コラム
昭和レトロ キャバレー「白ばら」
このノスタルジックな空間をNikon Z 9で撮ってみた
2022年12月23日 18:00
東北最北端にあるキャバレー「白ばら」。キャバレーとしての営業は2015年に終了しました。その後、ニッコールクラブで写真家 大西みつぐさんがまだ現存するこのキャバレーの話をされたときに、行ってみたいなと思ったのを記憶してます。それから数年して、不思議な巡り合わせでここに行くことになるとは……。
山形県酒田市にあるキャバレー「白ばら」は、街の真ん中、その静かな住宅街に突然現れたかのように存在してます。コンクリート打ちっぱなしの建物がただならぬ様子で鎮座している、というのが私の第一印象でした。
店にある照明が昭和な雰囲気を演出。
撮るだけで絵になる、ソファー。中はかなりの暗さ。
かなり昭和感を匂わせる看板を横目に、店内に入ると、出演した歌手の色紙がいっぱいの壁が迎え入れてくれます。
受付を曲がり真っ暗な空間を通り、全体のカビ臭さと合間って、少し目眩するほどではありますが、そこから広がる、キャバレー白ばら店内は、今までに見たことのないところでした。
ステージに置かれているドラムセット。今でも、だれか演奏者が来るのを待っているよう……。
ロココ調風? な客席ソファーは27席あるボックス席。独特なカーブと仕切りで埋め尽くされており、その向こうに見える、アナログな色あいで輝いてるステージに釘付けになります。
管理している佐藤さんの手動でライトアップが変わります。
上を見上げると、ずいぶん昔を思い出すようなミラーボールがゆっくり回ってました。(90年代のクラブを思い出す……。)
実際にソファーに座った眺めはこんな感じ。妙に、落ち着く。
ガッツリ、日本なのですが、和洋混合感がいっぱいなこのキャバレー。時代も止まった、異次元化しているこの場に魅せられた私は、気がつくと夢中で写真を撮っていました。
こちらを管理している佐藤さんに1階の店内だけではなく、かつて2階には会員制のバーがあり、また3階にはここのオーナーだった方の住まいが今まだ残っていると伺う。
出演者たちの楽屋裏。管理している佐藤さんが初めて閉じてみたというドアの裏には歌手のポスターが。
正直、そういった場面、終わりを告げたところへは、魅力を感じずに今までいた私でしたが、今回は何か? 導かれたかのようにその階へ入り込んでいったのです。
2階にある会員制のバー。
重厚感あふれる内装も、日に日に、朽ちているのがわかる。
酒瓶がそのままなのも、被写体としては魅力的。
僅かの光を頼りに、不思議と、レンズを通してみると、ドキドキしていた気持ちも落ち着き、冷静に視点を向けることができてるから、写真って不思議。
住人を待っているかのようだった……。
そのままに何年も動かずに置かれている時代を感じる置物たち。
なんとなくですが、ここでの暮らし、気配、想い、歴史、音……といった、何か見えない雰囲気みたいなものが、一気に私の中に入ってくるかのようだった。
住み込みのホステスさんの宿舎にもなっていた。日本語ではない言葉があちらこちらに。
住居の居間の壁。時が止まるように、ここの時計は止まっていた。
カメラは、ニコンZ 9。室内は基本暗いですし、光があるところは妙に明るい。光のメリハリをこのZ 9は繊細な表現をしてくれるのを流石と、毎回思います。私としては「フラッグシップだから!素晴らしい!」という考えはあまりないです。現に、フラッグシップを使うのっていつ以来かしら……。クオリティの驚きはニコンD850を最初に使ったとき驚いた感覚と似ている……って古過ぎでしょうか。
でもそれ以来、このZ 9です。大きく、重く感じるかもしれませんが、フィット感、安定感は抜群ですから、私のように手が小さい人でも、疲れないです。小さいカメラでも持ちづらさが、あると疲れます。
3階には屋外のスペースも。そこから見える景色は昔とあまり変わらないのか?
Zシリーズを今までのいわゆるデジタルカメラの画質が、わりと硬め硬めで感じていたものを、Z9は、更に上のクオリティへステージが上がったような気がしてます。硬めというよりは、描写がより繊細になったというのでしょうか。微妙な色使いを丁寧に仕上げてくれますから、撮って出しで、十分な再現をしてくれます。 そのうち、撮影後に画素像処理なんてものも無くなりそうな気もします。
隙間から見える外は別世界。
3階の階段踊り場から。
もう行くこともないであろうキャバレー「白ばら」は、年内閉館の予定です。私にここで撮ることの機会をくれたのは、偶然ではなく必然だったのだと思います。自分の写真家人生の中で、強烈な印象あるこの場所を今、こうして発表できていることに、ここへ導いてくれた全ての人に感謝したいと思います。
キャバレー白ばら
住所:山形県酒田市日吉町2丁目5-3