写真を巡る、今日の読書

第62回:旅の目的地にもなる…国内外にある魅力的な美術館や博物館

写真家 大和田良が、写真にまつわる書籍を紹介する本連載。写真集、小説、エッセイ、写真論から、一見写真と関係が無さそうな雑学系まで、隔週で3冊ずつピックアップします。

行ってみたい美術館や博物館を見つけること

取材や展示などで地方を訪れる際のひとつの楽しみに、現地の美術館や博物館巡りがあります。こんなところでこの作家の作品に出会うとは、と驚く楽しみもありますし、その地方の文化が丁寧にまとめられた展示を興味深く勉強させてもらうこともあります。また、建築物として眺めても興味深いものが多いですし、目的地に行くまでの道程もまた楽しいものです。

そんなわけで、私にとって美術館や博物館を巡ることは、旅の1番の目的になることも多くあります。読者のみなさんにもそのような方は多いのではないでしょうか。

行ってみたい美術館や博物館を見つけることは、次の旅の目的地を探すことにも繋がるかもしれません。今日は、そんなときに参考にしていただきたい本をいくつか紹介したいと思います。

『東京のワクワクする大学博物館めぐり』大坪覚 著(トゥーヴァージンズ/2023年)

1冊目は、『東京のワクワクする大学博物館めぐり』。都内には実に多くの大学や専門学校が林立していますが、その多くには一般に開かれた資料館や博物館、美術館が併設されています。規模の大小はありますが、大学ごとの研究分野や特色が良く分かる展示も多いですし、外部に開かれている性質上、見事な設備や建築が眺められる館も多くみられます。

本書を開いてみると、こんなに多くの博物館が都内にあるのかということに驚くと共に、ついでに大学巡りも楽しめるなといった気が起こります。私が特に注目したのは、昆虫や鉱石、古農具、植物などを網羅した東京農業大学の「食と農」の博物館や、篠原一男が設計した東京工業大学博物館、考古と神道を扱った國學院大學博物館などです。その他にも、一度行ってみたいと思わせる魅力的な博物館が多く見つかります。

ちなみに、私が所属する東京工芸大学芸術学部写大ギャラリーも掲載されております。本学が所有する多くのオリジナルプリントを中心に、様々な企画展が一般公開されておりますので、是非一度ご覧いただければと思います。

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『日本の名画・名品を訪ねて 旅する日曜美術館 北海道・東北・関東・甲信越・北陸』NHK「日曜美術館」制作班 編(NHK出版/2022年)

次に紹介するのは、『日本の名画・名品を訪ねて 旅する日曜美術館 北海道・東北・関東・甲信越・北陸』です。同じシリーズとして、「東海・近畿・中国・四国・九州」地方がまとめられた書籍も刊行されています。

NHKの「日曜美術館」で紹介された日本の近世以降の名画・名品とその関連作品を所蔵する日本全国の美術館が取り上げられています。それぞれの館について放映された際の様々なインタビューやナレーションがテキストとして掲載されており、館の特徴やコレクションについて知ることができます。

写真関連では、山形県の土門拳美術館が日本で初めての写真美術館として挙げられています。美術館の説明だけでなく、その周辺の土地の特徴や風土、文化についても紹介されていますので、旅のガイドブックのように眺めるのもひとつの楽しみかたになるでしょう。

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『世界の美しい美術館』パイ インターナショナル 編(パイ インターナショナル/2023年)

最後は、国内を離れて世界の美術館にも目を向けてみたいと思います。『世界の美しい美術館』では、特に建築としての特徴が突出している世界中の美術館が、豊富な図版と共に紹介されています。

フランスのヴェルサイユ宮殿美術館から始まり、イタリアのコロンナ美術館、ラファエロの間や、ミケランジェロの「最後の審判」が掲げられているシスティーナ礼拝堂を有するバチカン美術館といった豪華絢爛な古典建築から、デンマークのオードロップゴー美術館やアメリカのグッゲンハイム美術館のような近代的な名建築まで網羅しています。

日本の美術館としては、国立新美術館、三鷹の森ジブリ美術館、松本市美術館が紹介されています。個人的には、メキシコのソウマヤ美術館、ブラジルのサンパウロ美術館にはいつか行ってみたいと改めて思いました。

大和田良

(おおわだりょう):1978年仙台市生まれ、東京在住。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院メディアアート専攻修了。2005年、スイスエリゼ美術館による「ReGeneration.50Photographers of Tomorrow」に選出され、以降国内外で作品を多数発表。2011年日本写真協会新人賞受賞。著書に『prism』(2007年/青幻舎)、『五百羅漢』(2020年/天恩山五百羅漢寺)、『宣言下日誌』(2021年/kesa publishing)、『写真制作者のための写真技術の基礎と実践』(2022年/インプレス)等。最新刊に『Behind the Mask』(2023年/スローガン)。東京工芸大学芸術学部准教授。