赤城耕一の「アカギカメラ」
第89回:「OM-1 Mark II」の進化具合と、どうしても気になる“あの”部分
2024年3月5日 07:00
元の名前を残しながら、モデルチェンジするたびにMark 〇〇として、数字だけが増えてゆくのは最近のカメラの傾向かと思いきや、以外に昔からありますね。
オリンパスで製造・出荷されていたOM-1の前身シリーズであるOM-D E-M1も前の名前はそのままで、Mark IIIまで進化しましたよね。
「OM-1」と聞くと、オリンパスが1972年に発売した一眼レフカメラ「OM-1」を思い出してしまうくらいには筆者は年寄りです。
先日も酒席でOM-1のことを話題に話をしている参加者がいて、筆者はしばらくの間、1972年発売のOM-1の話と勘違いして聞いておりまして、気づくまで時間を要しました。
OMデジタルソリューションズ(OMDS)のフラッグシップOM SYSTEM OM-1はエンブレムは「OLYMPUS」のまま登場しましたから、ここはOM-1 Mark IIになっても、フラッグシップのみエンブレムは「OLYMPUS」のままでいくのではと淡〜い期待を抱いておりましたが、それは叶いませんでした。はいこういうところは粘着ですみません。でもいいのか「OM-1」の名が残ったから。
期待のOM-1のMark II、第一印象としては筆者には前OM-1との外見上の違いはエンブレムの違いくらいしかわかりませんでした。でも、「OM SYSTEM」のロゴデザイン処理はとても巧みなので、近視かつ老眼が眼球にブレンドされている筆者には3m離れると、「OLYMPUS」と「OM SYSTEM」ロゴと見分けがつかなくなります。
しかも「OM」と「SYSTEM」の間に半角アキがあるところなど、これはOLYMPUS時代からのユーザーに違和感を与えないような配慮なのかと、気を遣った、高度な作戦がとられているのかもしれません。
筆者はこのわずかなスキマを念入りにシリコンクロスで擦ったりします。別に汚れてはいないのですが、いろいろと思うところがあるわけです。
でも筆者「OM-1」とのつきあいはフィルム時代から数えてみると半世紀にも及ぶわけで、一言述べないと気が済みませんから、どうしても饒舌になってしまうわけです。毎度おつきあいすみません。
OMSYSTEM OM-1とOMSYSTEM OM-1 Mark II。じつは重量はほぼ同じで、デザインも同じであります。筐体も同じじゃないののかなあ。新しく金型を用意するのは相当なお金がかかりますからね。
OM-1 Mark IIのボディ左下には「II」というバッジがありますね。黒いから目立ちませんが。前機種のOM-1では「OM SYSTEM」ロゴマークがあったところです。そういえばかなり以前、リコーイメージング PENTAX K-1をII型に改造してもらえるサービスがあって、その改造を施したK-1には「II」のバッジが貼られていたことを思い出しました。そんなに無理しなくていいのにと思いました。今回も少し似た感じはするのですが。
カメラをホールディングした感じもOM-1と当然変わりはありません。ダイヤルには新しい素材が使われたとかで滑りづらいようですが、言われなければ気がつかないくらいです。
OM-1 Mark IIはOM-1と何が違うかというと、OMDSさんが強くウリにしたいのは、ライブGNDというヤツであります。
これはハーフND(グラデーションND)フィルターの効果をデジタルで再現する試みです。効果はフィルター段数(GND2/4/8)、フィルタータイプ(Soft/Medium/Hard)を選択することができます。これは連写したコマの合成により行われます。このため露光した後に処理時間が少々かかりますね。
ハーフND効果の境界線の位置と角度を調節することができます。筆者も試して、効果のほどは確認し、おおなるほど、面白いとは思いましたが、おまえさ、これ積極的に使うのかよ? と問われると……。まあいいでしょう。これから最良の使用方法を研究することにします。必要な人には必要で便利な機能なのでしょう。
「AI被写体認識AF」に新たに「人物」に対応しました。あれ? OM-1には顔優先/瞳優先AFがあるじゃないかと思いましたが、AI被写体認識AFに昇格したわけですね。
この改良は大きく、試してみるとこちらが撮影体制に入る前から、人物の顔を認識しはじめ、さらに横向きや後ろ向き、顔の一部が隠れても認識しますが、距離がかなり離れていても機能します。これはすばらしいです。街中のスナップなどでもこれまで以上に軽快に撮影することができます。
そういえばOM SYSTEM OM-1を使い始めてからAFの筆者も自動選択のAFを積極的に使用するようになりましたが、OM-1 Mark IIでは全体的にさらにAF精度の向上を感じることができました。
でも、比べてはいけないんだろうけど、ソニーα9 IIIのAFのように、こちらが何の用意もしていないうちに被写体に合焦して、動体を捉え続けてしまうAF動作を知ってしまうと、もっともっと自動選択AFとか被写体認識AFはイケるようになるのではと思います。
こちらもフォーカスに対して怠慢になりすぎないようにせねばなりませんが、OMに限らず、各社ともにAFはこれからも、改良され進化してゆくでしょう。
あとはバッファが増設されたとか。連続撮影枚数が向上したとか、正常進化がみられますね。ありがたいのは手ブレ補正の性能向上ですかねえ。でもOMDSでは「星空も手持ちで撮れる」とまた極端なアナウンスしているようですね。最大8.5段分の手ブレ補正効果があるようです。
筆者は星景撮影にはまったく詳しくはありませんが、それでも星を本気で撮る人は、絶対に三脚を使うのではないかと……最近はそうでもないんですか? 貧相な想像を働かせるに三脚を立てることのできない急斜面で星景を撮るとかかな?
