コラム

国際写真賞「ライカ・オスカー・バルナックアワード2019」が4月1日まで参加受付中

開催39回目・賞金総額約8万ユーロ 応募方法を日本語で解説

ドイツのライカカメラ社が実施している国際写真コンテスト、LOBAこと「ライカ・オスカー・バルナックアワード」(Leica Oskar Barnack Award)について紹介する。

1979年に創設されたLOBAは開催39回目を迎える。エントリーは公式Webサイトから可能で、2019年3月1日から4月1日まで受け付けている。今回の受賞者とファイナリストに贈られる賞金総額は約8万ユーロ。

応募部門は「一般」と「新人」の2つ

ライカ・オスカー・バルナックアワードでは、全てのプロ・フォトグラファーを対象とした一般部門と、28歳以下のプロ・フォトグラファーが対象の新人部門を設けている。ちなみに、新人部門は前回までは25歳未満を条件としていた。

一般部門「Leica Oscar Barnack Award」

全てのプロフェッショナル・フォトグラファーを対象とした部門。受賞者には賞金2万5,000ユーロと、1万ユーロ相当のM型ライカの機材(カメラとレンズ)が贈られる。

また、ファイナリストには2,500ユーロを贈呈。

新人部門「Newcomer Award」

28歳以下のプロフェッショナル・フォトグラファーを対象とした新人部門。受賞者には賞金1万ユーロと、1万ユーロ相当のM型ライカの機材(カメラとレンズ)が贈られる。

テーマは?

どちらも募集するのは「人々とその周辺環境との関係」(The relationship between man and the environment)を革新的かつクリエイティブに描いた10〜12枚の写真作品。このテーマは1979年のアワード初回から続いている。

応募可能な作品は、2018〜2019年に撮影した写真シリーズまたは、2018〜2019年に撮影した写真を含む長期プロジェクトの写真作品。

審査員

2019年度の審査員は次の5名。全応募作品の中から12点をファイナリスト作品としてまず選出し、最後に一般部門と新人部門の両受賞者を決定する。

・カリン・レーン・カウフマン(オーストリア)
ライカギャラリー・インターナショナル代表兼アートディレクター

・フランソワ・エベル(フランス)
アンリ・カルティエ=ブレッソン財団ディレクター

・ミレナ・カルステンス(ドイツ)
『ツァイト・マガジン』誌ディレクター・オブ・フォトグラフィー

・マックス・ピンカーズ(ベルギー)
写真家、2018年度ライカ・オスカー・バルナックアワード受賞者

・スティーブ・マッカリー(アメリカ)
写真家、イマジンアジア創設者

2018年の受賞作品を紹介

110か国から約2,500点の応募があり、以下の2名が受賞した。

Leica Oscar Barnack Award 2018

Max Pinckers(マックス・ピンカーズ)
ベルギーのドキュメンタリー写真家。1988年ブリュッセル生まれ。作品づくりにおいてはビジュアル要素を用いたストーリーテリングの方法を踏襲。ヘントにあるRoyal Academy of Fine Artsで2008年から2012年まで学び、その後は写真家としてのキャリアを重ね、ベルギー国内外のさまざまな写真展においてその作品が展示されるほか、4冊の写真集が刊行。出版社Lyre Pressも設立。2016年度LOBAでは『Two Kinds of Memory and Memory Itself』でファイナリストに選出される。

(c) Max Pinckers_Red Ink

Max Pinckers氏の受賞作品『Red Ink』は、きわめて厳しい監視下で撮影されました。2017年8月、折しもアメリカと北朝鮮のプロパガンダ合戦がピークに達していた時期に、ジャーナリストのEvan Osnos(エヴァン・オスノス)氏が『ニューヨーカー』誌の取材のために4日間にわたって北朝鮮に滞在した際にピンカーズ氏も同行。そのときに撮り下ろした受賞作品『Red Ink』は、まさに観察者としての洞察力の賜物といっても過言ではないでしょう。北朝鮮は現在、世界で最も極端な中央集権国家のひとつであり、最も閉鎖的な国家のひとつとして知られています。一見すると写真家がこれまでより容易に入国できるようになりつつあるという印象を受けるかもしれませんが、撮影自体は依然として監視なしで許可されることはまずありません。ピンカーズ氏は最初から、北朝鮮の隠された内情を写真で浮き彫りにできるとは思っていませんでした。その代わりに、広告やプロパガンダのような表現方法を駆使し、目にした光景をありのままに切り撮って、訴求力のある作品に仕上げました。

