クルマとカメラ、車中泊
グローブボックスに忍ばせておきたいLomographyのフィルムカメラ
2026年4月8日 07:00
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。」
枕草子ですね。そうです、あけぼのの頃、天の川がよく見えます。もっと前にも見えるんだけど、はっきりと天の川として目に見え、そして写真にも撮りやすいのが3月半ばを過ぎてからという印象でしょうか。この写真はタイムラプスのなかの1枚ですが、一連の撮影を終えた頃には空が白み始めるんですよ。その時間はとても趣深いなあと毎度思うんですが、眠気とのバーターです。
僕は深夜まで撮影をしていることが多いのですが、空が白み始める前に寝てしまえば日中も眠気を感じないんです。ですが! 空が白み始めるのを見てしまうと日中は寝不足です。なぜなんでしょうね、30分と違わないのに。ま、どうせ寝不足になるなら、青白い空に赤みが差してくるその様子を楽しみますかね。これからしばらくは寝不足の日々が続きます。
大きな写真はGANREFで
ドライブのお供に、そして万が一の備えにもなるフィルムカメラ
エモい写真が撮れるってことで、昨今フイルムカメラが若い方に人気と聞きます。僕も学生時代から2000年頃までフイルムがメインでしたが。ああ、遠くなったなあ。
いやいや、そんな遠い目は必要ありません。車が好きなこのページの読者の方にこそ、お勧めしたいのがフイルムカメラですのよ。
それもゴツい一眼レフカメラをおすすめしたいわけじゃありません。LomographyのReloadable Film Camera Classicolor(以降Classicolor)です。要はレンズ付きフイルムの進化版なんですが、内蔵されたフイルムを撮り終わった後もフイルムを入れ直して再利用できるという優れモノです。
ドライブの途中、ふと立ち寄った場所でシャッターを切る。そんな気軽な撮影にこそフィルムカメラは似合います。デジタルカメラと違って、撮ったその場で確認できないもどかしさが、かえって旅の記憶を鮮やかにしてくれるんです。
こんなふうにグローブボックスに忍ばせておけば、ドライブのお供に最適。そしてもう1つ、万が一の事故の際の証拠写真としても。加工しにくいフィルム画像は証拠能力が高く評価されています。
僕はいつもグローブボックスに、何かしらカメラを入れておくんですが、かつて車を下取りに出した時に、カメラ入ったままだったんだよねえ。オリンパスXAなんていうそこそこお高いコンパクトカメラだったんだけど、だいぶ後から気づいたので戻っては来ませんでした。残念。
そんなこともあり、やっぱりグローブボックスにはシンプルで手頃なカメラがよろしいわけで。
とはいえ、グローブボックスの肥やしにしてはもったいないですから、たまにはデジタルカメラをやめて、フイルムの味を楽しみませんか?
フラッシュ操作とフィルター切り替えだけ覚えておけばいい
それではClassicolorの使い方を見てみましょう。
でもね、撮影は至って簡単。知ってますよね。フイルムを巻き上げてシャッター押すだけ。ちょっと注意しなくちゃいけないのはフラッシュ使う時です。
カメラ前面にフラッシュボタンがあるんだけど、フラッシュ使う時は押しっぱなしにしてシャッターを切らなければいけません。あと、Classicolorではフラッシュ用にCMY3色のフィルターが装備されているので、これもちょっと注意ね。意図せずフィルターがかかってしまったりするから、シャッター押す前に確認しましょ。
フィルター装備自体はとても面白いアイデアでクリエイティブな気分になれます。本来、エモい写真を撮ることを目的にしたカメラってことですよね。
フィルム再装填はコツがある。順を追ってやれば難しくない
使い方で難しいというかちょっとひっかるのが、フイルムの再装填だと思うので、そこをお話ししましょうね。
まず大前提として、普通のカメラは撮影する前のフイルムはパトローネの中に入っていて、撮影が済んだフイルムはカメラの巻き上げスプールに巻き取られてゆき、全てのフイルムを使い切ったら、巻き戻しクランクを回して撮影済みフイルムをパトローネに巻き戻すわけですが、Classicolorほか、レンズ付きフイルムではカメラ左側の巻取りスプールにあらかじめフイルムを全部出して巻いておき、撮影が終わったコマからパトローネの中に巻いていきます。この方式の場合、途中でうっかり裏蓋をあけてしまってもフイルムゲートに残ったコマ以外の露光済み部分はすでにパトローネの中に入っているので、無事! なわけです。
