赤城耕一の「アカギカメラ」

第89回:「OM-1 Mark II」の進化具合と、どうしても気になる“あの”部分

元の名前を残しながら、モデルチェンジするたびにMark 〇〇として、数字だけが増えてゆくのは最近のカメラの傾向かと思いきや、以外に昔からありますね。

オリンパスで製造・出荷されていたOM-1の前身シリーズであるOM-D E-M1も前の名前はそのままで、Mark IIIまで進化しましたよね。

「OM-1」と聞くと、オリンパスが1972年に発売した一眼レフカメラ「OM-1」を思い出してしまうくらいには筆者は年寄りです。

先日も酒席でOM-1のことを話題に話をしている参加者がいて、筆者はしばらくの間、1972年発売のOM-1の話と勘違いして聞いておりまして、気づくまで時間を要しました。

小さいカメラボディには小さな単焦点レンズが似合うわけで、これはフィルム時代から連綿と繋がるOMのデザインの思想を表すのに最も適した組み合わせです
マイクロフォーサーズ機は階調の繋がりが気になるので新しいカメラは明暗差の大きな条件を選んでテストするのですが、結果は素晴らしく良い感じです
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/17mm(34mm相当)/絞り優先AE(1/2,000秒、F8.0、+0.3EV)/ISO 400

OMデジタルソリューションズ(OMDS)のフラッグシップOM SYSTEM OM-1はエンブレムは「OLYMPUS」のまま登場しましたから、ここはOM-1 Mark IIになっても、フラッグシップのみエンブレムは「OLYMPUS」のままでいくのではと淡〜い期待を抱いておりましたが、それは叶いませんでした。はいこういうところは粘着ですみません。でもいいのか「OM-1」の名が残ったから。

期待のOM-1のMark II、第一印象としては筆者には前OM-1との外見上の違いはエンブレムの違いくらいしかわかりませんでした。でも、「OM SYSTEM」のロゴデザイン処理はとても巧みなので、近視かつ老眼が眼球にブレンドされている筆者には3m離れると、「OLYMPUS」と「OM SYSTEM」ロゴと見分けがつかなくなります。

しかも「OM」と「SYSTEM」の間に半角アキがあるところなど、これはOLYMPUS時代からのユーザーに違和感を与えないような配慮なのかと、気を遣った、高度な作戦がとられているのかもしれません。

筆者はこのわずかなスキマを念入りにシリコンクロスで擦ったりします。別に汚れてはいないのですが、いろいろと思うところがあるわけです。

でも筆者「OM-1」とのつきあいはフィルム時代から数えてみると半世紀にも及ぶわけで、一言述べないと気が済みませんから、どうしても饒舌になってしまうわけです。毎度おつきあいすみません。

OMSYSTEM OM-1とOMSYSTEM OM-1 Mark II。じつは重量はほぼ同じで、デザインも同じであります。筐体も同じじゃないののかなあ。新しく金型を用意するのは相当なお金がかかりますからね。

OM SYSTEM OM-1とOM SYSTEM OM-1 Mark IIを並べてみます。どちらがいいかとか野暮なことは言いませんよ、はい

OM-1 Mark IIのボディ左下には「II」というバッジがありますね。黒いから目立ちませんが。前機種のOM-1では「OM SYSTEM」ロゴマークがあったところです。そういえばかなり以前、リコーイメージング PENTAX K-1をII型に改造してもらえるサービスがあって、その改造を施したK-1には「II」のバッジが貼られていたことを思い出しました。そんなに無理しなくていいのにと思いました。今回も少し似た感じはするのですが。

「II」のエンブレムです。カメラメーカーのみなさんはローマ数字が好きですね。黒いから「貳」とか表記してもいいんじゃないすかね

カメラをホールディングした感じもOM-1と当然変わりはありません。ダイヤルには新しい素材が使われたとかで滑りづらいようですが、言われなければ気がつかないくらいです。

