中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
デジタルピンホールカメラ「おもひでかめら」を楽しもう②
ライカSL2で「おもひでかめら」を作成
2019年12月25日 15:00
前回ご紹介したデジタルピンホールカメラの「おもひでかめら」。カメラと言っても、ボディキャップにピンホールを開けて撮影するだけですが、これがけっこういい雰囲気で写るんです。今回はライカSL2をおもひでかめらにしてみました。ライカSLシリーズのボディキャップがなかなか手に入らなかったので、シグマのボディキャップで作成。ライカ、パナソニック、シグマのLマウントアライアンスのおかげで、手に入りやすくなったのは嬉しいところです。せっかく作ったので、テストすべく銚子電鉄にでかけました。
※ピンホールレンズでの撮影時は、イメージセンサーにゴミが付着しやすくなります。また、太陽など強い光を写しこむことによりカメラ内部がダメージを受ける可能性に留意してください。損害が生じた場合は、デジカメ Watch編集部、中井精也およびメーカーもその責を負いません。自己責任でお願いします。
12月中旬の今は、けっこう暖かい日が続いていますが、この日の朝は山間部だと氷点下になる寒さ。帰りが渋滞するのが嫌だったのと、銚子電鉄は沿線の道が狭いため、バイクを選択しましたが、もう顔が変になるほどの寒さでした(笑)。
ちなみに僕が撮影に使っているバイクは、インドの「ロイヤルエンフィールド」というメーカーのオフロードバイクで、名称は「ヒマラヤン」。日本では理解し難い411ccという中途半端に大型免許が必要な排気量なのでメジャーにはなりませんが、程よいサイズ感でとても気にいっています。インドのバイクなんて壊れないの?と心配されそうですが、買って3か月で壊れました。が、エンジンを総とっかえした今は、とても快調に走っています。冬でもバイクで走るのは男のロマンですが、鼻がもげるような寒さに、やっぱり車で来ればよかったと思った軟弱なせいちゃんなのでした。
銚子電鉄は銚子駅から外川駅へ至る全長たった6.4kmのローカル私鉄。まさに日本を代表する「ゆる鉄」です。銚子駅から乗車すると、風船でできたチーバくんがお出迎え。いきなりゆるさ爆発です。
本銚子駅で下車。昭和チックな温泉のお色気看板があったのでパチり。女性の顔の部分なんかを見ると、ただの穴で撮影したとは思えないほどきちんと解像していてびっくり。またまたレトロな車両のデザインとカラーのおかげで、昭和からタイムスリップしたかのような作品になりました。
列車の最後尾から過ぎてゆく線路を撮影。暗い場所なので、ISO 50000まで上げても1/5秒という低速シャッターですが、ライカSL2はセンサーシフト式のボディ内手ブレ補正機能が搭載されているので、手持ちでバッチリ撮影できました。手ブレ補正つきピンホールカメラが実現する時代が来るなんて、ある意味奇跡的ですよね。
このふざけた名前はシャレで、本当は笠上黒生(かさがみくろはえ)駅です。ネーミングライツで養毛剤のメーカーが協賛したため、こんな面白い駅名板が誕生しました。
理論上はほぼパンフォーカスである「おもひでかめら」は、近ければ近いほど描写力がいいという特徴があります。なのでこの写真のように手前に花などの被写体を配置して撮影すると、絶妙なゆるさの描写力を楽しむことができます。シャッター速度は1/40秒なので、手持ちで撮影できるのも嬉しいところ。それもこれもデジカメの高感度画質が良くなったことによる恩恵です。これはライカSL2のISO 50000という超高感度で撮影していますが、高感度とは思えないほどきれいに写っているのが驚きです。
また列車に乗って君ヶ浜駅へ。車窓には一面のキャベツ畑が広がります。車窓を額縁代わりにして、お客さんのシルエットを入れてパチり。
君ヶ浜駅で下車して、海鹿島駅方面に歩きます。さきほど車窓から撮影した一面のキャベツ畑でさっそく撮影。これくらい遠景になると全体的に描写力は低下しますが、現実の世界とは思えない、なんとも言えない「あの世感」がたまりません。まるで油絵のような描写力は、この「おもひでかめら」以外ではなかなかできない表現方法ではないでしょうか。
まるで映画のセットのような踏切が、キャベツ畑の真ん中にポツンと立つシチュエーションが最高な19号踏切。低い位置から踏切と太陽を重ねて撮影してみました。
今度は列車入り。ピンホールカメラならではのハレーションがとてもいい感じです。フィルムのピンホールカメラでは、どんなハレーションが出るかは現像してみないとわかりませんでしたが、デジタルピンホールカメラでは、背面モニターやEVFでハレーションの出方を確認しながら撮影できるのが強みです。
突然やってきた原付きのおまわりさん。ふつうのカメラではなかなか写しづらい状況ですが、いい感じに情報をはしょってくれるピンホールカメラなら、堂々と撮影できます(笑)。なんともゆるいカットが撮れてご満悦。
今度は地面に寝そべって、水たまりを水鏡にして撮影。直前に軽トラが水たまりを通過して泡が立ち、手前に変な形の泡が浮かんでいますが、けっこうユーモラスな形なので、これはこれでいいかも。
この写真もわざとハレーションが盛大に出る角度にして撮影。まるで列車がオーラを纏っているみたい。
列車に乗って終点の外川駅へ。強烈な逆光に、幻想的なハレーションが素敵です。レンズのコーティングが優秀になりすぎて、逆光でもほとんどハレーションがでなくなってしまった今、オールドレンズのような味わい深いハレーションを楽しむのも、このかめらの醍醐味なのです。
終点の外川駅には古い車両が静態保存されています。その側面をローキーで撮影。水木しげるさんか、つげ義春さんの漫画の世界のよう。ふつうのカメラではなかなか表現できない、おどろおどろしい雰囲気がたまりません。
最後のカットは自分の影を入れて。まるで記憶のなかの風景を撮影できるような「おもひでかめら」は、銚子電鉄の懐かしい風景にぴったりでした。
撮影を終えて、夕日をみながら一休み。日中は暖かくなって、やっぱりバイクで来て良かったとしみじみ。バイクに乗って30年以上の月日が経ちますが、51歳のおっさんになっても、風を切って走る気持ちよさは変わりません。朝は鼻がもげるかと思いましたが、そんなこともすぐに忘れて、またバイクが好きになるのでした。そしてまた日が暮れてイッキに冷え込み、帰りも鼻がもげそうになりましたとさ。
次回は全国で撮影したおもひでかめら作品をたっぷりお見せしますのでお楽しみに。
中井精也よりお知らせ
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