結果としては冒頭の写真の通り、フツーに走ってきました(笑)。美瑛の丘の風景がどこまでも続くような絶景のなか、憧れのADe300型気動車が走ってきたときは、本当に感動しました。
夏のサルディーニャ島は、ほとんど雨が降らない晴天が続くそうですが、緑が多い2月はけっこう雨が降ります。どうしても手前の緑を前ぼけにしたかったので、天気雨のなか地べたに寝そべって撮影! サルディーニャ島は天気がいいと聞いていたので、ポンチョなどの雨具を持ってこなかったので、ビチョビチョになってしまいましたが、満足そうな表情でしょ(笑)。
今回訪ねたのは、古い車輌が活躍するサルディーニャ鉄道の南部の路線。サルディーニャ島最大の都市であるカリアリからイジーリに至る71kmの区間です。途中のモンセラート サン・ゴッタルド駅からイジーリ駅までが、絶景の非電化区間になります。
カリアリの中心部からモンセラート サン・ゴッタルド駅までは新型のトラムで運行されています。その先がいきなりボロい気動車が走る超ローカル線になりますが、おそるおそる駅に行くと、なんと憧れのADe300型がフツーに停まっていました。ぜんぜん廃車になってないじゃん! 頼むよ、イタリアのコーディネーター(怒)。まぁ嬉しい誤算ですが。
それにしても憧れの気動車はボロボロで、落書きだらけでちょっとビックリ。車庫のおじさんに聞くと、「若い連中が描いちゃうんだ。でも意外にキレイだろ?」なんて気にしていない様子でした。まぁ走っているだけで奇跡だと思いましょう。
そしてここで、さらに朗報が! コーディネーターが廃止されたと豪語していた旧型客車による通学列車が、明日の朝走るとのこと! それにしてもイタリアのコーディネーター、ホントいいかげんだなぁ。
ADe300が夜に走るということなので、頑張って夜まで撮影。奥に市街地がある場所を選んで、列車が街灯りにシルエットになるように構図を調整しました。夜の風を切って走る古い気動車はとても健気で、思わず「頑張れっ!」と言いたくなりました。
アップで撮ろうか悩みましたが、夜空を入れて空気感と旅情を強調しています。
翌朝は晴れ。ワクワクで学生列車を待ちます。情報は聞いていても、本当に走るか不安だったのですが、ホントに走ってきました。50年以上前の旧型客車を、日本の機関車と雰囲気が近いディーゼル機関車が牽引してきたのが見えたときは、体が震えました。気動車も客車もそうですが、こういう車両は、人知れず廃車になってしまいます。特に最近のヨーロッパのローカル線は、路面電車タイプの低床気動車への置き換えがどんどん進んでおり、過去のネット情報などをもとに訪ねてみたら、すでに廃車になっていたなんてことがけっこうあります。それだけに、こんな車輌が走っているなんて、それこそ奇跡なんです。
憧れの列車の入線を張り切って撮ろうと思ったら、なんとグラサンの兄ちゃんが突然乱入してきてチャラいポーズ。慌ててピントを合わすこともできず、中途半端な写真になっちゃいました(笑)。まぁ、ラテン系の明るさが出てるからいいか。
僕は勝手に想像してたんです。学生さんが乗るとはいえ、ガラガラの車内に何人か学生さんが乗っているだけだろうと。でも実際に乗り込んでドアをガラッと開けた瞬間、この風景が目に飛び込んできて、かなり動揺しました。強面の兄ちゃんがギロっと睨みつける、これ以上ないほどアウェーな雰囲気。ぜんぜん高校生に見えない…(震)。でもここで目をそらしてしまうと、それで終わりです。ここは勇気を持ってカタコトの英語で大声で叫びます。「僕はこの列車を撮りにきた日本人です。みんなを撮らせてっ!」そして思い切っていつもの変顔を、えいっ!
するとどうでしょう! みんな笑顔になってくれました。変顔は世界共通ですね!(違う)。でもこれをきっかけに、車内の雰囲気は、一気にフレンドリーに変化します。
怖そうな顔をしていても、みんなまだ高校生。しかもかなり田舎の学生さんなんです。撮影がはじまると、みんな素朴で素敵な笑顔を見せてくれました。というか、東洋人が来るのがめずらしいのか、みんな見も知らぬ僕と「一緒にセルフィーを撮ろう!」と言ってきて、こっちが撮るつもりが、逆に撮られるハメに。
いましたよね〜。どこのクラスにも、こういうお調子モノ。周りの茶化しかたなんかも、ホント日本とおんなじ。世界って違うようで、同じなんだなぁと、ちょっと安心。
高校生とはとても思えない美人さんがいたので、撮らせてもらうことに。最初は笑顔だったのですが、急にこんなふざけたポーズを。イタリアJKの芸人魂、ブラボー!
こんどは離れた場所から、望遠レンズで学生たちの日常風景をスナップ。笑顔が素敵です。素朴な客車。素朴なシート。そして素朴な学生たち。これはこれで奇跡のような風景だなぁ。
僕は撮影地のある途中駅で下車。あっという間に仲良くなった彼らとの楽しい時間もおしまいです。「Chao!」って別れの挨拶をして、これで終わりかな……なんて思っていたら、列車が動き出すと、みんな窓を開けてこっちに手を降ってくれました。これには本当に感動。言葉が通じなくても、笑顔は通じるんだなぁ。
イタリアのちいさな島の、いまにもなくなりそうな学生客車列車。この幸せな時間を、写真に焼き付けることができたこと。最高の想い出になりました。
客車列車の窓からのスナップ。この列車が、いやこの鉄道自体も、いつまで存続するかわかりません。実際にほかの路線はもう休止になっている区間もたくさんあります。日本だけでなく世界中で、都市部以外ではもう鉄道の役目が終わろうとしているのかもしれません。でもこんな素敵なローカル線の風景があるかぎり、僕は世界中を旅して写真に残したいと強く思っています。
これを撮影してから4年の歳月が経ったコロナ禍の今、この素敵な鉄道と車両たちがどうなっているのか、まったく情報をつかめません。落書きされながらも一生懸命走る素朴な車両。そして美しくも、どこか切ない島の牧歌的な風景。あの素朴な鉄道を訪ねたい。切にそう思います。
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