OM-1 Mark IIはOM-1と何が違うかというと、OMDSさんが強くウリにしたいのは、ライブGNDというヤツであります。

これはハーフND(グラデーションND)フィルターの効果をデジタルで再現する試みです。効果はフィルター段数(GND2/4/8)、フィルタータイプ(Soft/Medium/Hard)を選択することができます。これは連写したコマの合成により行われます。このため露光した後に処理時間が少々かかりますね。

ハーフND効果の境界線の位置と角度を調節することができます。筆者も試して、効果のほどは確認し、おおなるほど、面白いとは思いましたが、おまえさ、これ積極的に使うのかよ? と問われると……。まあいいでしょう。これから最良の使用方法を研究することにします。必要な人には必要で便利な機能なのでしょう。

ライブGNDを使用した1コマ目のお試しカット。斜めにもNDは反映できるとのことなので、屋根の傾斜に合わせてみました。ND8だと少々強く不自然なようですね
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/17mm(34mm相当)/マニュアル露出(1/500秒、F9.0)/ISO 200
ライブGNDの2枚め。エフェクト系のモードを使う場合はさりげない効果でいいんじゃないかということでND4にしてみましたが平易すぎますか
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/17mm(34mm相当)/絞り優先AE(1/320秒、F9.0、-0.7EV)/ISO 200
あれこれGND効果を試したんですが、そうだ、モノクロだぜということで太陽を入れ込んだ状態で撮影しました。粒状は中に設定してみました。ND8で整いました。「1970年代の地平」などとタイトル付けたくなりません?
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F11、-0.7EV)/ISO 200
耐震用の鉄鋼でしょうか。クロスされた鉄骨に合わせて、GNDを位置させました。だからどうしたという感じですけど、誰かうまいこと試したものをお手本として見せてください
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(F8.0、−0.7EV)/ISO 400

「AI被写体認識AF」に新たに「人物」に対応しました。あれ? OM-1には顔優先/瞳優先AFがあるじゃないかと思いましたが、AI被写体認識AFに昇格したわけですね。

この改良は大きく、試してみるとこちらが撮影体制に入る前から、人物の顔を認識しはじめ、さらに横向きや後ろ向き、顔の一部が隠れても認識しますが、距離がかなり離れていても機能します。これはすばらしいです。街中のスナップなどでもこれまで以上に軽快に撮影することができます。

そういえばOM SYSTEM OM-1を使い始めてからAFの筆者も自動選択のAFを積極的に使用するようになりましたが、OM-1 Mark IIでは全体的にさらにAF精度の向上を感じることができました。

でも、比べてはいけないんだろうけど、ソニーα9 IIIのAFのように、こちらが何の用意もしていないうちに被写体に合焦して、動体を捉え続けてしまうAF動作を知ってしまうと、もっともっと自動選択AFとか被写体認識AFはイケるようになるのではと思います。

こちらもフォーカスに対して怠慢になりすぎないようにせねばなりませんが、OMに限らず、各社ともにAFはこれからも、改良され進化してゆくでしょう。

被写体認識の「鳥」はどうかと。本物を撮るには望遠レンズとか使わないといけないので面倒ですから、公園のオブジェで間に合わせましたが、こんなものでもちゃんと瞳にピントが合うんですよね。次回は焼き鳥だとどうなるか試したいです
OM-1 Mark II/ZUIKO DIGITAL MACRO 35mm F3.5/35mm(70mm相当)/絞り優先AE(1/200秒、F3.5、−0.3EV)/ISO 400
被写体認識の「電車」を使用してみます。本気のレビューだと駅を通過する新幹線とか撮影しちゃうんでしょうが、ここでは歩いているくらいのローカルな電車を撮影してみましたが、ズバリ被写体認識は電車の前面の輪郭をなぞるように枠が出てきます。あたりまえか
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/34mm(68mm相当)/絞り優先AE(1/1,250秒、F8.0、−1.0EV)/ISO 400
年季の入ったアパートを斜め下から。実は自動選択AFはどのあたりに合焦するか見てみたかったのですが、きちんとパンフォーカス撮影の基本である「画面の手前1/3」法則のところに合焦します。真面目です。実焦点距離が短く被写界深度が深いので望遠でもパンフォーカスになります
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/100mm(200mm相当)/絞り優先AE(1/2,000秒、F10、−0.3EV)/ISO 800
年寄りなんでお約束の石仏も撮ります。興味は顔認識するかどうかでしたが、当然のように勝手にピントが合うわけです
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/100mm(200mm相当)/絞り優先AE(1/4,000秒、F4.5、−1.3EV)/ISO 400