Leica Oscar Barnack Award Newcomer

Mary Gelman(メアリー・ジェルマン)
1994年ロシア、ペンザ生まれ。社会学を学んだ後、ジェンダー学と写真の分野に進路を変更。サンクトペテルブルクのDocDocDoc schoolでドキュメンタリー写真とフォトジャーナリズムを学び、ロシア国内外のさまざまなワークショップにも参加する一方、ドキュメンタリー写真家として『ワシントンポスト』紙や『ビレッジ』誌、『ヨーロピアン・フォトグラフィー』誌などの出版物の仕事に従事。その作品は多くの賞を受賞しており、世界各地の写真展でも展示される。現在サンクトペテルブルク在住。

(c) Mary Gelman_Svetlana

「ライカ・オスカー・バルナック 新人賞」のMary Gelman(メアリー・ジェルマン)氏は、サンクトペテルブルクから東へ約150キロのスヴェトラーナという村におよそ2年にわたり足繁く通い、受賞作品『Svetlana』をつくり上げました。スヴェトラーナは人智学に基づくキャンプヒル運動が行われている場所のひとつで、障がいがあったり特別な支援が必要な人々が救いを求めて訪問する治療的なコミュニティとなっており、偏見や差別とは無縁で、自立的に暮らし働ける環境が整っています。同氏によると、カメラを携えて初めて村を訪問した際は、村が大騒ぎになったといいます。しばらくすると、住民たちは彼女の存在に慣れ、やがて彼女は村に溶け込み、永住権を持った訪問者のような扱いをされ素晴らしい時間が流れる場所になりました。彼女は敬意を払い、心を開き、誠実に接すること、そして個人には領域があることを認めてそれを受け入れることが重要だと語っています。撮影において最も大切なのは、慌てず平静を保つことのようです。

応募方法を解説

LOBAのWebサイトにはドイツ語版と英語版しかないので、ここで簡単に日本語で解説する。

https://www.leica-oskar-barnack-award.com/en/
↑公式Webサイトの英語ページを開こう。右上のAPPLYINGから、APPLICATION FORMを選ぶ。

最初のページでは、応募先が一般部門か新人部門かを選び、応募者の情報(Personal Information)を入力する。

青枠の中から一般部門(上)か新人部門(下)を選ぶ。

・Declaration Professional Photographer(Aの部分)
LOBAの応募条件である、プロフェッショナル・フォトグラファーであることの証明を入力する。上のフォームに個人もしくは所属エージェンシーのWebサイトURLを記入するか、下のフォームに略歴もしくは過去の出版物(題名、出版日)や直近の展示(ギャラリー名、会期)について記入する。

・Personal Information(Bの部分)
敬称(salutation。女性Ms/男性Mr)、姓(Family Name)、名(First Name)、メールアドレスなどを入力する。電話番号(Telephone)の前にある「Country code」は国番号(日本は+81)。誕生日と居住国を入力したら「CONTINUE」で次のページへ。

入力に不備があった場合は「CONTINUE」ボタンを押した際に該当項目が赤くハイライトされるので、次ページに進んでいれば問題ない。

・Photo Selection
写真データをアップロードする前に、作品題名(Title of the series)と、英語で作品説明(Description of series in English language)を入力する。なお、ここで入力する作品説明は審査のみで使用し、受賞後の掲載時には使用しない。

続けて、ページ下部で写真データをアップロードする。+マークを押すとファイルを開くダイアログが表示されるので、応募したいファイルを1枚ずつ選んでアップロードする。「Image description」を押すと、それぞれにキャプションを入力できる。

応募可能なデータは高さ1,200ピクセル(横幅は自由)の72dpi/RGBのJPEGで、ファイルサイズは1枚あたり最大3MB。規定の10〜12枚が揃ったら次のページへ。

・Confirmation
コンテスト参加のために同意を求められる項目が並ぶ。「コンテストの規約を読んで同意した」、「自分のフルネームを使うことを了承する」の2つのチェックボックスにチェックを入れる。この一連のフォームで「*」が印がついている項目は、応募のためにチェックが必須だ。

STORAGE AND USE OF DATA(データの保存と利用)では、コンテストのためにデータを保存することを了承する必要がある。

同じページの下部にはライカカメラ社から新製品の案内などを送ってよいか?という質問もあり、ここのチェックは任意でよい。電話やメールでの案内を受けたくない場合は、それぞれにチェックを入れる。

そして「SEND」を押すと、ページが遷移して「Thank you!」と表示され、いよいよ応募完了となる。応募完了を示す自動送信メールが、先に記入したメールアドレスに届くはずだ。

なお本アワードに関する問い合わせは、下記Webページに記載のメールアドレスで受け付けている。(※英語かドイツ語のみ)
https://www.leica-oskar-barnack-award.com/en/contact.html

制作協力:ライカカメラジャパン株式会社

本誌:鈴木誠