とにかくこれまで手持ちで撮れないものが撮れるようになったことは大きな意味がありますので、好ましい改良、進化であることは間違いありません。
OM-1 Mark IIには従来のライブNDもあって、日中晴天下で、スローシャッターを使うこともできるわけですが、この時にも手ブレ補正は大いに役立ちます。
筆者の周りの同業者数人にOM-1 Mark IIから、OLYMPUSからOM SYSTEMのロゴに変わったことをどう思うか訊いたのですが、気にしないという意見は意外と多いですね。中にはいったいキミは何の話をしているのだという怪訝な顔をされる人もいるくらいです。みなさんオトナです。
本当なのか? いつまでもぐずぐず言い続けるのは筆者くらいで、だからいつまでたっても5流写真家の位置から変わらないのでしょうか。
ここ最近、マイクロフォーサーズ機は元気がないように見えておりましたがパナソニックのLUMIX G9PROIIや、このOM-1 Mark IIの登場で、巻き返している状況です。
筆者はフォーマットサイズの差異による画質の差よりも、それぞれのフォーマットの特性をどう作画に生かしていくのか考えることを愉しみにして使用しています。そして何よりもマイクロフォーサーズ機の携行性を重視して使用しています。単独で撮影に赴くことが本当に多くなったからです。ホント、バッグがあまりに軽いので機材を忘れてきたのではないかと、慌てたことがこれまでも何度もあるのですが、これは嬉しい不安なわけです。
OM-1からOM-1 Mark IIへの買い替えをどうすべきかで悩み悶々としているのですが、筆者の仕事に役立つ新機能や改良点はあまり多くはなく、正直なところ決断しかねております。現在OM SYSTEM OM-1は2台体制で稼働中ですので、総取替というのも悩ましい。本音ではOM-1 Mark IIは欲しいですが、商売では費用対効果を考えます、いちおうこんな筆者でも撮影が本業でもありますので。
先日スタジオ撮影にOM SYSTEM OM-1を持ってゆくと、スタジオさんに、「そのカメラを使う人、はじめてみました」と言われました。OLYMPUSのエンブレム時代から言われていたので、もう慣れたものですが、OM SYSTEMロゴとしたOM-1 Mark IIならどのような反応になるでしょうか。これも知りたいところですが、気にはされないだろうな。
フィルム時代からOLYMPUS一眼レフを仕事カメラとして使用してきたこともあり、撮影現場では少し奇異な目で見られることにはもう何も感じなくなっている筆者がいます。
OM-1への思い入れは、OMDSのみなさまも強いものがあると思いますが、こちらもフィルム時代から、あたりまえのように身近にあったOM-1に対する思い入れは半端なく、ずっとお世話になってきましたから、少し偏執的かもしれません。
筆者としてはかつてのOMのキャッチーな「バクテリアから宇宙まで」という文言で夢と信頼を寄せてきました。
鳥や自然風景の撮影が得意であることをOMDSは強調したいのでしょうが、OM-1 Mark IIのアドバンテージや偉さはそれだけではないということは主張したいところであります。街中のスナップ撮影にも軽快に使うことができますし、あらゆる被写体に対しOM-1 Mark IIは万能性があると信じています。
そしてOM SYSTEMエンブレムとなった OM-1 Mark IIをみなさんがどう見るのでしょうか。しつこいようですが、気にしているのは筆者だけかもしれません。でも、少しマイナーな存在であることを逆に面白がりたい、それを使用している自分を少し自慢したい筆者なのであります。この反応にはとても興味があります。