あとはバッファが増設されたとか。連続撮影枚数が向上したとか、正常進化がみられますね。ありがたいのは手ブレ補正の性能向上ですかねえ。でもOMDSでは「星空も手持ちで撮れる」とまた極端なアナウンスしているようですね。最大8.5段分の手ブレ補正効果があるようです。

筆者は星景撮影にはまったく詳しくはありませんが、それでも星を本気で撮る人は、絶対に三脚を使うのではないかと……最近はそうでもないんですか? 貧相な想像を働かせるに三脚を立てることのできない急斜面で星景を撮るとかかな?

とにかくこれまで手持ちで撮れないものが撮れるようになったことは大きな意味がありますので、好ましい改良、進化であることは間違いありません。

手ブレを発生させない方が難しいくらいの手ブレ補正機構はきちんと踏襲されていますが、最高で8.5段分とのことですね。夜の撮影が好きだけど感度を上げたくないあなたのためにあります
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/17mm(34mm相当)/絞り優先AE(1/10秒、F5.6、−1.7EV)/ISO 800

OM-1 Mark IIには従来のライブNDもあって、日中晴天下で、スローシャッターを使うこともできるわけですが、この時にも手ブレ補正は大いに役立ちます。

筆者の周りの同業者数人にOM-1 Mark IIから、OLYMPUSからOM SYSTEMのロゴに変わったことをどう思うか訊いたのですが、気にしないという意見は意外と多いですね。中にはいったいキミは何の話をしているのだという怪訝な顔をされる人もいるくらいです。みなさんオトナです。

本当なのか? いつまでもぐずぐず言い続けるのは筆者くらいで、だからいつまでたっても5流写真家の位置から変わらないのでしょうか。

ここ最近、マイクロフォーサーズ機は元気がないように見えておりましたがパナソニックのLUMIX G9PROIIや、このOM-1 Mark IIの登場で、巻き返している状況です。

筆者はフォーマットサイズの差異による画質の差よりも、それぞれのフォーマットの特性をどう作画に生かしていくのか考えることを愉しみにして使用しています。そして何よりもマイクロフォーサーズ機の携行性を重視して使用しています。単独で撮影に赴くことが本当に多くなったからです。ホント、バッグがあまりに軽いので機材を忘れてきたのではないかと、慌てたことがこれまでも何度もあるのですが、これは嬉しい不安なわけです。

アサインメントだとM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROばかりを使うことになってしまいます。いや、これは数あるズイコーレンズの中でも名玉だと思います。今回は時間もなかったので作例撮影にも使いました
タワマンと洗濯物。下町にもタワマンがバンバン建つ東京なんです。新風景が見られるので、カメラの携行はマストです。コントラストの高いドピーカン状態ですが。布団の調子もよく出ています
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/12mm(24mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 200
筆者の好きな「配管」なんですが、さてキミはどこにピントを合わせてくるかなと楽しみにしたら、中央のボルトのとこに迷わず合わせるわけです
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/54mm(108mm相当)/絞り優先AE(1/2,200秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 800
某駅舎で錆びたレールを使用した屋根を発見してしまいました。こういうのは撮らねはなりません。質感描写いいですね
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/61mm(122mm相当)/絞り優先AE(1/2,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 800

