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12月のニューヨーク(前編)
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※カメラは特記したもの以外はシグマSD14を使用。レンズはすべてシグマ製です。 ※すべてRAWで撮影してからJPEGに現像し、幅1,028ピクセルに縮小しています。 ※写真下のデータは絞り/シャッター速度/感度/レンズ/実焦点距離です。 12月の中旬、ロサンゼルス国際空港を朝の7時に離陸した、ほぼ満席のユナイテッド航空0020便ニューヨーク行きは、マンハッタン島が見えるまでの5時間と少しの飛行の間、ロッキー山脈上空で多少機体が揺れた以外は順調そのものだった。 しかし、マンハッタン島が見えるあたりからその機体の先端を西に徐々に向け、ニュージャージー州にあるニューアーク空港上空を通り越し、さらに西に飛んで、着陸予定地のケネディー国際空港にはなかなか接近しようとしなかった。これ以上ゆっくりとは飛べないと思わせる速度で、マンハッタン島から見ると西の空を2度大きく旋回した機体は、徐々に高度を下げ、マンハッタン島から東に位置するケネディー国際空港に40分遅れで着陸した。 ゆっくり飛びながらマンハッタン島の西の空に浮かんでいた機体は、飛行場の混雑のため着陸時間を調節していたのだろう。その時間調節は私にとって、もうここ何年も久しく会っていなかった苦楽をともにした友人、その懐かしい友人との再会を目前にした心の準備時間、そんな感傷的な時間だった。アメリカで社会人になり長年住んだニューヨーク、ここ何年もの間、この地に足を踏み入れていなかった。私にとってそのことはいつも気がかりなことだった。
西海岸と東海岸の時差は3時間、空港に出迎えに来てくれた初対面のA氏と会ったのは午後の4時を回っていた。ケネディー国際空港からマンハッタンには西へ向かう。12月のニューヨークは、陽が落ちるのが早い。ミッドタウン・トンネルに通じるロングアイランド・エキスプレス・ウェイを走り、マンハッタンが目の前に迫る頃、サンセットを背にした摩天楼はシルエットになろうとしていた。 ミッドタウン・トンネルを潜り、マンハッタン島に出ると、陽はすっかり落ちていた。A氏の運転する車は、にぎやかなブロード・ウェイの劇場街にあるレストランを目指したが、この日は土曜日ともあって、劇場街付近ではストリートを横断する人々が車をブロックし、車は前に進まない。 一方通行も多いマンハッタンのストリートをなすすべもなくグルグルと周り、目当てのレストランからは少し離れていたが、何とか駐車場を探しあて、めでたく夕食のご招待を受けた。この日の夜は、西海岸との時差も手伝い、宿泊先である友人宅で朝の4時まで起きていた。そしてニューヨーク滞在中の1週間は、西海岸の時間で行動したのだった。
翌日は昼頃から友人と外に出ると、どんよりと重い曇り空。天気予報は夕方から雨。この週は晴天には恵まれないとの予報。宿泊先の友人のアパートメントがあるレキシントン・アベニューとパーク・アベニューの23丁目から、ニューヨーク在住中、何度も引越しを繰り返し、最後に住んだアパートメントが近いユニオン・スクゥエアーまでぶらぶらと歩いた。 そこから地下鉄の駅に潜り込み、私が住んでいた頃には存在しなかった、地下鉄とバス1週間乗り放題のメトロカードを24ドルで購入し、ブロードウェイ・ラインで57丁目のセブンス・アベニューで降り、セントラル・パークを左手に見ながら59丁目を5番街に向かってプラザホテル付近まで歩き、セントラル・パークに入る。 美しい紅葉の秋も終わり、白い冬もない12月のセントラル・パークの景色は寂しい。日曜日のスケート・リンクには、そんな寂しげな景色を吹き飛ばす元気な子どもたちの声が寒空に響きわたっていた。
その後、ブランド店が軒を並べる華やかな5番街に下り、ロックフェラーセンター・プラザに立ち寄ったが、日曜日の夜、クリスマス・ツリーを正面から一目見ようとする人があまりにも多く、身動きが取れず少しずつしか前に進まない日本の初詣のようで、なかなかツリーのそばまでたどり着けそうもない。平日の夜また来ることにして、この夜はその場に長居はしなかった。
その後6番街を経て、ブロードウェイを南に下り、地下鉄でチャイナ・タウンまで下った。地下鉄から地上に出るとかなりの雨が降っていて、中国語が幅を利かしている街はびしょ濡れだった。チャイナ・タウンにはよく来たものだった。とにかく安くて沢山食べられるのが、腹をすかした若者には有難い街だった。 この夜もこの街で夕食を食べ、その後、隣街のリトル・イタリーまで歩きカップチーノを飲む。食欲は昔ほどでないものの、たどるコースは昔と変わらない。そして夢見ることも口癖も昔とさほど変わらない。
翌日は昨夜からの雨は上がっていたが、空は今にも泣き出しそうだった。私は暗くなるこ頃、5番街を23丁目からミッド・タウンに向かって歩きだす。エンパイヤー・ステイト・ビルディングを通り、クリスマスのディスプレーをしたデパートのショウウインドーを見て、昨日人出が多過ぎて、すぐに退散したロックフェラーセンターに到着する。 月曜日のこの夜、昨晩より人出は随分と少ない。それでもひとつの場所に留まることを許さない忙しいスポットであることには変わりはない。「世界で一番有名なクリスマス・ツリーだぞ、お前の目の前にあるクリスマス・ツリーは」と自慢げに子どもに言い聞かせる若い父親の言葉が聞こえてくる。そのクリスマス・ツリーの下の小さなスケート・リンクには、24時間眠らない街、ニューヨークのクリスマスを肌で感じて氷の上を滑る人がいる。三脚を立てようとすると、この時ばかりとすぐに注意しに来る警備員がいたるところにいる。 ユーロが強いせいか、ヨーロッパからとすぐにわかる観光客が多くいる。あらゆる種類のカメラ、ビデオで、ここロックフェラーセンターのクリスマス・ツリーを狙う人がいる。多くの人がこのクリスマス・ツリーを一目見ようと、休みなく押し寄せるロックフェラーセンターと、このあたりの5番街は、ニューヨークのクリスマスを語るのに外せないスポットであることは間違いない。
その夜、友人宅に戻り、友人を誘い昔よく行ったバーに行った。ゴルフ好きのオーナー兼バーテンダーのお兄ちゃんの姿(もうおじさんになっている?)は、そこにはなかったが、代わりに気さくで威勢のいい大柄なアイリッシュ娘がいた。カラマリとバッファロー・チキン・ウイングをつまみにギネスを飲む。冷たくなり始め、凍りだす12月のニューヨーク、ダークなギネスの苦味は心の底まで沁みた。しばらく会いに来なかったニューヨークは、その気になれば、まだ私を受け入れてくれそうな気がした。
■ ＵＲＬ バックナンバー http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dialy_backnumber/
2007/12/26 00:02
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