フイルムを撮り切ったら、カメラ底部のCUT HEREの表示に合わせて切れ込みを入れます。底部に残ったシールは基本剥がす必要はありません。このシールが裏蓋のロックになっていて、不用意に裏蓋を開けてしまう失敗を防げるんですね。まあ、うっかり開けてしまっても、最後の2〜3枚は感光してしまうのだけど、パトローネに仕舞い込まれた分は無事なわけです。
ちなみに底部のシールも剥がすとフラッシュ用の電池も交換できるんですよ! 単三電池です。
フイルムを取り出して、現像&プリントに出したらフイルムを入れ替えましょう。ここからがキモです。今回は手元にあったコダックのフイルムをいれました。
基本、ISO感度が200のものであればメーカー問わず、なんでもOKです。この辺がフイルムカメラの良さですね。フイルムを変えると写り方も変わりますからね。理由は後述しますが、ISO 400のものでもOKです。
今回は手元のフイルムを使っちゃったけど、Lomographyには純正のフイルムが用意されています。公式ページではフイルムの特徴が書かれているので、フイルム選びの参考になるはずです。まずは純正フイルムを制覇してみてから、他社のフイルムを試してみるのが、わかりやすいし、ゲーム的な面白さにも繋がりますね。
ではフイルム再装填。カメラ右手のフイルム室にフイルムをいれたら、フイルムの先を引き出し、左手側の巻取りスプールまで持ってきます。巻取りスプール(軸)にはフイルムを引っ掛けるためのノッチがあるので、そこにフイルムの穴(パーフォレーションと言います)を引っ掛けます。左手親指でフイルムを押さえつつ、左手人差し指でカメラ底部の巻き上げクランクを押さえておくとノッチに引っ掛けやすいです。
フイルムがノッチに引っ掛かったら、そのまま巻き上げクランクを一回転半ほど回してフイルムにテンションをかけます。写真では左手人差し指だけが写っていますが、この時は右手人差し指をフイルムに添えておきましょう。巻き取りスプールにフイルムがしっかり巻き付いた感触を確かめたら、巻取りクランクが動かないように押さえたまま裏蓋を閉めます。この時巻取りクランクを押さえておかないとフイルムが解けてしまう確率が高くなります。
裏蓋を閉めたらもうひと工程ありますよ。巻き上げダイヤルの左側赤矢印の位置に、小さなスイッチがあります。フイルムの逆転防止のためのスイッチです。まず、このスイッチを操作しないで、巻き取りクランクを回してみます。反時計回りです。しっかりフイルムがひっかかっていれば、クランクは少し回って止まるはずです。ここでクランクがスルスルと回ってしまうようなら、フイルムが解けてしまってますから、裏蓋を開けてノッチにフイルムを引っ掛けるところからもう一度やり直しましょう。
巻取りクランクが動かないことを確認したら、右手親指でこの小さなスイッチを左にスライドさせます。この時も巻取りクランクから指を離さず押さえておきましょう。スイッチを左にスライドさせたまま、巻取りクランクを反時計回りに回転させます。少し抵抗を感じつつ、フイルムを巻き取っていきクランクが回せなくなったら終了です。無事フイルムの再装填ができました!
九十九里と近所のスナップ。フィルムらしい色合い
まだ終わりませんよー、撮影結果を見るまでは! ということで、近所にあるカメラのキタムラさんに現像&同時プリント出しました。店舗によってはいまも1時間仕上げをやってくれてるんですね! 実店舗が全国にあって、生活に根ざした写真店という感じでありがたいですね。出張にでて、足りない機材があったときなどもまずカメラのキタムラさんで探してみるんですよ。
それでは、Simple Use Classicolorで撮った作品を見てください。プリントをデジタルカメラで複写し、モニターで色合わせをしています。九十九里、うちの近所でのスナップです。
いかがです? フイルムならではの粒状感とリアルとはちょっと違う色合いが魅力的って感じます。案外、青空はリアルに近い再現をしていますが、それ以外はちと違います。エモいというのは、感情が揺さぶられることを指す言葉ですよね。どういった感情であるかは言明しない使い方をする言葉ですが、それは同じものを見て共感してほしいという気持ちが込められた使い方をする言葉なのだと思います。空気というか惻隠の情というか、日本的な言葉遣いですよね。なにをしてエモいと思うかは人それぞれですが、作例はなかなかエモい色合いとトーンで仕上がってるなあと思いますけど。エモいです、よね!