OM-1からOM-1 Mark IIへの買い替えをどうすべきかで悩み悶々としているのですが、筆者の仕事に役立つ新機能や改良点はあまり多くはなく、正直なところ決断しかねております。現在OM SYSTEM OM-1は2台体制で稼働中ですので、総取替というのも悩ましい。本音ではOM-1 Mark IIは欲しいですが、商売では費用対効果を考えます、いちおうこんな筆者でも撮影が本業でもありますので。

先日スタジオ撮影にOM SYSTEM OM-1を持ってゆくと、スタジオさんに、「そのカメラを使う人、はじめてみました」と言われました。OLYMPUSのエンブレム時代から言われていたので、もう慣れたものですが、OM SYSTEMロゴとしたOM-1 Mark IIならどのような反応になるでしょうか。これも知りたいところですが、気にはされないだろうな。

フィルム時代からOLYMPUS一眼レフを仕事カメラとして使用してきたこともあり、撮影現場では少し奇異な目で見られることにはもう何も感じなくなっている筆者がいます。

アートフィルターのラフモノクローム1を使ってみました。すごく久しぶりです。一次は積極的に使用したこともありましたが正直こればかりに頼ると飽きるんですが、ノーマルの画像ばかり見ているとこれもたまにはいいなと思いました
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/17mm(34mm相当)/絞り優先AE(1/2,500秒、F7.1、−0.7EV)/ISO 400
通常のモノクロ再現も試してみます。ピクチャーモードからオレンジフィルターを選択。青空を少し落としました。個人的にはこれくらいが安心してみていられる感じですが、RAW設定ではカメラ内RAW現像でもあれこれ設定を変えて楽しむことができます
OM-1 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/61mm(122mm相当)/絞り優先AE(1/1,000秒、F10、−0.7EV)/ISO 400

OM-1への思い入れは、OMDSのみなさまも強いものがあると思いますが、こちらもフィルム時代から、あたりまえのように身近にあったOM-1に対する思い入れは半端なく、ずっとお世話になってきましたから、少し偏執的かもしれません。

筆者としてはかつてのOMのキャッチーな「バクテリアから宇宙まで」という文言で夢と信頼を寄せてきました。

鳥や自然風景の撮影が得意であることをOMDSは強調したいのでしょうが、OM-1 Mark IIのアドバンテージや偉さはそれだけではないということは主張したいところであります。街中のスナップ撮影にも軽快に使うことができますし、あらゆる被写体に対しOM-1 Mark IIは万能性があると信じています。

そしてOM SYSTEMエンブレムとなった OM-1 Mark IIをみなさんがどう見るのでしょうか。しつこいようですが、気にしているのは筆者だけかもしれません。でも、少しマイナーな存在であることを逆に面白がりたい、それを使用している自分を少し自慢したい筆者なのであります。この反応にはとても興味があります。

はい今回もちょっと試した“フォーサーズ”レンズのZUIKO DIGITAL MACRO 35mm F3.5です。純正マウントアダプターのMMF-3使ってバッチリ機能します。ロースペックなんだけど、意外とOM-1 Mark IIに合ううんですよね。中古市場では昨晩の赤ちょうちん代くらいで売られていたりします。写りもいいです
古いZUIKO DIGITAL MACRO 35mm F3.5、開放時から硬すぎない品格のある描写をします。同スペックの新しいM. ZUIKO DIGITAL 35mm F3.5も所有しているのに、ついこの古いレンズを持ち出したくなるのはなぜなのか自分でもよくわかりません。像面位相差AFには対応していませんが、AFスピードもさほど問題なく使えます
OM-1 Mark II/ZUIKO DIGITAL MACRO 35mm F3.5/35mm(70mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F3.5、-0.7EV)/ISO 400
赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に「アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。」(インプレス)「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。