ところで写真の世界でよく使われるワードにフイルムライクってのがありますが、その色合いやトーンが懐かしさ、切なさ、あるいは楽しかった記憶を引き出すのだと考えられるのです。これ、フイルムに対する幻想でもあったりしますが、リアルに見た印象と違うこと(ただしこれは記憶色などという言い方がされますが、記憶の中の光景は美しくかんじるもの)、フイルムごとに違う色再現やトーンがあることなどから、思ったとおりには写らない。そのもどかしさが、懐かしさを感じる所以でしょう。フイルムならではの偶然や想定外は、カラーを論理的に構築してゆく現代のデジタル画像と対照的であり、そうであるからこそ心に鮮やかに映るのでしょうね。それもエモさにつながっていると思うのです。それゆえか、フイルムで撮る写真にはごく身の回りの見慣れた風景こそ、似合ってると思うんです。
ここから先は蘊蓄ですよ、よほど興味がある人以外は読み飛ばし推奨です。
なぜシンプルなカメラでも適正露出で撮れるのか
さてワタクシ、日大写真学科出身ですが学生時代はもちろんフイルム。プロになってからも2000年頃まではフイルムメインで湯水の如くフイルムを使ってまいりました。そんな私が、いや同時代のプロたちが思う20世紀最高の写真技術ってレンズ付きフイルムだと思うのです。Lomography Simple Use Classicolorは間違いなくその系譜ですね。
まず、このシンプルなカメラが成り立つのは高性能なフイルムがあればこそ。ネガカラーからのプリントで表現できる明るさの差は、フイルムではラチチュードという言い方をしますが、最近のデジタルカメラでの表記f-Stopに従えば、およそf-Stop9から10くらいです。これはAdobeRGBの画像規格に近いものですのでダイナミックレンジとして捉えればデジタルとそれほどの差がありません。しかし、すごいのはその先です。
ネガカラー、フイルム単体で言えばそれよりかなり大きな輝度差、明るさの差を記録できます。ことに露光オーバーに対して強く、露光計で指示される適正露光よりも4〜5段オーバーな露光をおこなっても、これをプリントするとf-Stop9から10くらいの適切な再現範囲のプリントを作ることができます。これによってLomography Simple Use ClassicolorのデフォルトはISO 200のフイルムですが、ISO 400や800のフイルムを入れて日中に撮影したとしても適正なプリントが得られるんです。よってカメラそのものはシンプルでいいんですね。
Lomography Simple Use Classicolorのスペックは公式には公開されていないようですが、ほかのレンズ付きフイルムのスペックからレンズはF11、シャッター速度は1/100秒で固定されているものと思われます。これで、日中から夕暮れ時くらいまで適正に撮影できるんですから、改めて考えると驚きでしょ?
フィルムゲートが湾曲しているのには理由がある
そしてもう1つ。大きな蘊蓄。搭載されているレンズはおそらく2枚構成のシンプルなもの。レンズには様々な収差、結像性能の瑕疵がありますが、シンプルなレンズ構成では中心部はシャープでも、中心以外では良好な描写が得られません。これは像面湾曲という収差が大きく関わっています。
結像面が平面ではなく、球体の内側、いわば時計皿のように湾曲するんです。で、写真を見てください。フイルムが当たるゲートの面が凸面に湾曲しているでしょう? これ収差で湾曲してしまった像面に合わせてるんです。
もちろん、球面ではないので横方向にしか効き目はありませんが、これのおかげで視野周辺まで良好な描写が得られているわけです。普通のフイルムカメラやデジタルカメラは感光材料が平面ですから、これを解決しつつ他の様々な収差を減らすためにたくさんのレンズで構成しているのです。
ちなみに天文用途ではシュミットカメラなんてものがありまして、フイルムを凸面状に圧迫して像面湾曲を補正するカメラがかつてアマチュア向けにも市販されてました。これすごいんですよ。補正版1枚、反射鏡1枚のシンプルな構成なのにブローニーのフイルムで視野全体にわたってシャープな像を結ぶカメラでした。
ということで、きょうはおしまい。


















